「カナダでお茶の心を伝えたい」新照子(新宗楓)裏千家教授が歩んだ人と人をつなぐ茶の道

新照子裏千家教授


平成29年度外務大臣表彰受賞の新照子(新宗楓)氏は日系カナダ人として初めて、京都の裏千家学園茶道専門学校へ入学し、カナダで日本の茶道の普及活動を精力的に行ってきた。今年にはその功績が讃えられ、外務大臣表彰を受賞。茶道という日本文化の普及活動を通して、日本と諸外国との友好親善関係の増進に多大な貢献をもたらした新氏のこれまでの道のりとは…。

裏千家学園茶道専門学校へ入学したその理由

ある日ホテルで着物を着て食事をしていたら、カナダの男性に「ゲイシャガール」と呼ばれてしまい、「芸者はどういう方なのか、ご存知なのですか?」と尋ねたところ、彼らは何も知らないと答えたのです。そんな出来事によって日本に対して誤った認識をしている人が多いと感じた私は、自分が日本とカナダの架け橋として、正しい日本文化をカナダに伝えたいという思いで入学を決めました。当時は小さな3人の子供を抱えており、そういった中で家族に送り出してもらった事には心から感謝しています。学校では最年長ということで、他の学生から「マミー」と呼ばれ、親しまれていました。今でも連絡を取り合う仲です。

遠く離れ離れになってしまった家族への想い

一番辛かったのは家族と離れ離れになった事。しかし、私は家族に送り出してもらって学校に来た身ですから、どんなに寂しくてもお稽古に集中しなければなりませんでした。「この時間には子供たちは何をやっているのだろうか。季節が冬になれば、暖かい服をちゃんと着せてもらっているだろうか」などと考えておりました。しかし、家族に電話をしたのは帰国前日の1回だけ。カナダに茶道を広めること、正しい日本文化を伝えることが私の使命でしたし、家元からもお願いをされていたので、弱音は吐けませんでしたね。

前トロント総領事中山ご夫妻と表彰伝達式にて

とうとうやってきたカナダへの帰国日、そして続く茶道の道

カナダに帰国して、家族と再会した時は本当に嬉しかったです。小学生の息子から「マミーはカナダと日本の架け橋だからね。マミーを誇りに思うよ」と言ってもらえた時には思わず涙がこぼれ落ちました。その後トロントで社中を構え、裏千家淡交会トロント協会の幹事長を務めました。社中や日系文化会館での定期稽古を始めとし、様々な学校やまた受刑者にもお茶の心を伝える講話を行う活動をしました。

茶道の活動を通して出会った一人の少年

ある時少年院に入った男の子を我が家で預かることになりました。息子と同じ10代の子です。彼には「両親のおかげで今の自分があるんだよ。感謝しなければならないよ。少年院から出たら二人に「アイラブユー」と伝えなさい。」と言いました。それから彼が出所して何年か経った頃、家の前にスーツを着た男性が現れました。話を聞くと、なんとあの時、我が家で預かった男の子だったのです。「マミーのおかげで改心出来た。あれから必死に勉強して、今はトロント大学で法律を学んでいる。マミーみたいに人を助ける人になりたい。」と言うのです。私はとても嬉しくなり、茶道が人との出会いの機会をもたらしてくれたのだと、心から感謝しました。

茶道を通して人々に伝えたいこと、それは…

茶道というと、多くの人は「着物を着なくちゃいけない、色々と決まりがあって大変そう」など敷居が高いと思いがちですが、そんなことはありません。茶道は呼ぶ側も呼ばれる側もお互いを尊重し合い、感謝する気持ちが一番大切なのです。例えば、迎える側はお客様に合わせて掛け軸を変え、生けるお花を変えます。それはお客様のことを尊重し、「あなたに対してこんなメッセージを送ります。」という気持ちが込められているのです。お客側はこのメッセージを受け取り、感謝の心を持ってお茶会に参加します。茶道は堅苦しいものではなく、人と人との心をつなぐものなのです。茶道は礼に始まり、礼に終わります。これからも茶道の催し物などを行いますので、是非一度いらしてください。