夏目漱石国際エッセー最優秀賞受賞 ステファニー・エリカ・チャベスさん [新年号スペシャルインタビュー]

日本で活躍するカナダ人:トロント出身 カナダ人 ステファニー・エリカ・チャベスさん

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現在JETプログラムで松山市にある高校の英語指導助手として活躍しているステファニー・エリカ・チャベスさん。日本語の勉強やJETプログラに興味を持つきっかけになった夏目漱石の没後100年を機に開催された「漱石国際エッセーコンテスト」(朝日新聞社、岩波書店、国際交流基金、フェリス女学院大学主催)で最優秀賞を受賞。そんなステファニーさんに言語の壁を超えて感じる夏目漱石の魅力や日本語への興味、今後の目標など幅広く話を伺った。

■英語版百人一首の中で一番好きな首は何ですか?

好きな首がたくさんあるので1首だけを決めるのは難しいですが、和泉式部の「あらざらむこの世のほかの思ひ出にいまひとたびの逢ふこともがな」がお気に入りですね。死ぬ前に愛している人にもう一度会えることを願う、この首はロマンチックなことが好きな私にとってとても綺麗で大好きです。それにPeter McMillianの英訳「As I will soon be gone. / Let me take one more memory / Of this world with me. / I hope against hope / To see you one more time, / To see you know.」もとても素晴らしいと思います。

■もしも夏目漱石に出会っていなかったら、どのような生活をしていると思いますか?

はっきりとは分かりませんが、JETプログラムに参加せず、おそらくそのまま修士号を取得しているでしょうね。また私は中世英語文学、特にアーサー王についての文学にも興味があるので、そのことについて勉強していると思います。

授賞式で表彰されるステファニーさん

授賞式で表彰されるステファニーさん

■夏目漱石と性格が似ているとおっしゃっていましたが、ステファニーさんのイメージでは夏目漱石はどのような性格の人だと思いますか?

私のイメージでは彼は内観的な人で、彼の周りの世界をよく観察していると思います。漱石の作品の中で一番面白いと思うことは、彼の後期の作品では一部憂鬱な雰囲気があるにも関わらず、面白おかしい瞬間もあります。終始彼の文学には、とても鋭い面白味があるので彼はユーモアに溢れた人でもあったのだと思います。

■「草枕」の引用に西洋の影響を受けて葛藤しているものが反映されていますが、日本が今1番海外に影響されていることは何だと思いますか?

アメリカ文化が大きく日本に影響していますね。アメリカ大統領選挙の報告をよく聞きましたし、私がアメリカについてどう考えているかもよく聞かれます。ハリウッドセレブ、アメリカ音楽やアメリカのテレビ番組は私の生徒たちの間でもよく話題に上がりますよ。

勤務している松山高校の教師ソフトボールチームメンバーと一緒に

勤務している松山高校の教師ソフトボールチームメンバーと一緒に

■夏目漱石の本で1番印象に残っている物語や文章はありますか?

主人公「余」が鏡が池に落ちていく椿を見ている、という草枕の場面です。この場面のことは私もよく考えを巡らせます。特に惹かれた理由の一つはこの場面にジョン・エヴェレット・ミレーのオフィーリアが出てくることで、それが私の好きな絵画であると同時にその風景描写がとても素晴らしく、事細かに記されているので、その場面を私の頭の中で完璧に思い浮かべることができるくらいです。

■日本語の勉強で1番苦労したことは何ですか?

私にとって助詞がとても難しいです。漢字や単語を学ぶことはとても楽しいですが、日本語の文法にはいつも苦戦しています。私にとって言語を勉強するために最も大事なことは、慣れない言語で困惑しても自分を信じて勉強し続けることだと思います。しっかり理解するまで長い時間がかかってもあまり気にしないことです。私は毎日その言語を使って練習することが好きですし、実際の会話の中で練習したり、新しく習った文法や単語を使うことが大切です。もちろん間違った使い方をする時もありますが、それを訂正してもらうことで学ぶことができます。間違うことは次のステップに進むためにとても重要なことです。

秋祭りの女神輿に参加した様子

秋祭りの女神輿に参加した様子

■実際日本で生活して、カナダにもあったらいいなと思うものはありますか?

何と言っても「こたつ」ですね。冬に家に帰るのが嬉しいですし、勉強しながらこたつに座っています。こたつ無しでは冬を生き延びれないと思います。他にも使い捨てカイロもカナダに持っていきたいです。特に靴の中に入れて足を温めるものがお気に入りで、もしこのカイロがカナダにあったら、電車やバスなど公共交通機関を冬の間でも問題なく待てるでしょうね。あとはメロンパンです。日本のパン屋さんに行くのがとても大好きです。

■想像していた日本と違うことはありましたか?

みんな誰もが礼儀正しいと思い込んでいましたが、そのままでは仲の良い友人を作るのは難しいということに気がつきました。でも幸運なことに私は松山で沢山の友人を作ることができ、協力的な友人や同僚のおかげで松山は私の第2の故郷になっています。松山で私が出会ってきたほとんどの人はとても温かくてフレンドリーなのでここで生活できて本当に嬉しいです。

愛媛県西予市内の歴史地区にて

愛媛県西予市内の歴史地区にて

■JETプログラムで今後挑戦していきたいこと、または目標や展望などあれば教えてくだい。

私の今の大きな夢は勤務先である愛媛県立松山中央高等学校が英語ディベートコンテストに優勝できるよう生徒たちを支えることですね。私の生徒たちは英語の勉強を楽しんでいますし、多くの時間を英語のスピーチやディベートに費やしています。コンテストの経験を通して彼らに自分たちの夢を見つけてもらいたいです。

私自身のことではこのまま日本語の勉強を続けることです。日本語能力試験でN1レベルを獲得し、日本文学を英語に翻訳できるようになりたいです、カナダで私が読みたかった日本文学の英訳本を見つけることにいつも苦労していたので、日本文学をもっと多くの英語圏の読者に知ってもらうため、英訳本を手に入れやすい環境を作りたいです。日本と日本文学は長く面白い歴史があるので、できる限り多くの人に共有できたらいいなと思っています。

■TORJA読者にコメントをお願いします!

まず、できるだけ多くの友人を作ってください。自分の行動範囲の中で興味のあるレクリエーションスポーツチームやクラブに参加することをお勧めします。そこで出会った友人と一緒に会話することが最も簡単で楽しく言語を学ぶ方法だと思います。次に、どんなレベルであっても自分の会話力を恥ずかしがらないでください。皆さんが流暢に話せようが話せまいが、英語を話せるようになるために沢山の努力をしたことは事実で、そのことに関して自分に誇りを持ってください。間違いの数だけ次はきちんと話せるようになりますよ。最後に、出来るだけ旅をして経験を積んでください。カナダは大きい国なので見るところもたくさんありますし、沢山の素敵な何かがあなたを待っていますよ。


ステファニー・エリカ・チャベス

1989年、カナダ生まれ。高校生の時に学校の先生に勧められ、英語版の百人一首と出会う。以来日本語への興味を持ち続け、トロント大学の授業で夏目漱石に出会ってから更に深く日本語、日本文学に惹かれる。現在はJETプログラムに参加しており松山市在住。