Toronto Japanese Film Festival Interview 荒井晴彦さん

終戦とは何なのかひとりの女の子を通して伝えたいこととは
脚本家・監督 荒井晴彦さん

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数々の脚本を手掛け、多くの賞を受賞した日本映画を代表する脚本家・荒井晴彦さん。今回18年ぶりに脚本・監督を行った、映画「この国の空」にて戦後70年を迎えた今、映画を通して伝えたいことや映画業界についての話を伺った。


海外で自身の映画が上映される心境はいかがですか?どのようなことを期待されますか?

海外の映画祭に呼んでいただいたのは昨年7月のアメリカ以来、2回目です。日本でも自分と若い人とでは考え方が異なるので、全然検討がつきませんが、いい映画だと思っていただきたいです。

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たくさんの作品で脚本を担当されていらっしゃいますが、脚本の作成の仕方やその時に大切にしていることはなんですか?

自分がおもしろいと感じたところをしっかり残して、おもしろくないところを捨てていきます。なので好きな原作を脚本化する時にはうまくいかないことが多いです。やはりりLove is blindになってしまいダメですね。原作の中に私がおもしろいと思う部分が見つけられないぐらい、嫌々やるほうがおもしろくなることが多いです。例えば「Wの悲劇」は原作とは違った視点で物語の脚本を書きました。お芝居をする女の子を主人公にしようと思いつくまでにだいぶ時間がかかりました。今は原作者と出版社が強くて、原作者が平気で訂正をいれてくるので、もうこのようなことはできないですけどね。

原作があるものとオリジナルでは取り組み方に違いはありますか?

一般的に原作がないものをオリジナルと呼び、原作をもとに脚本が作られたものと区別することがありますが、私はオリジナルという言い方に抵抗があります。ハリウッド映画を例として見てもリメイクされた映画がたくさんありますし、映画ができて120年くらい経ち、本当のオリジナルは使い果たしたと思います。

この映画を制作することになったきっかけを教えてください。

2年前くらいの冬にプロデューサーから戦後70周年という節目にやりませんかと声をかけられ、制作をすることになりました。その際、監督をどうしようかという話になり、一番信頼している監督に脚本を見てもらいましたが、「いい映画だけど誰が見に来るの」と言われ引き受けてもらえませんでした。でも長年やりたかった企画でもありますし、実現させたかったので、自分で監督も担当することにしました。

今回の制作で難しかったことはなんですか?

美術的な面で、戦時中の環境を再現することが難しかったです。本当は東京で撮影を行いたかったのですが、土のセットがなくて京都で撮影をしました。関西と東京では考え方が微妙に違い、関西の人はすこし大げさにつくる傾向があるようです。私のイメージと違うため修正をお願いすることもありました。さらに金物っぽいものは、この時代供出してないなずなのに気付くとセットの中に置いてあったりしました。細かいところまで指示を出す必要がありましたが、そればかり見るわけにはいかないので、撮影当初はどうなることかと絶望しました。

この映画を通して観る人たちへどのようなことを伝えようとしていますか?

「戦争が終わる」というとどんな人間でも嬉しいはずなのに、嬉しくないと思う普通の女の子を描いてみたかったです。戦争が終わってよかったといっているのは、あまり反省もせずに戦後を始めてしまったからだと考えています。自分たちも悪いのにそういうこと考えずに戦後をスタートさせてしまったから今の政府ができたのでしょう。この根本的な部分が8月15日にあるのではないかと思い、ここから考え直さないといけないと思いました。
戦後は開放とか青空とかそういうイメージで語られることが多いです。日本人の思っている明るい日本が始まったなどと言われますが私はこれが嫌で、天気は青空ではなく雨にし、天皇の声も使いませんでした。

今後挑戦していきたいことは決まっていますか?

たくさんありますが、寿命と相談しながら取り組んでいくことになりますね。ただ、この10年、20年で若い人と僕たちの映画に対する考え方が変わってきています。若い人たちは映画をエンターテイメントだと考える人が多く、観客動員数が見込めないと映画が作れないので、自分の作りたい作品を作るだけでは済まないのが悩みです。

今後の映画業界はどうなっていくと考えますか?

キアヌ・リーブスの「フィルムからデジタルへ」というドキュメンタリーを観て、まったくその通りだと思ったことがあります。フィルムだと簡単に撮り直せないので自分が撮るべきものを人の映画をみて勉強していましたが、デジタルに変わり、勉強期間がなくなってしまいました。だからつまらない映画が増えたのだと思います。さらにジャンルというものが曖昧になってきているとも思います。リアリズムベースの映画に幽霊がでてくるなど、一緒くたになってしまっているのが嫌ですね。

最後に、異国の地トロントで頑張るTORJA読者にメッセージをお願いします。

自分の国と比較して勉強したほうがいいと思うので海外での暮らしはいろいろ勉強になると思います。それから海外での生活を取るのか、日本に戻るのかを考えればいいと思います。



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荒井晴彦さん

東京都生まれ。脚本家・監督・季刊誌『映画芸術』発行人、編集長。日本アカデミー賞優秀脚本賞をはじめ、受賞作は数知れず、70年代以降の日本映画を代表する脚本家。大学生時代より、若松孝二、足立正生、のもと、助監督と脚本を書きはじめ、脚本家の田中陽造に師事。89年からは「映画芸術」誌の編集発行人をし、97年には『身も心も』で映画監督デビュー。さまざまな形で映画に携わり、自身の世界観を映画を通して伝え続けている。