[トロントを訪れた著名人] Tokyo Docs 天城 靱彦氏 インタビュー

インタビューに答える天城氏


ドキュメンタリーは国境を超え、見るもの全ての心を動かす
日本のドキュメンタリーを海外に広めるのに尽力してきた

Tokyo Docs実行委員会委員長
NPO法人東京TVフォーラム理事長

天城 靱彦氏

元NHKドキュメンタリー制作者、現在はTokyo Docsの実行委員長を務める天城靱彦氏。Tokyo Docsとは2011年に「東京TVフォーラム」として日本に誕生した、ドキュメンタリーの国際共同製作を支援するための国際フォーラムである。多くの日本のドキュメンタリー作品が特集され、注目を浴びた今年のHot Docs。天城氏にはTokyo Docsのこれまでの道のりや日本でのドキュメンタリー映画の市場性、Tokyo Docsを立ち上げるきっかけとなった東日本大震災への想いなどを語っていただいた。

まずはじめにトロントの印象をお聞かせください。

トロントは5年程連続で訪れているほど、私の大好きな街です。今の時期は街に咲き誇る美しい花々が特に魅力的ですし、街が清潔であるという点も気に入っています。また、古いものをうまく有効活用している点も好きですね。例えばHot Docsはトロント大学のキャンパスを中心に他のシアターでも映画上映が行われていますが、実はそのキャンパス内の古い建物でミーティングを行ったりしているんですよ。

今回のHot Docsでは日本が注目されています。天城さんがTokyo Docsを立ち上げてからこれまでを振り返って今のお気持ちをお聞かせください。

2011年の東日本大震災をきっかけに、周囲に震災のことを伝えたい、また世界に発信するためには国際共同製作が有効な手段であると考えTokyo Docsを設立しました。その中で一つ一つ成果をあげてこれたと実感しています。Hot Docsは設立から20年以上であるのに対してTokyo Docsはまだ6年目。はるかに先輩である存在のHot Docsとはパートナーシップを結び、たくさんの刺激を受け、次回のTokyo Docsに向けて考えるきっかけを与えてくれる場でもあります。

2017年のHot Docsでは日本特集をしたいという話があることを知り、Tokyo Docsが6年目となった昨年の11月にはHot Docsの上映責任者であるプログラムディレクターを東京に招き、そこで実際に映画の製作者に会っていただき、その中で多くの作品が集まりました。

代表挨拶をする天城氏

東日本大震災をきっかけに設立されたTokyo Docsですが、活動を通じての国内外での反応はどのようなものでしたか。また、震災から6年が経過した今、天城さんが震災について感じることを教えてください。

いろんな作品がTokyo Docsから生まれていますが、1年目に震災に関する優れた作品が生まれ、国内外で大きなインパクトを与えるとともに、国内の映画製作者にもTokyo Docsを通じた映像製作が世界中の多くの人々に影響を与えるのだという印象を持ってもらうことができました。その後も震災関連の企画は出ているのですが、残念ながらそのような企画に対する海外からの関心度は落ちています。時間の経過と共に人々の関心度が薄れていっているのかもしれません。

しかし世界に日本のことを知ってもらうためには震災のことも含めてきちんと理解してもらいたいので、今後も発信し続けていくつもりです。震災が起きた時、私自身は東京に住んでおり直接被災したわけではありませんでしたが、自分の生き方を考え直すきっかけになりました。また、Tokyo Docsを立ち上げることにも繋がった、非常に大きな出来事でした。

日本のドキュメンタリー市場が直面している現状とはどのようなものでしょうか?

まずドキュメンタリー製作に対する支援が世界的にも手厚いカナダとは異なり、残念ながら日本ではそういった支援が少ないです。しかしTokyo Docsが行う活動を通じて映像製作に関する支援への理解を得られつつあるのも事実で、それについては嬉しく思います。

また、こういった活動をする中で、日本のドキュメンタリー市場の現状をジャッジするのは見方にもよるので非常に難しいですね。というのも、ドキュメンタリーが衰退していると思える一方で、劇場での上映やメディアのデジタル化に伴いドキュメンタリー作品を観る機会が以前より増えているのも確かで、このことを踏まえるとドキュメンタリー市場も今後盛り上がっていくのではとも思います。

トロントにワーキングホリデーなどで滞在する多くの日本人の方がいます。彼らの将来設計等に向けて、キャリアの長い天城さんからアドバイスをお願いします。

ここで経験したこと全てが今後に直結すると期待しすぎないことです。今の経験がうまく将来に結びつくことばかりではないですから。もし辛い経験をしたとしても、それは後に残る財産と考えましょう。将来、その経験は様々な壁を乗り越えていく力になっていくのではないかと思います。



TORJA5月号と共に

天城靱彦

NHKで30年以上にわたりドキュメンタリーを中心に番組制作にあたり、国際的評価の高いドキュメンタリーを多数制作。NHK退職後は関連会社でNHK番組の海外販売を統括し、2011年に東日本大震災をきっかけにTokyo Docsを設立。国際共同でドキュメンタリー作品製作を通じて世界へ日本を発信する先駆者。HP : http://tokyodocs.jp