若き楽師 吉井 盛悟さん インタビュー

トロントに響く日本の音色、その魅力を伝える若き楽師

©Makiko Miyagawa

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鼓篠笛、胡弓、日本古来より伝わる伝統楽器を現代に伝える若きパフォーマー吉井盛悟さん。その活動は国境の垣根を超え、日本だけでなく、カナダ、ベルギー、スペイン、スウェーデンなど、多くの国で日本古来の音色を伝えている。そんな吉井さんが11月5日にトロント日系文化会館にて、今年18回目を迎える永田社中プロデュース“Toronto Taiko Tales”、コラボレーションコンサートに参加。今回TORJAでは、演奏者としてだけではなく、公演の演出・構成などの場においても活躍している吉井さんに、その多彩な魅力を伺う機会をいただいた。

太鼓篠笛や胡弓といった伝統楽器を始められたきっかけは何だったのでしょうか?

当時通っていた中学校の文化祭で初めて太鼓を叩きました。地元の祭りや音楽の無い横浜の住宅地で育った私にとって太鼓音楽はとても新鮮で、以後、友人とバンドを組むような形で和太鼓のグループを作り、同時に笛も始めました。胡弓に関しては、学生時代、たまたま図書館で浮世絵の本を眺めていた際に、胡弓の流しの絵に出会いました。日本に擦弦楽器があると知らなかった私は心を惹かれ、それが始めるきっかけとなりました。

吉井さんが感じる、和楽器の魅力を教えてください。

西ヨーロッパで培われた「ハーモニー」の音楽が色彩を豊かに組み合わせる「水彩画や油絵」だとすると、日本音楽は「音色の濃淡」で描かれた「墨絵」のようであります。素朴で自然的な音色の響きの中に複雑な宇宙を感じる、これが和楽器の魅力だと思っています。また、和楽器は楽器の素材の多くが自然物であるため常に呼吸をしており、それを感じ、合わせていくこともその一つであると思っています。

和楽器が持つ歴史の中で、培われた技術や感性に触れることは古の人々と心を通わせることでもあります。時空を越えて先人の感性に触れ、繋げていくことも和楽器が持つ魅力の一つだと思います。

作曲や舞台の演出など様々な場で活躍されている吉井さんですが、そのインスピレーションやイメージはどのように生まれるのでしょうか?

多くは日本の自然などの思い出から生まれていますが、読書などにより感化されることも多くあります。私自身の創出は多くの現代芸術のように「自由」ではありません。「伝統的な何か」と関わることで、ある程度の「制約」を持つことが多いです。「何を変えて、何を残すか」という取捨選択には責任と恐怖心が伴うので、その恐怖を払拭する為に読書などをして過去から繋げられてきた感性と向き合うようにし、インスピレーションを拡げます。しかし、その生まれたインスピレーションを形として出す時には肉体が記憶している「伝統性」を信じて自由に表現したいと思っています。

日本の他にスウェーデンやバルセロナでも活躍されていますが、今後はどのような舞台で音楽をしたいとお考えでしょうか?

まだまだ経験を積んでいきたいと思っているので場所を問わず貪欲に様々な舞台をしていきたいです。しかし、強いて挙げるとすれば、日本の芝居小屋など、古い木造建築内で生音の音楽を演奏する機会が増えたらと思っております。

©YOSHI INOUE

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日本以外で公演された時の海外の方々の反応はいかがでしたか?

実際、国内外様々な都市で演奏すると国内、海外というより、それぞれの都市の在り方で反応が違うことに気がつきます。例えばロンドンと東京の反応や、パリと京都の反応が似ていると思うことがあります。今や日本のカルチャーは世界で珍しいものではないので、驚きで迎えられることは十年前と比べて随分無くなってきたと思います。

吉井さんの今後の目標や夢を教えてください。

日本の民族音楽は、雅楽のような宮廷音楽、能楽のような武士階級の音楽、歌舞伎のような芝居と舞踊の劇場音楽、民謡や民俗芸能のような民衆の音楽に大きく分類されます。私はもともと民謡や民俗芸能のような民衆の音楽について興味を持ち音楽活動を続けて参りました。これからも民衆の感性に寄り添う形で進化を続ける伝統音楽を続けたいと思います。また専門特化されたそれぞれの日本音楽の垣根を越えた作曲ができたらと思っております。

トロントで夢を追いかけるワーキングホリデーの学生や日本人に向けて、メッセージをお願いします。

トロントは沢山の移民を抱えている点で非常に興味深い土地だと認識しています。多文化共存は画一化ではなく多様の相互受容だと思います。自らの民族性や他者の民族性を尊重し共に生きる道を探すことがこれからの生き方だと思います。自他共に輝く人生を切り開いてください!



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吉井盛悟

shogoyoshii.com
神奈川県横浜市出身。14歳で太鼓篠笛を始め、19歳より胡弓を始める。2003年より日本の民俗芸能のフィールドワークに励む。国内外で年平均百十公演、累計で千公演近くに参加、フジロックを始め海外フェスティバルにも多数参加。現在、シディラルビの作品「FractusV」にて世界公演中。(Official Websiteより一部抜粋)