日加修好90周年の節目に考える日本とカナダ、そして 世界情勢の今後
2月22日にMcMillan LLPにてジャパンソサエティ・カナダが主催する「日本外交の基本方針・重点分野、日本経済の現状及び日加関係」をテーマに伊藤恭子総領事による講演が行われた。
冒頭にはジャパンソサエティ・カナダのベン・シプリエティ会長による挨拶があり、その中でシプリエティ会長は伊藤総領事の経歴を紹介したあと、今年は日加修好90周年の年であるため、伊藤総領事自ら日本の外交方針や経済状況、そして日加関係を知ることはとても貴重な機会であると述べた。
伊藤総領事は今日の日本の外交政策には3つのキーフレーズがあるとした。その3つとは日本の外交は概観的な世界の見方をしている、日本は率先して平和に貢献していく必要がある、そしてフリー・オープン・インド・パシフィック戦略(FOIP)が重要であるということだ。
政府としては現在6つの項目を優先度が高いものとしており、そのどれもが世界情勢を安定させるためのピースとなっている。
①日米の関係だけでなく他の友好国との関係性も深める
緊迫した北朝鮮情勢を踏まえ、日本はこれからアメリカだけでなくカナダを含めた国々とも協力していくことで日本と周辺地域の安定を図っていく必要があるとした。
②ロシア、中国、韓国といった近隣諸国との協力関係を強化
最近の各国との関係性について触れ、関係性の改善はみられるものの領土問題や慰安婦問題、ロシアとの平和条約が締結されていないことについて触れた。
③自由貿易の旗手として日本はより活発な活動を
3月8日に締結されるTPPや日本が2019年に開催地となるG20等の活動について触れ、今後インド太平洋においてより活発な活動を行っていくことに期待を寄せた。
④グローバル問題に対して積極的な貢献を
各国との情報共有等を通じてテロ対策を講じるだけでなく、その原因解消する努力をすること、そしてムスリムに対する先入観を持たないことが大切だと語った。
⑤中東との関係性強化
エネルギーの観点から、歴史的に中東は世界にとって重要な立ち位置を占めてきた。それは今日においても変わらず、日本は今後も中東との関係強化を図っていくという。また、争いの多い同地域において相互理解を進めるための活動も進めている。
⑥フリー・オープン・インド・パシフィック戦略(FOIP)
日本、オーストラリア、インド、米国を中心に協力ネットワークを強化し、アジア・太平洋地域の高校の自由と法の支配、公正で互恵的な貿易を推進するという構想だ。
アベノミクスと日本経済の今後
伊藤総領事はまずアベノミクスと3本の矢についての説明を行い、失業率や名目GDP等のデータを基にアベノミクスが日本経済を改善していると述べた。
また、日本が更なる成長を遂げるには生産性がキーワードになっているという。労働人口が減る日本ではIoTやAI、ロボットを駆使することで少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差を克服するためにSociety 5.0の実現が急がれることや、人的資源の確保のために更なる投資が必要になると語った。
その一方で日本はエネルギー自給率が低いことが問題になっており、この分野の発展のため、福島で進められている再利用エネルギーの開発について触れた。
同じ価値観を共有する日本とカナダの関係性
伊藤総領事は日本とカナダは似通った価値観を共有しているだけでなく、カナダは政治的にも安定した先進国であり、天然資源も豊富にある国のため、日本にとってとても重要なパートナーであると語った。これまでにも安倍総理とトルドー首相だけでなく大臣間、そして次官級2+2対話も活発に行われてきたことを強調した。
民間レベルでの交流も盛んであり、2018年現在カナダには7万0174名の日本人が滞在し、その内2万0289人がトロントに滞在している。カナダには日系カナダ人も多く存在し、その歴史を継承する日系カナダ文化会館はカナダと日本の関係を理解する上では非常に重要であるとした。
また、カナダには2015年時点で795社の日本企業が進出しており、経済活動も活発だ。
政府レベルでもJETプログラムや文部科学省の奨学金、そしてカケハシプロジェクトを通じた知日派・親日派を増やす活動が盛んに行われている。人の交流は勿論、マンク大学国際問題研究所に日本研究センターが設置されたことで定期的な講演会等も開催され、学術的な面でも日加間の相互理解促進の活動が進められている。
講演後は熱心に耳を傾けていた参加者から多くの質問が寄せられた。また、伊藤総領事には参加者の入った本が贈呈され、終始和やかな雰囲気の中講演会は幕を閉じた。
今後も政府レベルだけでなく企業レベル、民間レベルで日本とカナダ間の交流が活発に行われることで両国の関係性が更に深まっていくことに期待したい。