「不安定な局面を迎えている世界経済に対して日本とカナダがどのような貢献ができるか」Business Council of CanadaのCEOである ゴルディ・ハイダー氏が語る

 5月16日、Business Council of CanadaのCEOであるゴルディ・ハイダー氏によるプレゼンテーションがジャパン・ソサエティの主催により開催された。 不安定な局面を迎えている世界経済の中で日本とカナダがこの先さらに関係を深めていく重要さについてハイダー氏が語った。

米中貿易摩擦に代表される世界経済の変動

 始めにハイダー氏は現時点での世界経済にて言及。中でもハイダー氏が注目したのは中国の存在だ。アメリカと中国の間には「貿易戦争」とも呼ばれる貿易摩擦が起きており、自国の産業を守るべく互いに多くの関税や規制をかけているのが現状だ。また、ハイダー氏は「歴史上の例を見てもこのような摩擦から戦争に発展した例も少なくはない」と述べ、その危険性を指摘。同じことが再び起こらぬように日本やカナダをはじめとした国はどうすれば良いのか。この問いに対し、ハイダー氏は「確固たる外交政策と貿易に前向きな姿勢が重要になる」と答えた。

世界的に不安定な時代に必要とされる日加関係

 その中でも重要な鍵を握るのは日本であるとハイダー氏は述べ、カナダと日本には多くの共通点があると加えた。一つ目に、アメリカや中国といった国の隣国であるということ。二つ目に、民主主義であるということをハイダー氏は指摘した。さらに、オタワにて安倍首相とトルドー首相が共同で表明した国際秩序への協力など、日本とカナダはこれから先も力を合わせて世界の政治・経済に大きく貢献していくのではないかと期待を寄せていた。中でも、環境問題や性的差別の撲滅などに対する二国の前向きな姿勢を強調した。

 また、同じく多国間主義を現実にするために重要な役割を担うのは環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)であるという。この協定の中でカナダと日本が模範例になることにより、多くの国で多国間主義の政策や考え方を広めることが可能になるのではないかと指摘した。そのためにも、日本とカナダはこのCPTPPを可能な限り活用することが不可欠になると加えた。

 CPTPPを活用する一例として、日本の資源問題について言及。カナダの資源で日本の資源を多様化することが可能になるとハイダー氏は述べた。トロント・スターに掲載された自身の記事でも述べているように、LNGカナダプロジェクトでは日本の三菱商事が投資。その額は民間の企業がカナダに投資した額で過去最高だという。これを見ると、いかにカナダと日本が課題解決のために連携する強い意志を持っているかが明らかだ。ハイダー氏はこの例を用いて「政府によって建てられた橋をしっかりと渡るのが我々ビジネスの役割だ」と訴え、改めてカナダと日本が連携する大切さを強調した。

大企業のみならず中小企業にも手を差し伸べて

 しかしながら、これには課題もあるとハイダー氏は加えた。それは、いかに中小企業を取り込むかということだ。大企業は既に国外へとビジネスの拠点の視野を広げているのに対し、中小企業はなかなか踏み切れていないのが現状だと説明。しかし、中小企業が国際的に事業を広げることは自分たちの成長、さらには経済の発展のためにも欠かせないとハイダー氏は指摘した。そのためにも、中小企業が日本へ進出するために大企業が先頭に立って導く役割を担うことが重要だと語った。

 さらにハイダー氏は、日本とカナダが互いに援助をするだけでなく、両国が共同で他国を援助することも可能だと指摘。両国の知識と技術を合わせれば、主に空港や地下鉄などといったインフラの発展に貢献することが可能だと述べた。そのためにもCPTPPを活用し、両国が協力することにより成し遂げられることを世界の国々に知ってもらうことが重要だとハイダー氏は加えた。

 ハイダー氏のスピーチ後、伊藤恭子総領事はハイダー氏に対して質問。「カナダのビジネスパーソンにどのように日本の魅力を伝えていくのか」と、この先日本とカナダが協力していくにあたりいかに日本の存在感と知名度を上げていくのか、疑問を提示した。これに対しハイダー氏は「ミニミッションと呼ばれる日本への短期間の訪問を行なっている」とコメント。いくつかの企業の代表者を連れて日本を実際に見てもらっているそうだ。しかし、その際にサプライチェーンに携わっている中小企業の代表者も共に来日することを条件にしているらしい。これにより、大企業だけでなく中小企業も日本を新たな拠点として見るきっかけになる。

伊藤総領事

 また、「日本へ市場を拡大する意思がない中小企業も多い中、大企業はどのように多くの中小企業を取り込めるのか」という質問に対し、ハイダー氏は「大企業は事業を共に行なっている中小企業のことを考慮することが不可欠だ」と再び連携の大切さを強調。そのためにも、スピーチでも例に挙がったミニミッションのように始めは小規模なプロジェクトを通して日本の魅力を徐々に伝えていくことがやがて多くの企業から理解を得られるのではないかとハイダー氏は語った。何よりも大切なのは日本を見て日本について知識を深める機会をより多く設けることが大切だとハイダー氏は結んだ。

ジャパン・ソサエティ理事のデビッド・ウォーツ氏(右)