バンドSnarky Puppyで 2017年にグラミー賞受賞 小川慶太さんインタビュー|トロントを訪れた著名人

ニューヨークを拠点に活躍するプロドラマー/パーカショニストジャズフェスティバル・トロント公演


 夏の恒例イベとして定着しているトロント・ジャズフェスティバル。6月26日、その舞台に立ち、演奏をしていた1人の日本人がいる。小川慶太さんは、現在ニューヨークを拠点に活躍するプロのドラマー・パーカショニストだ。2017年には、Snarky Puppyーの一員としてグラミー賞を受賞した経歴を持つ。今回のジャズ・フェスティバルではバンド、バンダマグダで出演。バンダマグダは枠に捕らわれない自由な音楽を創り出し、また様々な言語を用い歌い上げる。メンバーもそれぞれが異なる国の出身という環境の中、小川さんは活動している。

 今回TORJAでは小川さんに音楽を始めたきっかけから、海外渡航の経緯、またトロントに関することまで、日本を飛び出し活動する音楽家から貴重なお話を伺うことができた。

テレビで見たドラム・ソロに影響を受け、音楽に興味を持った

ー現在プロのドラマーとして国際的に活躍されていますが、音楽を始めたきっかけを教えていただけますか?

 小学校高学年の時に、地元のテレビ番組を見ていたらジャズのライブをやっている番組がありました。その時、ジャズのドラム・ソロを見てすごい衝撃を受け、それでドラムに興味を持ちました。中学校に入ったときに同級生がバンドを始めたので、その時にドラムをやりたいと言いました。そこから音楽をやり始めた感じですね。その時はまだドラムに絞ろうと思っていたわけではないのですが、高校に入ってからはドラムをやりたいという気持ちがとても強かったです。高校を卒業してからは音楽の専門学校に2年間通い、その後東京で2年間活動をしていました。

ー海外に行こうと思ったきっかけを教えていただけますか?

 きっかけは、高校生の時にお世話になっていたライブハウスのオーナーが、「ボストンにある学校が音楽で有名だから行ったら良いよ」と勧めてくれて、興味を持つようになりました。高校卒業後に行った専門学校がボストンの学校と提携をしていたので、専門学校を卒業した後に単位を持って、アメリカの学校へ行こうと思っていたのですが、その前に東京の音楽シーンを見たいという気持ちも強くなってきていたので1度東京を挟みました。

トロントジャズフェスティバルで演奏をするバンダマグダ

ー海外生活だと、使う言語が英語になってくると思いますが、その点に関して不安などはありませんでしたか?

 今年で海外活動が13年目になるのですが、来てすぐは全く駄目でしたね。小学1年生の時から英会話を習ったり、高校の時には1ヵ月半くらい海外に行ったりしていたのですが、やっぱり使わないと忘れてしまいます。音楽だと使う言語も特殊になってくるので、やはり最初は分からなかったですね。ボストンの学校を卒業しニューヨークに引っ越して、プロフェッショナルな環境で働きだして、英語を使うようになってからだんだんストレスがなくなるというか、英語に慣れてきました。

ー今回トロントジャズフェスティバルではバンド、バンダマグダで出演されていますね。このバンドを含め、小川さんはニューヨークを拠点に活動されていますが、なぜニューヨークを拠点に決めたのですか?

 ボストンとニューヨーク自体が近いので、ボストンの学校を卒業したらニューヨークに流れていく人が多かったです。その流れで、僕も卒業してニューヨークに引っ越し、この地で挑戦というか、頑張ってみようと思いました。それこそ今日のバンドも、皆ボストンの学校に同じ時期にいたメンバーです。もう本当に気心知れている感じですね。また、音楽シーンについての話をしますとやっている音楽にもよるとは思いますが、僕のやっている分野のミュージシャンの多くはニューヨークを拠点にしているので、そういう意味ではあっているなと思います。

ドラムだけでなく様々な打楽器を操る

ー具体的に小川さんが現在やっている音楽を説明していただけますか?

 ジャズがメインではないのですが、影響は強いですね。ニューヨークはジャズミュージシャンの首都のような場所です。今回のバンドは、ワールドミュージックに少しポップなテイストが加わっているのですが、ポップスをやったりもします。ニューヨークは様々な人種が集まり、色々な音楽を混ぜて作っている街なので、自分のやっている音楽もそこからの影響が強いですね。説明するのは難しいのですが、世界各国の音楽が混ざった音楽ですね。

ー様々な人種の人がいるという点で、トロントはニューヨークと似ていますよね。

 そうですね。トロントは何回もきていますが大都会ですね。ですが洗練された感じもあり、とてもきれいな街だと思います。良いミュージシャンもたくさんいますし、特にラテン音楽のミュージシャンが多いのでその点ではニューヨークに似ていると思います。冬は寒いですが、僕はトロント、好きですね。

カナダの人はアメリカの人よりも余裕がある気がする

ー小川さんは今までに様々な国を訪れたそうですね。それぞれの国で違う雰囲気があると思いますが、小川さんから見て他国と比べてカナダはどういう雰囲気でしょうか。

 カナダは大きいですよね。地域によってメインで使われている言語も違い、ちょっと移動するだけで違う国のようです。街と人の雰囲気もアメリカとは全然違いますね。カナダの方が、余裕がある感じがします。のんびりしていて、雰囲気が良いなと思います。冬がすごく寒くなかったら、カナダに住めたらいいのにな、と思ってしまいますね(笑)。

これまでに3度グラミー賞を受賞しているスナーキーパピーのメンバー

ー日本と比べて、海外で活動するのはどのような点が良いと思いますか。

 僕がいるニューヨークで良いと思うのは、様々な国で演奏できる環境がある点ですね。もちろん、僕のいる環境が恵まれているとも思うのですが。例えば日本だと、大体日本人の中で活動するので、人種的にも文化的にも幅広さが限られてきます。今いる環境では行く場所により新しい発見があり、それを吸収して自分の音楽活動に活かせます。

ーバンド、スナーキー・パピーの一員として、グラミー賞を受賞した時の心境を教えていただけますか?

 すごく嬉しかったです。そのバンド自体は3回目のグラミー賞受賞なのですが、自分が参加した作品での受賞は初めてで、だからこそとても特別な気持ちがあります。やはりとても名誉ある賞ですので、嬉しい気持ちがなによりも大きかったです。

ー1日の練習時間はどれくらいありますか?

 練習はほとんどできないです。同世代のミュージシャンで、忙しくツアーをしている人は多いのですが、ツアーをしていると練習時間が本当に取れなくて。移動時間のほうが長いことあるので、練習する時間は皆無というか、長くできて1日1〜2時間ですね。ずっと家にいられる環境だと別だと思いますが、ツアー中だと部屋で楽器を練習できるという状況もなかなかないです。ですので、練習時間が足りずに本番に臨むこともあるのですが、そこは今まで積み上げてきたものと、自分の中で新しいものを吸収して発揮するようにしています。また、色々な場所に行ったことで刺激を受けているので、その経験から表現するようにしています。

次の世代が夢へと向かうエネルギーを与える側になりたい

ー音楽を通じて、どのようなことを伝えていきたいと考えていますか?

 僕が音楽を始めたきっかけや、今ここにいるのも、中学高校の時に影響を受けたミュージシャンなどがいます。同じようなエネルギーを、僕も次の世代に伝えられたら良いなと思います。今、音楽業界は節目のような難しい時期にあります。昔はCDが中心でしたが、今はインターネットの時代で、ミュージシャンが生活するには本当に大変な時期だと思います。若い子たちは保守的というか、やりたいと思ってもそこに自分の情熱を持っていくのが難しいと思うのです。僕のやっている演奏や活動で、何か1つのことを続けることで、エネルギーを与えられたらいいと思います。

ドラムを演奏する小川さん

ー音楽活動をする上で大切にしていることを教えていただけますか?

 毎回ベストを尽くすことですね。自分にできる事を精一杯その時その時出し切ることです。常に自分を高めていくことを忘れないよう心掛けています。

ー今後の展望を教えていただけますか?

 そこまで大それた夢みたいなものは、僕の中ではあんまり考えていないのですが、ずっと好きな音楽を作り続けて行きたいと思います。僕にしかできない表現をどんどん発見していって、自分の中で進化していけたら良いと思います。

 バンダマグダの音楽は、豊かな音楽性でありつつも心地の良いその音色を持つ。トロントの地において、そのユニバーサルな音楽性は誰の心をも楽しませているようだった。小川さんは親しみやすい笑顔が印象的で、舞台上でも楽しそうにドラムを叩く姿が、見る人々の心を一層はずませていた。小川さんの国際的な活動は、確実に次の世代へのエールにも繋がっているだろう。今後も小川さんと、そしてバンドが生み出す自由な音楽に注目していきたい。