日系2世アーティスト Kazu Kibuishiさん

ニューヨークタイムズ紙のベストセラー『AMULET』、さらにアメリカ版ハリーポッター記念 エディションのカバーイラストを手掛けたアメリカ在中、日系2世アーティスト Kazu Kibuishiさん
カナダ最大のインディーズマンガの祭典「Toronto Comic Arts Festival(TCAF)」インタビュー第2弾。今号は、アメリカ版ハリーポッター記念エディションのカバーイラストを手掛けた、Kazu kibuishiさん。ニューヨークを拠点に精力的な創作活動を行っている、Yuko Otaさん。インディーズの世界で自由な想像を楽しむ日系アメリカ人コミック作家、Yumi Sakugawaさんにお話を伺いました。

kazu-kibuishi-01Kazu Kibuishiさん

東京に生まれ、幼少期に渡米した日系2世のKazuさん。ストーリー作りに関わることができないという葛藤によって、アニメーター・グラフィックデザイナーから作家・イラストレーターへと転身。ニューヨークタイムズ紙のグラフィック小説シリーズ『AMULET(アミュレット)』でベストセラー作家に、さらにアメリカ版ハリーポッター15周年記念エディションのカバーイラストを手掛けたことでも広く知られるアーティストだ。そんなKazuさんにTCAFについて、また自身のキャリアについてお話を伺った。


コミックの世界で最高のイベントの一つ「TCAF」

私にとって今年は3年振りのTCAF参加です。TCAFはコミックファンによる、コミックファンのためのショーで、アート技術やその工程など、描くことそのものにより焦点を当てています。ですから、クリエイターやアーティストたちにとって、とても興味深いイベントだと思います。

24歳でアニメーター・グラフィックデザイナーから作家・イラストレーターへと転向
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ファミリー向けイベントにてフォトショップを用いながらその場で風景画を描くと同時に
質疑応答にも応じるKazuさん

私は大学卒業後、アニメ業界で数年働き、またグラフィックデザイナーとして働く傍ら、夜はコミックの制作に取り組んでいました。ウェブサイトで『Copper』というコミックストリップを毎月載せていたのですが、そこでコミックを出版してほしいというたくさんの要望を頂きました。実は、私は5歳の頃からコミックを描いていたのですが、それを仕事にできるとは思っていませんでした。ですが、意を決してコミック業界へと転向。プロとしてコミックを描き始めたのは24歳の時のことでした。

私は手塚治虫さんの『ブラックジャック』、そして宮崎駿監督作品が好きで、私はいつも絵よりも、物語に注目して作品を見ています。日本のマンガはとても充実していて、独自性があり、アメコミとは全く異なります。手塚治虫さんによって築かれたマンガのレベルは非常に高いものだと思います。私がアメリカに来た当時は、手塚治虫さんの描くようなマンガ(コミック)はアメリカになく、それならば自分が作らなければと、コミック制作を始め、その頃から参考ため、アメコミも読み始めました。

そして現在、私の作品をたくさんの人が読んでくださっていますが、それに対して驚いている自分がいながら、その一方で私の作品のようにマンガとアメコミとを掛け合わせた雰囲気の作品へのニーズがあることにも気付いていたので、それほど驚いていない自分もいます。

イラストレーターとしてよりも、作家として

私の作品に共通するテーマは「家族」と「助け合い」です。私の母はシングルマザーでしたから、私と兄弟は「母を守らないといけない」という気持ちが子供の頃から常にあって、子供の頃から兄弟揃って母をよく手伝いましたし、精神的にも金銭的にも母を支えています。そういった私の日常的にある感情が物語にも反映されていると思います。

私は仕事以外の時間は、主に子供や妻と過ごしています。私は絵を描くのは早いのですが、物語を書くのにはすごく時間がかかります。本を読んだり、映画を観たり、そして旅行をしたり、人と話したりと、できる限りのことを学んで作品に取り入れています。

私はみなさんが絵を楽しんでくださるのはもちろん嬉しいのですが、絵が私の作品の魅力なのではなく、そこに描かれている物語や情報といった内容を求めて多くの人が読んでくださっているのだと思います。絵はただの飾りに過ぎず、物語を理解することで、本当の意味で「本を読む」ということに至るのです。私はたくさんの時間をイラストレーターとして費やしていますが、私の頭の中は書きたい物語でいっぱいで、私はイラストレーターというよりも、作家ですね。

作家であるからこそ、作者の望むイラストがわかる

ハリーポッター記念エディションのカバーイラストを手掛けたことは、作家である自分がイラストレーターとして作品に携わるというとても興味深いものでした。作家である私には、作者がどんなイラストを望んでいるかがわかるので、作品を彼女の視点から見たり、また私自身が作者だったらと考えながらイラストの制作に取り組みました。そして、この本を読んだことのない新しい世代の人たちにもこの本を紹介したい、さらに私のファンにも、作者にも喜んでもらいたいという気持ちで制作しました。



カズ・キブイシ

作家、イラストレーター。ニューヨークタイムズ紙のグラフィック小説シリーズ『AMULET(アミュレット)』のベストセラー作家としても知られる。1978年東京に生まれ、子供のころ母と兄弟と渡米。カリフォルニア大学サンタバーバラ校を卒業後は、エンターテイメント業界で働くためロサンジェルスへ。近年はグラフィック小説家として活動。現在はカリフォルニア州アラバマ在住。