日本とカナダとの相互理解の促進への功績を認められ ケン・ノマ全加日系人協会元会長が外務大臣表彰を受賞

ケン・ノマ氏


9月14日、総領事公邸にて全カナダ日系人協会の元会長であるケン・ノマ氏への外務大臣表彰伝達式が行われた。日系三世でありながら日本で生まれ、8歳の時にカナダへ渡ったノマ氏。彼は長年に渡り全カナダ日系人協会の一員、やがて会長としてカナダにおける日系コミュニティの発展を支えた。また、1988年の賠償調停の交渉に携わるなど、日系カナダ人に限らず多くの移民の人権のために活動をしてきた。これまで日本とカナダの友好関係の発展へ大きく貢献したことが称えられ、ノマ氏は外務大臣より今回この賞を受賞した。

伊藤恭子総領事


 始めに挨拶を述べたのは伊藤恭子総領事。ノマ氏がこれまで歩んで来た道のりを振り返った。ノマ氏の家族は既にカナダへ移住していたが、ノマ氏本人は東京で生まれ、鹿児島で育ち、1959年、8歳の時にカナダへと渡った。そのため、ノマ氏は日系三世であると同時に日系一世でもある珍しい存在だと述べた。さらに、カナダへ移住してから常に日系カナダ人として人権問題や差別問題に立ち向かって来たノマ氏。日本人とカナダ人という二つのアイデンティティを持ち合わせた彼独自の視点を活かして、長年日系カナダ人の人権問題を解決すべく尽力してきた。彼の努力は1988年の賠償調停にて実を結んだと言っても過言ではない。伊藤総領事は改めてこの調停の重要性を指摘。日系カナダ人のみならず、カナダの歴史において移民の人権を守るための重要なターニングポイントになったと強調した。現在も日本に限らず多くの国から様々な人種の移民が集まるカナダだが、彼らの権利が守られているのもノマ氏のような人々の弛まぬ努力のおかげだと感謝の意を示した。

 伊藤総領事はさらにノマ氏の功績について言及。彼の活躍は日系カナダ人の人権問題解決だけにとどまらず、現在もカナダの日系コミュニティへ大きく貢献していると述べた。日加両国のアイデンティティを持ち合わせた彼の考えは歴史の教師としてはもちろん、カナダにおける日系コミュニティにとっても欠かせない視点を提供したと指摘。それを象徴するかのように、ノマ氏は二年間、全カナダ日系人協会の会長として活躍した。その際、彼は様々な方法でカルチャー・モザイクであるカナダにおける日本文化の存在感を確立した。中でも、ノマ氏が企画するカナダの学生のための日本への修学旅行を例にあげた。このプログラムを通して多くの学生と教師に日本文化に直接触れ、知る機会を与えている。同時に、様々な場で常に日本文化をカナダの人々に伝え続けてきたノマ氏。彼の多岐に渡る活動によりカナダの人々はより日本に興味を持つようになったと感謝の言葉を送った。

祖母に言われた言葉が重要な原点に

 その後、ケン・ノマ氏本人が登壇。この賞を受賞したことはとても光栄であると述べ、その重要性について語った。中でも、日本を旅立つ前に言われた言葉が彼にとって重要な原点になったと彼は指摘。鹿児島に住む祖母に「よい人間になってくれ」と言われたのが彼のこれまでの30年間の活動の原動力になったと言う。祖母はその言葉を口にした後、深々とお辞儀をし、最後まで顔をあげなかったそうだ。「きっと私がいなくなるのを見たくなかったのだと思う」とノマ氏はその時を振り返った。


 59年前に有名な氷川丸に乗ってカナダへとやって来たノマ氏。この地で高校教師になったのも、人権問題に立ち向かったのも、全ては祖母との約束を果たすためのものだったとした上で、この賞はまさにその約束を果たした象徴ではないかと述べた。「私の祖母がこれを聞いたら万歳と両手を挙げるに違いない」と述べ、会場からも温かい笑いが起こった。こうして祖母や家族に少しでも恩返しが出来たことを嬉しく思うと結んだ。今年は日加修好90周年であると同時に、1988年の賠償調停が結ばれてから30年と言う節目の年。この際だからこそとノマ氏は、「最初はカナダから拒絶されていた日系一世の皆さんの努力のおかげで、今こうして日本人はカナダにおいて権利を主張することが可能になった」と先代の貢献を称えた。それを踏まえ、我々がこれから先もこの権利を守り続ける義務があると強調。特にノマ氏自身も移民の一人として日系コミュティを引き続き先導し続けていきたいと述べた。

テリー・ワタダ氏


 乾杯の挨拶を述べたのはノマ氏の友人、テリー・ワタダ氏。ワタダ氏は改めてノマ氏が日加関係に大きな功績を残したと語った。日本は故郷(Homeland)でありカナダは第二の故郷(Home)であるとし、ノマ氏にとってこの二つの国を繋ぐのがとても大切なことであり、それを成し遂げるために彼はこれまで様々な偉業を達成したと述べた。これからも二国間の友好関係と理解をさらに深めるべく、日系コミュニティを引っ張って行って欲しいとエールを送った。その後、乾杯の挨拶を述べ、改めてノマ氏の表彰を祝福した。

 これまで50年もの間カナダと日本の架け橋となり、歴史的にも重要な功績を残してきたケン・ノマ氏。彼の長年の努力と活躍を称えるのにふさわしい賞ではないだろうか。既に多くの偉業を成し遂げてきたノマ氏だが、彼の活動はここで止まることはないだろう。これからさらに長い間、カナダにおける日本人コミュニティの先頭に立ち、両国の友好関係の発展のために貢献し続けていただきたい。