結婚離婚についてリュウ弁護士に聞く

不動産を含むビジネスロー及び移民法の専門家だけでなく家庭法にも詳しい
リュウ法律事務所 リュウ弁護士に聞く

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マリッジ・コントラクトの重要性

日本とカナダで一番の違い

クライアントの方から日本とカナダで一番の違いを良く聞かれます。日本の方は弁護士というのは問題が起きそうになったら相談に行く所だと思われている方が多く、カナダでは問題が起きる前に弁護士を訪ね、問題が起きるのを防ぐという事に主眼がおかれています。結婚問題においては、日本人は〝結婚は結婚〟と考えます。カナダでは、結婚は〝契約〟であると考えます。つまり日本人は結婚を重要な契約だと認識している方があまり多くありません。ビジネスの契約では日本でも必ず弁護士さんに契約書を持って行って確認するのに、なぜか日本人の方は結婚前に弁護士さんに結婚について相談する方が少ないのです。契約が破綻するわけが無い、だから契約書を確認する必要は無い、そういう日本の方が結婚で問題が起きた時にトラブルを解決出来ないで泥沼になってしまうケースを多く見ております。この様な事を言うと、結婚はお役所に行ってサインをするだけなので、契約書はない。という方がいるかもしれません。結婚という契約をしたらどうなるかは全て法律になっており、離婚の時にもどうなるかは全て法律になっております。つまり、結婚という契約をした場合、法律を読んで知っている、知っていないに関わり無く、法律を守る義務があるのです。何もしないで財産も子供も全て取られたとしても、法律を知りませんでしたでは何の言い訳にもなりません。離婚問題でも、日本では離婚を考え始めたら、弁護士に相談に行くというのは分かります。しかし、これは非常に重要な事ですが、契約をしてしまってから専門家に相談に行くのはカナダでは遅いといえます。カナダでは結婚と言う契約をするにあたり、マリッジコントラクトと言う契約書を結婚前に作って、トラブルが起きても解決出来る様に備えている方が多いのです。

契約社会のカナダ

契約社会のカナダでは、結婚・離婚に関わらず、一度不利な状況に陥ってしまいますと回復が非常に困難です。また、裁判に多くのお金がかかりますので、裁判にならない様に何をやるにも始める時にしっかりと専門家の意見を聞く、というのがカナダ流になります。もし、結婚前に取り決めが無く、離婚時の条件があわないというと、当然裁判になります。カナダで離婚裁判をした場合、裁判でどちらが勝っても裁判費用で両者が一文無しになるという事は少なくありません。普通は裁判費用が高い事が分かっていれば裁判をしませんが、親権の問題や感情のもつれなどがあると、お金の問題ではなく裁判になる事が多いです。また、財産が不公平に分けられると感じた場合でもよく裁判になります。
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専門家にアドバイスを受けて防げた具体例

自分たちの結婚は絶対に失敗しないと確信があっても、結婚前に、結婚・離婚・親権・財産・相続・移民などのカナダの法律についてアドバイスを受けていれば簡単に防げた事なのに、それをしなかったために離婚の時に心身を衰弱され、肉体的精神的に問題を抱えてしまった方もおります。具体例では、パートナーがお亡くなりになられたケースで、その財産は凍結されて相続人の手に渡ったのが数年後になったため、死亡後ご家族がすぐにお金が必要だったのに使えず借金をしたというケースもあります。カナダでは誰かが死亡された場合、その資産は凍結される事がございます。事前に弁護士に相談していれば比較的相続を早く行う事が可能です。また、私どもが良いと思っておりますのは「信託」です。もちろん、遺言書の作成と執行人の設定も重要ですが、信託を使えば財産の扱いに対する自由度は無限に広がります。また、パートナー死亡時にでも対応が可能ですし、離婚になっても対応できる契約書を作る事が出きます。カナダでは財産の管理は信託が最適な方法だと思われています。

日本の常識とカナダの常識はイコールではない

結婚する理由として、一緒に住むには結婚して移民権を申請するからと言う方が非常に多いですが、カナダでは結婚のスタイルは様々で、オンタリオ州では、法律的にもコモンローでの結婚と、役所に登録する結婚の2種類がございます。どちらで結婚すれば良いか?というのは直接的に離婚・親権・財産・相続・移民に関わってきますので非常に重要です。カナダではこれら全てについて総合的に法的なアドバイスが行えるのは弁護士だけです。また、移民局から移民を却下されたケースでも、弁護士が裁判で移民を認めさせたケースが多くございます。

ケーススタディ: カナダ人のご主人と日本人の奥様のケース

奥様は貿易会社で勤務されているキャリアウーマンなのですが、ご主人は売れない俳優で仕事が無い時は遊び回っているという生活でした。仕事もほとんどお金にならないような事が一ヶ月に一回あるくらいで収入はほぼゼロ、本当にお金が無い時は、ワーホリや学生を見つけては英会話教室といい、お金をもらったりする有様でした。仕事・掃除洗濯・家のローンの支払いなどはすべて日本人の奥様がやられておりました。日本であれば、こんな男性が夫であれば世間や近所から非難轟々で、毎日非難されて辛いのでちゃんと仕事でもしようと思うのでしょうが、非常に残念ながら、カナダでは平然と遊び回る男性が少なくありません。日本の常識であれば、これで離婚にいたれば、ご主人は何も無い状態でほっぽり出されても文句が言えないと思いますが、カナダでは違います。カナダでは一方が全く働かないで何もしないでも、財産の半分を要求する権利があります。つまり、ローンで家を買い、奥様が、掃除洗濯・ローンの全額を払っても夫婦の財産の半分は、〝ヒモ〟であるご主人にあるといえます。多くのカナダ人が行っている様にマリッジコントラクト(婚前契約書、婚姻契約書)を弁護士さんに作ってもらっていればこの様な悲劇は避けられたと思われます。これは日本では由緒ある家柄、格式のある家系では時々見られますが、カナダでは普通の事です。

マリッジ・コントラクトの重要性

ところで、なぜカナダではどちらか一方しか働かなくても財産を半分に分けるのでしょうか?それは、専業主婦が離婚時に無一文で放り出されない様に、夫婦で財産はどっちがお金を家に持ってきても半分に分けるというのが原則です。法律は非常に厳格になっておりますので、フレキシブルに対応してくれません。しかし、法律を知っていればいくらでも事前に対応できます。それがマリッジ・コントラクトです。例えば、海外旅行でAという国に行くとします。旅行会社の人があの国は医療費が高いので一億円の海外保険に入って行きなさいと言えば、現地で治療費として1000万円を請求されても保険で全額カバーされます。逆に入っていなければ1000万円を払う必要があります。外国人なので制度を知らなかったから治療費を一万円にしてくれ、こんな言い訳は絶対に通用しませんが、離婚で問題を抱えてご相談されてくる方には、自分が離婚で不利になると知って、そんなカナダの法律は知らない、理不尽だ、日本人なのになんで従わなければならないのか?と思われる方が少なくありません。 カナダの法律は日本人にはおかしいと思われる場合が多いかもしれません。しかし、それに従いたくない場合は、結婚前に契約書(マリッジ・コントラクト)を作ればよいとなっております。これは遺言書と同じです。遺言書があれば自由に遺言を残せますが、無いと出来ません。日本人の方は遺言書を作られる方は多いのですが、マリッジ・コントラクトを作られる方は、現状は少ないといえます。
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離婚時に不利益にならないために

逆に言えば、専門家にきちんと頼めば、離婚時に不利益になることはありません。国際離婚は泥沼離婚になると多くの方が言われますが、結婚前に専門家に相談するだけで、本当にわずかな費用と時間で、離婚になっても全く時間もお金もかけないできれいに別れる事が出来きます。オンタリオ州の婚姻を管轄する省のホームページでも、オンタリオ州の法律に違和感を持っている場合は、マリッジ・コントラクトに自分の要望を加える事が出来ると書かれております。つまり、上述の例でいうと、全く働かないご主人に財産を持って行かれるというオンタリオ州の法律が悪いのではなく、きちんとオンタリオ州のルールを知って、事前に文章で残しておけば、自分の思った通りの離婚条件になるという事です。 これは本当に重要な事ですが、法律は知らなかったでは通用しません。法律を知らなかった奥様の無知に責任があったのです。日本なら日本の常識で理不尽な事は起きないと思うケースでも、外国では起きえますし、知らなかったでは済みません。外国では法律を知らないと言うのは、常に大きな損害を受ける危険があるという事です。こういうケースが多いので、オンタリオ州政府のホームページでも色々と警告をしておりますが、やはり、裁判、弁護士、契約などは日本人からはなじみの無い世界で、少なくても問題が起きるまで何もしないという方が殆どです。これが日本人が国際離婚をする時に大きなトラブルになる原因と思われます。結婚は契約なので、商売の契約の様に契約する前に専門家に相談する方が、費用もさほどではないので無難と思われます。特にカナダの法律が日本人の常識とかけ離れているものもありますので、問題が起きてから〝理不尽〟な法律に苦しまされることは無くなるでしょう。最後に成功例として、当事務所はとあるケーキ屋さんをオープン以前、会社の設立からお手伝いしておりますが、会社の登記、マーケティング、コネクション作り、不動産契約などスタートラインを成功させる事により大きな成功に導きました。何事もはじめが大事です。失敗前から相談するのはおかしいと思う日本人の方がいらっしゃいますが、カナダでは失敗してからでは遅く、より成功の可能性をあげる為に、始める前に専門家に聞く事が非常に重要です。

※当コラムはオンタリオ州の法律に基づいております。また、コラムであり一般的な情報提供を目的としており、法的アドバイスを目的に書かれてはおりません。アドバイスが必要な場合は個別に専門家にご相談ください。



ビジネスコンサルタント  大川浩義氏 B.Sc. LL.B.
トロント大学卒、同大学にてリサーチアシスタントを経て、バンクーバーのWDMアカウンティングファームで研修。カナダ在住15年の豊富な経験を活かし、現在は、リュウ法律事務所にて移民、不動産、ビジネス関連のスペシャリストとして活躍中。



リュウ法律事務所 弁護士 (Multi-lisenceカナダ及び中国) Y. リュウ氏
北京大学法学部、トロント大学文理学部、サザンプトン大学法科大学院(英国)、トロント大学法科大学院(ITLP)を卒業、500人以上の弁護士が在籍したカナダトップクラスの弁護士事務所Heenan Blaikiから独立し、ベイストリートに自らの法律事務所を持つ。アジア、北米、ヨーロッパの三つ全てトップラスの法学部を全て卒業し弁護士資格を2つ持つ真のインターナショナル弁護士。