私、国際結婚します!! でもちょっとその前に知っておきたいお話 #07 なぜ国際離婚後、子供と日本に帰ってはいけないのでしょう?

なぜ国際離婚後、子供と日本に帰ってはいけないのでしょう?

「日本で結婚して子供も日本で生まれたのに、カナダで離婚したら子供と日本に帰れないのはなぜですか?」

離婚後、親が子供と共に遠方への引越しを希望する場合は、もう一方の親の許可が必要です。共同親権が一般化したカナダでは、一方の親が子供と海外へ転居することを快く許す親は稀でしょう。

という前回の記述に対して冒頭のコメントをいただきました。「子供がカナダで生まれた場合はともかく、日本で生まれ育った子どもが日本に帰れないのはおかしい」という意見です。

そこで今回は、「もう一方の親の許可なく子供と一緒に国境を超えてはならない」という決まりのおさらいです。まず、国際結婚のケースを二つ紹介させてください。

2014年に筆者が発表した研究論文の調査で、日本人女性がカナダ人男性と知り合う主なきっかけが、ワーキング・ホリデーとジェット・プログラムであることがわかりました。ワーキング・ホリデーの場合は、女性が日本に帰る直前に、結婚を決めてしまう例が多く見られました。また、ジェット・プログラムで来日していた男性と知り合い日本で結婚してから 「カナダに引っ越す」ケースも定着しているようでした。

日本に住んでいた国際カップルが、夫の国に移住するということは、夫にとっては帰国であり家族や友人との再会であるのに対し、妻にとっては言葉の壁や社会的地位の低下など、大きな犠牲を伴うことが多いのです。

もうひとつ注意したいのは、多くのワーキング・ホリデー体験者にとっての国際結婚が、はじめから移住を意識したものであるのに対し、日本で夫と知り合い日本で結婚生活を営んでいた場合は、カナダに移り住むことは、夫の意見や希望を尊重した「引っ越し」である場合が多いのです。

夫のはしゃぐ姿に気持ちが冷めたり、急に横柄になった夫に驚いたり、なかなか仕事が見つからない夫に苛立ったり、自分の言葉の不自由さや何事も夫の力を借りないと前に進めないことに情けなくなったり…カナダ人の夫に伴いカナダに引っ越すことなった妻たちのストレスは、体験者ならずとも理解できるでしょう。

さらに、日本で知り合い、日本で結婚し、日本で子どもを育てていた女性が、夫の希望でカナダに引っ越したものの、夫の態度や性格がすっかり変わってしまい、ケンカが絶えなくなり、離婚を考え始める…というケースは、近年頻繁に報告されています。
 
さて、本題に戻ります。 「日本で生まれ育った子どもを父親の許可なく母親が日本に連れ帰れない」のはなぜなのでしょう。

「もう一方の親の許可なく子供と一緒に国境を超えてはならない」というのは、カナダの法律であり、「万一国境を超えた場合は、子をその常居住国に戻す」というのは、日本も批准した(認めた)国際条約です。したがって、子供がどこで生まれようと、日常会話が何語であろうと、常居住国の法律に従うことが義務付けられています。

これは両親が共に日本人であっても、例外ではありません。 とすれば、一方の親がカナダ国籍であった場合、たとえ日本での生活が長くとも、このルールが適用されることに納得できるかもしれませんね。

ハーグ条約ケースで頻繁に問題視される「常居住国」とは、 どんなに短期間であろうとも、最後に居住していた場所のことを指します。したがって、日本での生活の方がずっと長く、カナダに来たばかりであったとしても、国際離婚に適応される法律は、常居住国、つまりカナダの法律なのです。

ですから、カナダへの引っ越しを決める前に「移住」という言葉の重みを十分に把握することが大切になってきます。国際離婚は自分にも起こりうることを理解し、「万一の時は、共同親権を受け入れカナダで子育てを続けることができるかどうか」という問いに対して、イエスと答えられないようであれば、カナダへの引っ越しには慎重にならざるをえませんね。

APJW 月例勉強会

11月20日(日)2〜4pm / 託児(有料)
テーマ:国際結婚とハーグ条約
参加費:$5(会員無料)
問い合わせ:contact@apjw.info



kokusaikekkon160601野口洋美 心理学名誉学士(HBA)、コミュニケーション学修士(MA)
NPO法人APJW代表:別居や離婚を経験することになった日本女性の相互支援(ピアサポート)団体(web:apjw.info)の代表として、自立に向けての様々なテーマで勉強会を毎月開催。2015年、APJWはオンタリオ州のNPOとして承認される。国際離婚関連の執筆多数。離婚駆け込み寺(日加タイムス)、ひとり親のつぶやき(mamma、日系ボイス)など連載。2014年、国際離婚とハーグ条約をテーマにヨーク大学にて修士論文を発表。法律通訳としても活躍中。