東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い 第47回

5月に行われ盛大なにぎわいをみせた日本酒フェスティバル、Kampai Toronto vol.4。
このイベントに参加した岩手県、南部美人の蔵は3.11東日本大震災で被災した蔵のひとつだ。南部美人の5代目である久慈氏は震災直後から日本酒を通じて地域復興に様々な取り組みを行ってきた。TORJAでは久慈氏が体験したこと、復興に向けての取り組みなどを寄稿してもらった。

東日本大震災から、2016年3月11日で5年が過ぎました。5年というと長いようで短いような、何とも言えない不思議な区切りでもあります。そんな、東日本大震災から5年の節目の年に、この震災で岩手県の中で最も大きな被害を受けた陸前高田市にあった酔仙酒造さんの素晴らしいニュースが飛び込んできました。
酔仙酒造さんは、今では陸前高田市の隣の大船渡市の高台に大船渡蔵を建設して酒造りをしております。東日本大震災からの復興の模範例として、全国様々な場所で紹介されていますが、その酔仙酒造さんが、今回の東日本大震災から5年の区切りの年に、アメリカのニューヨークに金野社長が渡り、在留邦人によるボランティア団体が主催し、ニューヨークの教会で開催された追悼式典に出席しました。
金野社長はこの追悼式典に被災地在住者として初めて出席、約430名の参加者の前で、支援への感謝の言葉と防災の大切さについてお話ししました。あの大津波ですべて流されてしまった酒蔵。どん底の失意の中から不死鳥のように復興し立ち上がったその経験や、これまでの5年間の軌跡について大いに語ったとのことでした。
酔仙酒造さんは、震災前から海外輸出にもとても積極的な蔵元で、岩手の中でもトップ3に入る輸出量を誇っていました。しかし、あの震災で海外輸出を出来る環境が整わず、被災してから数年は海外輸出をすることができませんでしたが、アメリカの酒卸商社が震災復興の象徴として、アメリカに再度、酔仙を販売したいということで、新しく銘柄を変え「希望(KIBO)」という銘柄で商品の出荷も始まりました。
酔仙酒造さんといえば、ワンカップ缶に入った「雪っこ」が代表商品であることから、「希望(KIBO)」もワンカップ缶で商品化され、今ではニューヨークをはじめ、全米で販売されています。この商品を買った人、見た人が東日本大震災を思い出してくれ、被災地に思いを寄せ、そして金野社長が今回の講演で話したように、いつの日か復興した陸前高田にたくさんの外国人の皆さんに来てほしい、そしてその復興した姿を見て欲しい、という思いが叶うことを願ってやみません。
私も酔仙酒造さんの復興のストーリーは間近で見てきました。想像を絶する絶望の中から立ち上がるその姿は、まさに日本人の誇りであり、日本という国の強さでもあると感じています。
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伝統産業の酒蔵が率先して復興を成し遂げていくその姿は、岩手の被災地の皆さんにも、そして全国の皆さんにもどれだけ感動の涙を流させたでしょうか。
今回ニューヨークで金野社長が初めて被災地の現状を話す機会を得て、これからも多くの被災地の代表者がその目線で感じたことをどんどん世界で話せるような時代になることこそが、復興の足跡になるのだと思います。


オンタリオ取扱い代理店:
nanbu-bijin-sakeOzawa Canada Inc
現在トロントで楽しめる南部美人のお酒は、「南部美人純米吟醸」とJALのファーストクラスで機内酒としても採用されている、「南部美人純米大吟醸」の二種。数多くの日本食レストランで賞味することが可能。
南部美人
http://www.nanbubijin.co.jp



kuji-kousuke-sake本文:南部美人 五代目蔵元
東京農業大学客員教授
久慈 浩介