東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い 第56回

トロントの日本食レストランでも良く見かける、岩手県の銘酒である南部美人。実は南部美人の蔵は2011年3月11日の東日本大震災で被災した蔵のひとつだ。南部美人の5代目である久慈氏は震災直後から日本酒を通じて地域復興に様々な取り組みを行ってきた。TORJAでは久慈氏が体験したこと、復興に向けての取り組みなどを寄稿してもらった。


2017年1月になり、被災地からこのようなニュースが飛び込んできました。
東京電力福島第1原発事故後、避難せずに診療を続けてきた高野病院(福島県広野町)の高橋医院長(81歳)が昨年12月30日に火災で亡くなり、常勤医が不在になってしまったそうです。

81歳という年齢にも驚きましたが、今までこの81歳の医院長が一人で常勤医をつとめながら、震災後の患者さんのケアにあたっていたそうです。

しかし、1月末に外科医の中山先生が2か月限定ではありますが、3月いっぱいまで常勤医として東京から勤務に入ってくれるというニュースもその後出てきましたが、残念ながら期間は2か月だけということで、それが過ぎればまた高野病院は常勤医がいなくなり、入院なども出来なくなってしまいます。

医師不足の問題は東日本大震災前から、東北各地では問題視されており、今でも被災を免れた東北地区でも深刻な問題として取り上げられます。
そんな中で、被災地ではこの医師不足の問題はさらに拍車がかかり、東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島の3県で見てみると、診療所は13%が休廃止になっているという事実も判明しました。

その中でも、岩手県で大変大きな津波被害を受けた大槌町ではなんと4割も減ってしまっている地域もあります。
これは震災による建物被害や医師の死亡はもちろん、避難による患者の減少などが理由で、被災地では公営災害住宅などの生活再建が進みますが、地域医療は大きく損なわれていて、今後は復興の足かせになる恐れもあります。

被災した大槌役場

被災した大槌役場


学校や医療が今までどおりに受けられないということは、避難していた人たちは愛着のある地元に戻りたいけれど、お年寄りの事や子供の事を考えると、便利で医療も沿岸部よりはしっかりとしている内陸部の都市に移住してしまいます。

気持ちは生まれた土地に戻りたいけど、戻ることであまりにも震災前よりも不便になっていると、戻ることが出来ないのです。
それが、医療という部分だと大きな問題に感じる事でしょう。

もちろん、医師の中には、住民の帰還が進めば医療を再開しよう、という考えもあるかもしれませんが、人口減少は確実な中で、また再度津波の被害を恐れながら、沿岸部の過疎地で医療を再開するのはとても困難な事です。
これは、医師を責めるわけにはいかないと私は感じています。

医療インフラの復興は、東北の復興全体に大きな影響を与えますが、それを医師個人の志にゆだねるのはとても難しいですし、限界があります。

拠点病院との連携や、効率的な医療の提供など、県だけの問題ではなく、国が大きく関わって問題解決に導かない事にはどうすることもできないような気がします。

これからの復興の道のりの中で、大きな問題になっている被災地の医師不足と病院不足。解決策はまだまだ見つからないようです。


オンタリオ取扱い代理店:
nanbu-bijin-sakeOzawa Canada Inc
現在トロントで楽しめる南部美人のお酒は、「南部美人純米吟醸」とJALのファーストクラスで機内酒としても採用されている、「南部美人純米大吟醸」の二種。数多くの日本食レストランで賞味することが可能。
南部美人
http://www.nanbubijin.co.jp



kuji-kousuke-sake本文:南部美人 五代目蔵元
東京農業大学客員教授
久慈 浩介