東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い 第58回

トロントの日本食レストランでも良く見かける、岩手県の銘酒である南部美人。実は南部美人の蔵は2011年3月11日の東日本大震災で被災した蔵のひとつだ。南部美人の5代目である久慈氏は震災直後から日本酒を通じて地域復興に様々な取り組みを行ってきた。TORJAでは久慈氏が体験したこと、復興に向けての取り組みなどを寄稿してもらった。



東日本大震災で大きな津波被害を受けた岩手県沿岸部ですが、その沿岸部には約220の水門があります。
東日本大震災前までは、この水門はほぼすべて手動で開け閉めをしておりました。

当然東日本大震災がおこり、消防はこの水門を閉めに行かなければなりません。
10メートルを超す大津波警報が鳴り響く中、消防団員はその大津波に向かって水門を閉めに走ったのです。
どんな思いで走ったのでしょうか…。

10メートルを超す大津波なら、間違いなく水門を越えますので、行ったところでどうすることもできないのではないか、と今となれば思ってしまいます。

しかし、消防団の皆さんは、それが「使命」であり、「任務」であります…。
そして、多くの水門を閉めに走った消防団員のかけがえのない大切な命が失われました…。
水門を越えてくる大津波に向かい走っていく消防団の皆さんはどんな気持ちでそこに向かったのでしょうか。

もう今となってはその気持ちはわかりません。しかし、言えることはただ1つ。

「なぜそんな危ない思いをして水門を閉めに行かなければいけないのか。命より大事な任務はあるのか。そして、なぜ水門を遠隔操作で自動閉鎖するようにしていなかったのか」。これにつきます。

nanbu-bijin-oz-canada-inc-5801
岩手県では、国にこの水門の自動閉鎖について、かなり前から陳情をしていたそうです。しかし、莫大なお金がかかることから見送られてきて、これほど大きな災害が起き、水門を閉めに走った尊い命がたくさん亡くなってはじめて2017年度に沿岸部にある約220の水門にやっと、やっと、自動閉鎖するシステムが導入されると決まりました。

私の友人は陸前高田の消防士でした。東日本大震災の時、彼は水門を閉めに走った一人でした。その尊い命は、津波に飲み込まれ、失われてしまいました。

今考えれば行っても水門は閉められるわけがありません。大津波のほうが早いし、大きいので、意味が無いと思うのですが、彼は水門に向かって走りました…。

まだ若いその命をはじめ、多くの命を失ってからやっと予算がつくなんて、どうしても私は納得できないところがあります。
もっと早くやってくれていたら、私の友人をはじめ、多くの尊い命は失われませんでした。
命とお金と比べて、命のほうが誰もが大事だと言うにきまっています。
しかし、その声は国に届かず、東日本大震災では悲しい結果となりました。

尊い命と引き換えに、と言えば大げさかもしれませんが、水門の自動併催システムがやっと運用されます。
次に起こるであろう大きな災害では、水門に走って亡くなる命はもう無いと信じています。水門に走った消防士に哀悼の意をささげます。


オンタリオ取扱い代理店:
nanbu-bijin-sakeOzawa Canada Inc
現在トロントで楽しめる南部美人のお酒は、「南部美人純米吟醸」とJALのファーストクラスで機内酒としても採用されている、「南部美人純米大吟醸」の二種。数多くの日本食レストランで賞味することが可能。
南部美人
http://www.nanbubijin.co.jp



kuji-kousuke-sake本文:南部美人 五代目蔵元
東京農業大学客員教授
久慈 浩介