ようこそお茶の世界へ お茶の時間 #06
紅茶のシャンパン
前回からの紅茶続きで今回は、インドの紅茶を飲んでみましょう。インドの紅茶は、それぞれ地方の名前が付けられています。ダージリン、アッサム、ニルギリ等、どれも地方の名です。この回では世界三大紅茶の一つで、“紅茶のシャンパン”とよばれているダージリンティーをご紹介します。
ダージリンティーの1番の特徴は、マスカテルフレーバーと呼ばれる葡萄のマスカットのような風味にあります。ちょっとお行儀が悪いかもしれませんが、ティースプーンで紅茶をすくい、音を立てて空気を口の中に含みながら「ズルッ」と啜ってみてください。その時にフワッと広がるその風味が、正しくマスカテルです。
ダージリンティーには1年で3回収穫の時期があります。それぞれファーストフラッシュ、セカンドフラッシュ、オータムフラッシュと呼ばれ、全く違った味わいの紅茶になります。
ファーストフラッシュの収穫時期は3月から4月です。ダージリンにある約80の茶園の中でも、“マカイバリ茶園”、“キャッスルトン茶園”などが有名です。各茶園からファーストフラッシュのサンプルが届き、味見をするのはティーソムリエの仕事の中でも楽しいことの一つ。今年はどこの茶園のどのお茶を仕入れようかと、値段なども比較しつつ、選ばれたお茶が5月の初旬には店頭に並びます。皆さんがこのコラムをお読みになっている頃には、新鮮なファーストフラッシュを飲むことができるでしょう。淹れた時の色は紅茶というよりも緑茶に近く、爽やかな口当たりなので一般に浸透している紅茶のイメージとはかけ離れているかもしれませんが、是非一度は試して頂きたい紅茶の一つです。
今月のお茶 「マーガレットホープ茶園のダージリンティー」
ダージリンのマスカットフレーバーを一番堪能できるのが、5月から6月に収穫されるセカンドフラッシュです。鮮やかなオレンジ色の紅茶は、その見た目通りすっきりとしたシャープな味わいが楽しめます。
茶園主の娘(マーガレット)は、結婚でイギリスへ向かう旅の途中で亡くなりました。茶園から離れることを大変惜しんだ彼女の名前からマーガレットホープと名付けられたそうです。
Maya Racine
Tea Association of Canada公認のティーソムリエ。日本、ジャマイカ、フィリピン、スイス、イギリスと人種も文化もまったく異なる国での在住中は、旅行会社と航空会社に勤務。カナダはモントリオール、カルガリーでの生活の後、ついにトロントへ。何か新しいことを始めてみようと、お茶の世界へ飛び込んだ。お茶は楽し。