トロント不動産情報 VOL.28
本文:照岡 敏介 -Toshi Teruoka オンタリオ州政府公認・リアルエステートライセンス保持者
“トロントは不動産バブル?”“不動産ブームは何時終わるの?”
アメリカ合衆国では、サブプライムローンにより住宅価格破壊が引き起こされました。
サブプライムローンとは、主にアメリカ合衆国において貸し付けられるローンのうち、サブプライム層(優良客(プライム層)よりも下位の層)向けとして位置付けられるローン商品を言い、通常の住宅ローンの審査には通らないような信用情報の低い人向けのローンです。狭義には、住宅を担保とする住宅ローンを対象としますが、広義には、自動車担保など住宅以外を担保とするものを含む。一般的に他のローンと比べて債務履行の信頼度が低く、利率が高く設定されます。これらのローン債権は証券化され、世界各国の投資家へ販売されたが、米国において2001〜2006年ごろまで続いた住宅価格の上昇を背景に、格付け企業がこれらの証券に高い評価を与えていました。また、この証券は他の金融商品などと組み合わされ世界中に販売されていました。しかし、2007年夏ごろから住宅価格が下落し始め、返済延滞率が上昇し、住宅バブル崩壊へと至ります(サブプライム住宅ローン危機)。これと共にサブプライムローンに関わる債権が組み込まれた金融商品の信用保証までも信用を失い、市場では投げ売りが相次ぎました。この波紋から2008年終盤にはリーマン・ブラザーズ倒産によるリーマン・ショックなどが引き起こされ、高い信用力を持っていたAIG、ファニーメイやフレディマックが国有化される事態にまで至りました。
サブプライムローンに限らず、アメリカにおいて、住宅ローンの返済方法として、当初数年間の金利を抑えたり、当初数年間は支払を金利に留めるなど、当初の返済負担を軽減したものが普及し、そのため債務者が自分の返済能力を超えた借入を行うことが可能となり、そのような貸付が増加していました。極端なケースでは当初支払を、利子を下回る金額に抑えるものもあり、この場合には元本そのものが増えていくケースも。
本質的には通常の住宅ローンよりも債務不履行のリスクが高い構造を有しますが、住宅の価格が上昇している場面においては、返済の破綻は必ずしも表面化しませんでした。債務者の所得が上昇せず、生活費が上昇して本来であれば返済に行き詰まる状況であっても、住宅価格が上がっている場合には、債務者は住宅価格の値上がり分について、担保余力が拡大することから、その部分を担保に、新たな追加借入を受けることができた(Home equity loan)。これにより破綻を先延ばしするだけでなく、消費を拡大することもできました。
また、住宅価格が大きく上昇すれば、当該住宅を転売してローンを返済したうえに、差益も得ることも可能であった。当初負担の軽い返済方式の普及とも相まって、所得からすれば本来、住宅ローンを組めない人にまでローンを組む人が増えて、住宅ブームが拡大する間は破綻が表面化せず、むしろ住宅ブームを加速した。これは日本のバブル景気における住宅すごろくと類似しています。