合法大麻産業に見え隠れする人種差別的なカナダの一面を考察|特集「カナダ大麻合法化」から1年が経過して分かったこと

 非医療用大麻がカナダで合法化されて一年。大麻は資本主義社会の規範のように、社会的不名誉で危険な「薬物」から、富裕層の白人カナダ人が関与していると称賛される商品へと大きく変化を遂げた。

 「カナダの大きな不公平の1つは、大麻禁止法の施行の不均衡が少数派コミュニティ、先住民コミュニティ、および最も脆弱な地域の人々に対する影響だ」と、元トロント警察署長がThe Globe and Mailに述べたように、カナダでは長年に渡って大麻禁止法は黒人および先住民を対象にしてきた。

 トロント大学の犯罪学者Akwasi Owusu-Bempah教授の調査によると、白人の方が薬物を使用および販売する割合が高いにも関わらず、それらの犯罪に対して白人が逮捕、起訴、または投獄される可能性は有色人種に比べて圧倒的に低い。大麻関連の犯罪歴を持つ有色人種のカナダ市民の数は50万人を超え、黒人と先住民の市民は警察からの注意から投獄まであらゆるレベルにおいて標的にされてきた。肌の色が違うだけで、大麻との関与への社会の反応は全く違う

 このような背景から、現在急速に成長している大麻産業の利益と富は、人種差別的な薬物法と執行によって過去数十年被害を受けてきたコミュニティへの賠償に充てられるべきなのは明らかである。しかし、モントリオール・ガゼットが2018年に実施した調査によると、カナダの大麻の生産者および流通業者の上位5社の管理スタッフのわずか3%が有色人種であり、米国の格差を模倣しているような結果となった。

 現在、大麻が生み出す利益と富の殆どが新規参入者の白人カナダ人の財布に入っていく。今まで不釣り合いに逮捕され、起訴され、投獄されてきた有色人種の存在は無視されたままだ。

カナダの大麻禁止法の背景にある人種差別

 カナダの薬物禁止法の歴史を振り返ると、大麻禁止法と人種差別には深い繋がりがあることがわかる。1908年のカナダのアヘン法は、中国人移民が「カナダ人(白人)の若者」に悪影響を及ぼすという反アジア人差別に結びついていた

 そして、カナダの大麻禁止法は著名なカナダ人作家エミリー・マーフィーの人種差別的思想が反映された1922年の本、『The Black Candle』を基盤に構築されている。マーフィーは「有色の異星人たち」が薬物を使用して「白人社会の崩壊を引き起こす」という陰謀説を一般化し、本が出版されて間もなく、大麻はカナダで1923年のアヘンおよび麻薬薬物法の薬物の制限リストに追加され、1961年の麻薬規制法により大麻使用者には有罪判決が行われた。

 これはカナダに限った話ではなく、世界的な20世紀初頭の大麻を含む麻薬の禁止には人種差別と移民の削減に深い繋がりがあった。アメリカでは1920年代に有色人種に対する明確な差別が法律で禁止されたが、移民を目の敵にした政府や警察関係者たちは、大麻使用が広まっていた有色人種コミュニティを抑圧しようとメディアを大々的に利用した。

 「大麻を吸ったメキシコ人男性が家族を殺害した」など大麻による凶暴性を訴えるデマを報道し、警察は数十年間に渡り薬物法で有色人種を弾圧した。ドナルド・トランプ大統領が演説で幾度も「メキシコ人移民は犯罪とドラッグを持ち込んでいる」とメキシコ系移民に対する憎悪を煽ったのも、依然としてメキシコ系移民がこのステレオタイプ的なコンテクストに紐づいているからである。

合法大麻産業の人種間の不平等

 長年の大麻活動家John Akpata氏はカナダの大麻の新興産業に関して、トルドー政府の規制で定められた基準を満たし、ライセンスを所有する為には500万ドルから1,000万ドルの費用が掛かると述べている。大企業あるいは高額の企業財務支援にアクセスできる者以外の生産者は法的なライセンスを求めること自体禁止されているということだ。

 カナダの富と所得の確固たる人種間の不平等を考えると、この規定は人種差別的な大麻産業を形成するのに貢献している。この規定が白人のカナダ人のみに大きな利点を与えていることは明らかだ。

 研究によると、オンタリオ州の人種的少数派の者は白人よりも貧困率と失業率が高く、雇用された時の賃金が低い。特にトロントでこれらの不平等は鮮明に示されており、人種的少数派の居住者は低所得の地域に集中し、白人が裕福な地域に密集している。The Starの報道によると、黒人のカナダ人がトロントの人口の9%を占めているにもかかわらず、低所得地域の住民の13%を占め、白人のカナダ人は裕福な地域の住民の圧倒的73%を占めている。

カナダ、過去の25万人の大麻所持処罰者が赦免に

 良いニュースは、トルドー政権がついに大麻所持処罰者への恩赦を導入すると発表したことだ。今年8月、過去に処罰を受けた者はカナダ政府のウェブサイトを通じて申請することによって、無料で過去の大麻所持または大麻の恩赦を受けることが可能になると発表された。

 連邦法務大臣のDavid Lametti氏は、「申請者はもう5年待ち、仮釈放委員会に631ドルを支払う必要がない」、「この法案が大麻法の施行によって不釣り合いな影響を受けてきた黒人や先住民族の少数派コミュニティにとって、重要であることを理解している」と述べた。申請は無料で、申請者は指紋を取り、犯罪記録のコピーを申請し、警察から記録チェックを取得する必要がある。赦免は過去に人種的少数派に被ってきた被害を償うものではないが、改善のためのステップではある。

米国の社会的公平性プログラム

 負の歴史を償うにはカナダは何ができるのか。米国の取り組みから学ぶことは多いだろう。米国は社会的公平性プログラムを通じて、大麻禁止法の影響を最も受けてきたコミュニティが、合法的な業界の平等な競争の場にアクセスできるよう、優先ライセンスと財政支援を行うという進歩的な政策を広めている。

 それは栽培者や売り手を含む、疎外された人々がビジネスに移行するのを助ける取り組みであり、90年代に医療大麻が合法化され嗜好用大麻が去年合法化されたカリフォルニア州オークランドで始まった。

 オークランドは過去に大麻関連の有罪判決を受けた者、あるいは過密地域からの低所得居住者のために、ディスペンサリーおよび栽培ライセンスの半分を彼らのために確保することを決定し、免除費を免除し、資本へのアクセス不足に対処するために、無料の家賃と無利子のローンをも提供している。 

 過去に薬物禁止法がどのように強化されてきたかを考えると、現在急成長を遂げている大麻産業における人種格差は非常に重要な問題だ。

 カナダ社会に蔓延している人種的不平等を合法大麻市場で再現させないことを選択し、公平さと賠償を厳密に追求し、また特権階級における富の継続的な不均衡な蓄積を無視しないことが必要とされるが、進歩的な政策に取り組むことがカナダでも求められるだろう。