マイホームがマトリモニアル・ホームと呼ばれる日 | 私、国際結婚します!! でもちょっとその前に知っておきたいお話【第19回】

「いつかはマイホーム」は、洋の東西を問わず、どんな夫婦にとっても大きな目標でしょう。そして、その夢のために、仕事に打ち込んだり、やりくりに励んだりするに違いありません。

しかし、このマイホームが、マトリモニアル・ホームと呼ばれる日が訪れる可能性は、国際結婚する前にぜひ理解しておきたいですね。

ファミリー・ホーム

マイホームとは、賃貸マンションや借家ではなく、持ち家のことを指す和製英語です。カナダでは、夫婦が購入した家やマンションのことをファミリー・ホーム、または、ファミリー・レジデンスと呼びます。

このファミリー・ホームの購入の際には、結婚前からコツコツ貯めてきた預貯金をすべて注ぎ込むかもしれません。また、頭金の支払いなどで親から経済的援助を受けることもあるでしょう。

しかし、結婚生活におけるメインイベントの一つであるマイホームの購入時に、いったいどれくらいの人が、夫婦の対等の共有財産としてのマトリモニアル・ホームの存在を認識しているでしょう。
マトリモニアル・ホーム

マトリモニアル・ホームとは、法的に婚姻関係にある夫婦が生活する持ち家で、夫婦が、50対50の権利を有する住まいのことを指します。では、マトリモニアル・ホームとは、ファミリー・ホームの別名なのでしょうか。

答えは、YESです。しかし、ファミリー・ホームがマトリモニアル・ホームと呼ばれ、夫婦が対等な権利を持つ資産として扱われ始めるのは、夫婦が別居を決めた時点です。ここで言う権利とは、マトリモニアル・ホームに住み続ける権利、そして資産に対する二分の一の権利です。

この権利は、たとえ一方のみの名義であった場合でも、 頭金を工面し住宅ローンを支払ったのが、夫婦のどちらか一方であった場合でも同じです。例えば、専業主婦であった妻に対して、「これは俺名義の家で、頭金もローンもひとりで払ったのだから、出て行ってくれ」と、強要することはできないのです。あるいは、夫に対して、「私の両親が買ってくれた家なんだから、あなたには一銭も渡さないわ」と言うこともできません。

また、自分名義の預貯金や自分の親からの贈与をマイホーム資金に充てた途端、その資金源にかかわらず、マトリモニアル・ホームは配偶者との共有財産となるのです。

マリッジ・コントラクトと投資オプション

このため、婚姻前、または婚姻期間中にマリッジ・コントラクトを作成し、「親からの援助は、マトリモニアル・ホームの共有資産から差し引くこと」などに同意しておくこともできます。例として、十年前、妻の親が30万ドルを出して、ローン無しで購入したファミリー・ホームが、離婚時には50万ドルに値上がっていた場合を見てみましょう。

【例1】 コントラクトがあった場合、50万ドルから30万ドルを差し引いた半分である10万ドルずつが、夫と妻に分けられます(妻の親からの支援は、夫婦の財産としてカウントされませんので、30万ドルは妻のものです)。

【例2】 コントラクトがなかった場合、妻の親が支払った分も含めマトリモニアル・ホームの権利として、25万ドルが夫婦それぞれに与えられます。

また、遺産など婚姻中に贈与があった場合は、住宅ローンの繰上げ返済などに充てず、個人名義の投資を検討するのも一つの方法でしょう。これに関しては、本誌2017年9月号「国際結婚と経済」でも、関連内容を紹介しましたので、そちらもご参照くださいね。

国際結婚する前に知っておきたい、マイホームがマトリモニアル・ホームと呼ばれる日、「ウチは、ゼッタイ離婚しないから、余計なお世話!」という方も、記憶の片隅に留めておいていただけたらうれしいです。

注意:マリッジ・コントラクトの作成やマトリモニアル・ホームの取り扱いを含む離婚問題は、たいへん複雑です。それぞれのケースは、家族法を専門とする弁護士にご相談ください。

APJW・新企会 合同セミナー

2月17日(土)2〜4pm
要予約/託児(有料)
テーマ:「ファミリーロー・ミディエーション」
問い合わせ:contact@apjw.info
場所: 33 Sheppard Ave. E(無料駐車場有)


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野口洋美 心理学名誉学士(HBA)、コミュニケーション学修士(MA)

オンタリオ州公認パラリーガル、国際離婚経験者のピアサポートグループAPJW(NPO)理事
別居や離婚を経験することになった日本女性の相互支援(ピアサポート)団体(web:apjw.info)の代表として、自立に向けての様々なテーマで勉強会を毎月開催。国際離婚関連の執筆多数。離婚駆け込み寺(日加タイムス)、ひとり親のつぶやき(mamma、日系ボイス)など連載。2014年、国際離婚とハーグ条約をテーマにヨーク大学にて修士論文を発表。法律通訳としても活躍中。