国際結婚とカナダのお産 2 | 私、国際結婚します!! でもちょっとその前に知っておきたいお話【第30回】

 前回、日本とオンタリオ州との出産準備の違いについて紹介しましたね。オンタリオ州には母子手帳のような記録システムがないこと、日本なら定期健診の度に行なわれる超音波検診は、妊娠中期に一度か二度行われるだけであることなどに、驚いた方もいるかもしれません。
 また、オンタリオ州の公的医療保険であるOHIPのおかげで、妊娠中の検診費用は全くかからないことも紹介しました。OHIPは、分娩や入院費も全てカバーします。ではオンタリオ州での分娩や出産後の入院生活は、日本とどのように異なるのでしょう。

日本の出産費用

 はじめに日本の出産費用を紹介しておきましょう。東京広尾の日本赤十字センターの場合、分娩費用と入院費用は、自然分娩で一週間入院した場合約65万円です。これには新生児にかかる費用は含まれません。無痛分娩などには別途費用が必要ですし、早産などのハイリスク分娩ではさらに費用がかさみます。

 これに対してオンタリオ州では帝王切開であろうと無痛分娩であろうとすべてOHIPで賄われます。OHIPは、日本の国民保険と異なり保険料を納める必要はありません。日本よりずっと高い所得税率が公的医療制度を支えているというわけでしょう。

無痛分娩

 日本で無痛分娩を希望した場合、あらかじめ分娩日程を決めておく必要があると聞きました。地域や病院によっても異なるのでしょうが、自然分娩で無痛分娩を希望することは難しい場合が多いようです。計画出産によって麻酔科医の日程を抑え、陣痛促進剤を使用し、分娩に臨む必要があるからです。

 これに対し、オンタリオ州では、あらかじめ希望を伝えておけば、自然な陣痛から始まるお産にも無痛分娩で対応できるようです。麻酔科医が常駐する総合病院で出産することが一般的であるため可能になるのでしょう。

 その他にも笑気ガスなどで痛みを和らげるなど、分娩方法には様々なオプションが用意されているので、担当医としっかり相談したいものですね。

分娩から退院まで

 さて、オンタリオ州でのお産が日本のそれと最も大きく違う部分は、分娩後の入院期間でしょう。

 日本の場合、全く問題のない分娩で母子共に健康である場合でも、少なくとも5日間、たいていは一週間入院します。この間、沐浴や母乳管理の指導を受けたり、帰宅後の注意事項が説明されたりします。母親同士の交流会もあり、新米ママが経産婦の話を聞いたりする機会もあります。

 一方オンタリオ州では、分娩を終えた翌日の退院が一般的です。朝産んで夕方には帰宅するという日帰り出産すら実在します。日本では 退院後もしばらくは養生する期間を持ちますが、北米の「お産は病気じゃない」気質は徹底しています。

 しかし、私自身も経験した日帰り出産は案外楽です。特に上に子供がいる場合などは、出産直後から家族と一緒に居られるので家族みんなの負担が減ります。

 私は、日本で一度、オンタリオ州で二度の出産を経験していますが、カナダでの最初のお産の時に病院に一泊した時、ファーストフードのような病院食に閉口した記憶があります。ですので、末っ子の出産後に「いつ帰ってもいいよ」と言われた時は、「じゃあ今」とためらわずに答えました。

帰宅後の育児

 しかし、初めてお産をする人にとっては、お産の直後から一人で新生児の面倒を見ることは不安でしょう。慣れない授乳や育児と家事の両立はしんどいものです。退院後に看護師が自宅まで様子を見に来てくれる看護訪問の際に、不安や疑問点をしっかり相談してください。

 夫の全面的な協力は当たり前なのですが、夫のやり方が気に入らなくとも、文句を言わず見守る姿勢は必要でしょう。時には、あからさまに夫をおだててみましょう。褒められて嬉しいのは子供だけではありません。

 でも、もし家事の負担を求める状況になった時には、徹底的に手抜きをしましょう。どんなに忙しくても、臨月の不便さを経験した後の自由な身体があれば、乗り切れるはずです。

 妊娠、出産を通じて国際結婚の力関係は大きく変化します。夫と妻が父親と母親に変わるとき、もし二人の間に未解決の問題があったとしたら、その国際結婚は多難なものになるかもしれません。妊娠から出産に至るまでの期間にしっかり「家族」になっておきましょう。家族とは、子供の誕生によってできるものではなく、夫と妻の間の信頼によって培われるものだと思います。

参考: http://www.med.jrc.or.jp/visit/tabid/325/Default.aspx


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野口洋美 心理学名誉学士(HBA)、コミュニケーション学修士(MA)

オンタリオ州公認パラリーガル、国際離婚経験者のピアサポートグループAPJW(NPO)理事
別居や離婚を経験することになった日本女性の相互支援(ピアサポート)団体(web:apjw.info)の代表として、自立に向けての様々なテーマで勉強会を毎月開催。国際離婚関連の執筆多数。離婚駆け込み寺(日加タイムス)、ひとり親のつぶやき(mamma、日系ボイス)など連載。2014年、国際離婚とハーグ条約をテーマにヨーク大学にて修士論文を発表。法律通訳としても活躍中。