トロント対談 中西麻耶さん x Hiroさん

▲HIROさん(左)と中西さん(右)

▲HIROさん(左)と中西さん(右)


今年開催されるリオデジャネイロ・パラリンピックに向けて、選考会真っ只中の中西麻耶さん。陸上競技以外にも、スポーツを日本に文化として定着させたい、地域をもっと盛り上げたい、との思いから、社会や地域との繋がりを大切にした様々な活動を精力的に行っている。今回は、中西麻耶さんを動かす「思い」について、Hiroさんとの対談インタビューで語ってもらった。

お二人の出会いについて教えてください。

Hiro:初めてお会いしたのは2010年頃だったかと思います。トロントで大会が開催されていて、その大会に参加するために麻耶ちゃんがトロントに滞在されていた時ですね。僕が昔から仲良くしている方の飲食店に麻耶ちゃんが偶然来られて、お話をしたことがきっかけです。
中西:当時はアメリカを拠点にしていました。全く英語ができないのに海外へ出て行って、日本語を喋りたい時にも日本人との出会いが無い状態で。そして大会で訪れたトロントで偶然Hiro君に出会ったので「ここで日本人に出会うのか!」と驚きましたね。
Hiro:世代も似ていますしね。お話しした際、世界各地に飛んで、賞金レースに参加していると伺って、驚きました。マネージャーもいない状態でご自身で管理していること、そして賞金をつかめなかった場合にその際の遠征費や滞在費も全て自己負担になることを考えると、この人すごい生活を送ってるんだな、と衝撃を受けました。確か、オリンピックとパラリンピックは所管している省庁が別なんですよね?予算にも違いが出てくるとか…。
中西:そうですね。日本は、オリンピックは文部科学省が所管していますが、パラリンピックは厚生労働省の所管です。予算の面でも、全く違う状況があります。また、日本ではまだまだドネーション文化も、スポーツ自体も文化として根付いていないと感じているので、スポーツに対する価値観やパラリンピックの知名度を上げていくために、私自身社会貢献活動も行っています。

▲有名ライター金子達仁さんが、中西さんへの 密着取材から引き出した壮絶、感動、そして 衝撃エンディング「ラストワン」は好評発売中

▲有名ライター金子達仁さんが、中西さんへの密着取材から引き出した壮絶、感動、そして衝撃エンディング「ラストワン」は好評発売中

社会貢献活動により積極的になられたきっかけを教えてください。

中西:ロンドンパラリンピックの後に、事実上1度引退をしているんです。その時に、大半の人が「中西麻耶」という存在も、パラリンピックも知らない、という状況を目の当たりにしたんですね。2009年に事故にあってから、ロンドンまで怒涛の日々を送ってきたのに「私一体何していたんだろう」と思って。何か形を残しながら、スポーツを続けなきゃいけなかったな、という反省から、より積極的になりました。スペシャルオリンピックス(知的障害のある人たちのスポーツ競技大会を開催したり、スポーツトレーニングを行う団体)へのドネーション企画でボーリング大会を開催したり、学校での講演会や企業でのモチベーショアップ講座なども行っています。また、私は陸上競技を始めた当初から、大会の会場に一人でも多くの「もともと私の身内でない人」を連れてくることを目標としています。最初は本当に、会場に応援しに来てくれているのが身内しかいない状態でしたから。最近は、「身内ではない」人たちが少しずつ増えています。それは様々な活動を通して自分が作った財産だな、と思っています。
Hiro:素晴らしいですね。麻耶ちゃんをきっかけに初めてパラリンピックを見に来る人もいるわけですし、実際に競技を見て心を動かされる人が増えてくれば、結果的に麻耶ちゃんが引退した後でも、競技やパラリンピック自体の知名度は残っていきますし、予算面などでも麻耶ちゃんが経験してきた苦労を、少しでも減らしていくことができるかもしれないですね。

ロンドンパラリンピックを終えて、拠点を大分県に移されましたが、どのような思いがあったのですか?

中西:地域から世界に羽ばたいていきたいからです。地方には、「トップクラスのアスリートは東京や大阪が支える」と思ってしまう傾向があるんです。予算が少ないこともあって、結局選手自身も大都市に吸い込まれていってしまう。すると、それを見る子ども達も、東京や大阪に進出すればチャンスが掴める、と思ってしまうんですね。だから、私が地域で包み隠さず「中西麻耶」の姿を見せることで、関わる人に様々なことを感じてもらって、その傾向を振り払いたいんです。私も最初は「立ちたい」という目標から始まりました。そこから、一歩歩きたい、1分間歩きたい、そんな小さなステップを経て、現在の「世界記録達成」という夢に繋がっています。最初は大きな夢じゃなくて良い、それでも夢を持ち続けていって欲しい、という思いを感じ取って欲しいです。
Hiro:全員の心持ちを変えることは難しくても、一人でも二人でも多くの人を変えることができたら素晴らしいですよね。

最後に、様々な夢を持ってトロントに来た人や、目標に向かって走り続ける人たちにメッセージをお願いします。

中西:失敗するなら、格好良く失敗する、というのが私の原動力になっています。中途半端な失敗ほどダサくて、生かせない失敗はありません。中途半端、というのは言い訳やごまかしが利いてしまう失敗です。でも格好良いほどの大失敗をしたら、その失敗と向き合わざるをえなくなります。そこで初めて、いい方向に変えていけると思うんです。たくさん経験して、失敗するならとことん失敗してみよう、それくらいに自分を試すことをして欲しいと思います。


Hiroさん
名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。若い頃から憧れた、NYの有名サロンやVidal Sassoonからの誘いを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ 就職。1年目から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再び、トロントのTONI&GUYへ復帰。クリエイティブディレクターとして活躍し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今現在も、サロンワークを中心に著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。
salon bespoke
Tel: 647-346-8468
130 Cumberland St. 2nd floor
salonbespoke.ca


中西麻耶さん
2006年、右膝から下を切断する事故を機に、障害者陸上を始め、100・200mで日本記録を樹立。2008年北京パラリンピックに出場、日本人女子初の入賞。2012年ロンドンパラリンピック出場。現在、2016年リオデジャネイロパラリンピックでの金メダルを目指すとともに、走幅跳びでの世界記録を狙う。今年2度目のアジア記録を更新し、アジア新記録更新、今季世界最高記録を保持(5/2現在)。