カナダが牽引する「医療大麻2.0時代」の到来|特集「カナダ・マリファナ合法化」


 現在、不安神経症から慢性痛、多発性硬化症や小児てんかんに至るまでマリファナに含まれる化学物質カンナビノイドが医療の現場でも注目されている。特に注目されているのが、THC(テトラヒドロカンナビノール)とCBD(カンナビジオール)という成分で、数多くの医療的効果があることが明らかになってきている。

薬理学的働きと未来の可能性

現在、医療大麻が合法である国・都市

 医療大麻が合法化されているのは、アメリカの31州とワシントンDC(本年9月現在)、オランダ、オーストラリア(州ごとに法律は異なる)、スペイン、ドイツ、フランス、イスラエル、ジャマイカ、ブラジル、ウルグアイ、イタリア、アルゼンチン、チリ、デンマーク、ギリシャ、フィンランド、メキシコ、ペルー。

THCの効能

 THCは、痛みや炎症の軽減、筋肉の弛緩、運動障害の改善、食欲増進など数多くの病気の治療面に効果がある一方、多幸感や嗜眠など精神的作用もある。

 また、気管支拡張物質や筋弛緩物質、強力な神経保護物質、抗酸化物質として抗けいれん薬やてんかん、舞踏病の症状を緩和したり、外傷性神経損傷または多発性硬化症の患者の神経障害性の痛みを軽減したり、軽度から中度のぜんそくを患う患者に対する治療などに活用されている。

 病気が原因の衰弱に対抗するのに大きな働きをしたり、解熱・鎮痛・抗炎症薬であるアスピリンの20倍の抗炎症作用があるので、嘔吐や吐き気を抑える働きもあるとされ、特にガン患者やエイズ患者の治療や緩和ケアなどでも注目されている。さらに、現在までの研究からTHCががん細胞や腫瘍増殖を減少させたりすることが明らかにもなっている。 

CBDの効能

 CBDは、痙攣、不安神経症、炎症、嘔吐などの緩和効果があるとされ、最近の研究からTHCと相乗効果もあることが考えられている。てんかんの発作やガンの緩和ケアのほか、不安などを抑える精神的作用もあるため、うつ病などの治療にも適用できると考えられている。

 さらに心拍数の増加や鎮静作用、空腹感、意識変容に対しても拮抗することができるとされている。

特定のがん細胞を殺すことができる!?

 近年行われている動物実験から、大麻の抽出物が特定のがん細胞を殺すことができると分かっている。ネズミやリス、ビーバーなどを使用した研究において、大麻の葉を浄化して摘出したものは、深刻な脳腫瘍に関わるがん細胞の進行を遅らせるという結果が出た。また、ネズミを使った別のリサーチでは、THCとCBDを抽出して使用した場合、放射線によって引き起こされるがん細胞を殺すことができることが示された。

認知症(特にアルツハイマー)への効果にも期待が高まる


 昨今、医療大麻が認知症、とりわけアルツハイマーの防止または治療に役立つと言われている。アルツハイマーの兆候があるネズミにTHCとCBDの結合体を与えると、そのネズミの学習能力が上がり、体内のアミロイドの数が減ったという研究が発表された。

 しかしながら、アルツハイマー予備軍の人間に効果があることはまだ証明されておらず、大麻の使用は、記憶や思考力に悪影響を及ぼすという研究結果もあるので、今後の研究を注目したい。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療にも効果を発揮


 2016年にはカナダの医療大麻を扱う会社が、兵士のPTSD治療のために医療大麻を発売。これは、アフガニスタンに出兵経験があるファビアン・ヘンリー氏が、PTSDを治療するために医療大麻を使用していた経緯から、その効果が主張され商品開発された。

 精神医学本の「Molecular Psychiatry」の研究発表によると、大麻の葉には、PTSDによって引き起こされる悪夢を和らげる効果が期待できる成分が含まれているとのことだ。また、アメリカの化学サイト「Science Daily」は、PTSD予備軍の患者を集めて実験を行い、その結果医療大麻を使用することによって、参加者はトラウマの再現回数を減らすことができ、過覚醒の回数が減ったと示した。

エイズや難病に対する緩和ケアへの活用

 FDA(The U.S. Food and Drug Administration)で認可されているドロナビノールとナビロンという2つの薬品は、THCを含んでいる。これらの薬は、化学療法によって引き起こされる吐き気を緩和したり、AIDSが原因で急激に体重が減ってしまった患者の食欲を増加したりする効果があるとされる。

 また、いくつかの研究では、治療が困難なてんかん発作を持つ子供に医療大麻を服用させることによって、その発作を和らげることができるという事例も出てきている。今後も研究を進めていくことで、医薬品のさらなる開発に期待が寄せられている。