トロント国際映画祭観客賞受賞作 『グリーンブック』|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第6回】

 早いもので、もう来月にはトロント国際映画祭(TIFF)が開幕します。そこで今回は、昨年のTIFFの観客賞を振り返っておきます。
 昨年の受賞作は、ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ主演、ピーター・ファレリー監督の『グリーンブック』。アカデミー賞でも作品賞を含む3部門に輝きました。昨年、TIFFの観客賞受賞を皮切りに賞レースを席巻する様子を見るにつけ、私はこの映画が持つ力を感じずにはいられませんでした。

『グリーンブック』のポスター(公式HPより)


 TIFFでの『グリーンブック』の上映が発表されたのは昨年の8月中旬で、映画祭開幕の約3週間前。7月下旬から上映作品が続々と発表される中、最後の方で追加発表されたうちの1本でした。このためか『グリーンブック』は、スター俳優がレッドカーペットにやってきてプレミア上映が行われるGALA部門での上映作品ながら、さほど話題になっていませんでした。

 『グリーンブック』を見る前の私の印象は、「ピーター兄貴が単独で監督したヒューマンドラマ?ファレリー兄弟監督のお下劣コメディ映画じゃないの?」といったところ。これまでピーター・ファレリー監督といえば、弟のボビー・ファレリー監督と共同で監督した『メリーに首ったけ』や『ふたりの男とひとりの女』などのコメディ映画が有名でした。だから今作は、兄弟での監督でないところも、実話をもとにした真面目なドラマらしき物語も、とにかく異例でした。

『グリーンブック』のチケット半券。ワールドプレミア翌日の上映回と観客賞受賞後の無料上映とで2回観賞。

 『グリーンブック』では、この異例づくしがすべて吉と出ていました。コメディ出身監督ならではの間合いで、全編にわたり笑いに満ちた感動の実話。私が観賞したのはワールドプレミア翌日で、一般客が多数の午前の上映回です。それにもかかわらず上映後の拍手はひときわ大きく、観客は総立ち。監督や俳優が舞台挨拶に登場しても、拍手は長らく鳴りやみませんでした。

 こんなふうに、注目度の低かった素晴らしい映画が観客の絶賛で脚光を浴び、世界に羽ばたく瞬間にも立ち会えるのも、TIFFの醍醐味です。

みえ

 大阪在住の映画好き。好きな監督の日本未公開作見たさに日本語字幕なしの輸入DVDを見始めたのが約20年前。さらに、未公開の最新作見たさに約10年前からトロント国際映画祭に行くようになり、映画三昧の今に至る。