第6回トロント日本映画祭 監督賞受賞『忍びの国』中村 義洋監督 インタビュー [トロントを訪れた著名人]

唯一無二の創造力で世界中が愛する映画を作り出す

大野智さん、石原さとみさん出演『忍びの国』の北米プレミアに合わせ、中村義洋監督が昨年6月に開催されたトロント日本映画祭に登壇した。今や日本だけではなく、世界で活躍される中村監督の映画製作のこだわりや想いについて熱く語ってもらった。

海外の人たちに一味違う忍者の一面を

北米プレミアとしてオファーが来た時の感想を教えてください。

トロント日本映画祭は2回目となりますが、とても心待ちにしておりました。海外の映画祭はトロントのほか、イタリア、香港、台湾などに行ったおり、観客の皆さんが前のめりで映画を鑑賞してくれる姿勢が印象的です。海外の方は反応が正直で、海外の映画祭を見据えて構想や製作を意識しています。海外では忍者人気は未だ健在で、一味違う忍者の一面を見せたいという気持ちがあり、今回も楽しみにしていました。

映画構想・製作8年という執念の作品と伺いました。

原作を一度読んで、始めの2年は誰が主役をできるか頭に浮かばなかったのです。しかし、映画『怪物くん』を撮影してから、大野さんに照らし合わせて原作を読み直したら主役の無門と大野さんが合致し、オファーをしました。

あとは合戦をリアルに表現するため、コスト面のやりくりやスケジュールのタイミングを待っていたら時間がかかってしまいました。

原作が持つ、現代にも繋がるメッセージに惹かれた

原作を読んだ際の印象を教えてください。

すぐに映画にしたいと思い、読んだ後すぐに出版社へ電話しましたね。昔から忍者が好きということもあるのですが、何よりも現代にも繋がるメッセージに惹かれました。

劇中最後に出てくる「虎狼の族」は銭が一番で、人を人とも思わぬ忍者で、彼らは「天正伊賀の乱」で滅ぼされるのですが、実は滅んでおらず、子孫らが散らばったのではないか…、そして一見、忍者というのは卑劣だなと思いますが、実は現代の自分たちに繋がっているのでは…、と感じました。

人間は、あるモノとお金を秤にかけられたら、お金の方を選ぶという時もあります。しかし、それが人間の真意であり、現代社会の表れだと思います。

映画は、笑い・人間愛・アクションなど多様なシーンがありますが、特にこだわったシーンはありますか?

原作の作家である和田竜さんに初めて出会った時に、「中村さんはアクション映画を撮るイメージがない」と言われ、それを覆したいと思いました。その言葉に感化されてアクション映画を数え切れないほど研究し、自分なりに精査し、その集大成としてこの映画を撮りました。

特に、リアリティを追求したアクション・ムーブメントが見所ですね。最後の合戦シーンでは術を真正面から捉えるのでは無く、術の理屈を説明してしまうような忍者目線のシーンにこだわりました。

携わった映画を世界で一番好きになる

世界中で活躍されている中村監督ですが、映画製作の意欲はどこから湧いているのでしょうか?

映画製作はかなりの年数を要しますが、それを覚悟してこだわり抜けるモチベーションが一番重要だと思います。『忍びの国』はそこまでこだわってやりたいと、確信の持てる一本でした。

原作を元に映画化することが多いですが、ただ映画化したら面白いとかでは無く、作家さんが伝えたいメッセージに心底共感し、それを超えて携わった映画を世界で一番好きになることが製作意欲の表れだと思っています。

トロントの読者の皆さんにメッセージをお願いします。

個人的にはトロントが好きで移住したいくらいです(笑)。目的は人によって違うと思いますが、トロントを生活のベースに選ばれたこと羨ましく思います。2、3年後こちらに訪問するか思います。再びお目にかかれることを楽しみにしています。


中村義洋監督

成城大学文芸学部芸術学科卒業。大学在学中の自主制作映画『五月雨厨房』が1993年の「ぴあフィルムフェスティバル」で準グランプリを受賞。その後、崔洋一監督、平山秀幸監督、伊丹十三監督らの助監督時代、脚本家時代を経て、『ローカルニュース』(1999)で監督デビュー。

監督以外にも脚本家やナレーターの顔を持ち、マルチな才能を発揮している。