明治維新150周年を機に考える日本の国際社会における立場の歴史とこれから

講演に集中する聴衆


3月8日、トロント大学マンク国際問題研究所日本研究センターと在トロント日本領事館が主催する明治維新150周年を記念するシンポジウムがトロント大学のマンク国際問題研究所にて開催された。明治維新150周年と同時に日加修好90周年となる2018年。今回の会議では日本史のターニングポイントとなる明治維新からの政治と経済の進歩、そして日本の国際社会における役割についての講演が行われた。

今回の講演にあたって日本政府からは明治日本の産業革命遺産の世界遺産登録を目指す加藤康子内閣官房参与、獨協大学より岡垣知子教授、そして慶應義塾大学より細谷雄一教授がゲストスピーカーとして招かれた。カナダからはトロント大学日本研究センター客員主任教授のデイビッド・ウェルチ教授らがコメンテーターとして参加し、意見を交わした。

講演はマンク国際問題研究所暫定所長のランダル・ハンセン教授の挨拶に始まり、続いて伊藤恭子総領事が今回のトピックの重要性について言及し、日本の進歩と国際社会への仲間入りについてより詳しく理解する貴重な機会であるとした。また、日加修好90周年という節目に、両国の関係をこれからもさらに深めていきたいと述べた。

挨拶をされる伊藤総領事

西洋の技術を学び飛躍的進化を遂げた日本産業

最初のスピーカーとして登場したのは加藤康子内閣官房参与。日本の開国と明治維新に伴い、19世紀半ばから20世紀初頭まで続いた日本の産業革命について言及した。中でも国内の造船、製鉄、製鋼と石炭産業は劇的な進歩を遂げたという。しかし開国前、西洋の技術を教科書通り取り入れた日本の製造業は失敗続きだったと加藤氏は述べた。やがて開国後、試行錯誤を重ね、西洋の技術を徐々に学び応用した日本の産業はめまぐるしい発展を遂げ、結果、日本は西洋から産業化された国として認められたと語った。

日本の国際社会入りには産業発展が重要だったと語る加藤参与

無血革命「明治維新」で日本は文明化

二番目に登壇した獨協大学の岡垣知子教授は明治維新における日本社会の変化と日本が国際社会への仲間入りを果たした経緯について語った。明治維新は英語で「明治レストレーション」と訳されている。しかし、明治維新がもたらした結果を見てみると「レボリューション(革命)」と似たものがあると指摘した。

そこで岡垣教授が注目したのはこの革命がいかに平和的だったかということだ。世界史の例を見てみると戦の末に勝ち取った革命が多く見られるが、一方の明治維新は無血革命とも言える。また、明治時代は政治、経済、軍隊、社会の全てにおいて変化が見られた時代であるとも述べた。特に政治において日本の権力者は国際法を学び自国の国際関係に応用した。その結果、日本は他国から文明化された国と認められ、国際社会への仲間入りを果たしたと結んだ。

日本の「富国強兵」時代から世界が学ぶことは多い

最後に登壇した慶應義塾大学の細谷雄一教授は明治維新から現代にかけての日本のアイデンティティの変化について言及した。日本の歴史の流れは稀であり、他国も過去150年の道のりから学べることがあると述べた。

細谷教授は日本のアイデンティティの歴史を二つに分けた。元号が明治になった1868年から1945年までの「富国強兵」としての時代、そして1945年から今までの「平和国家」としての時代だ。明治維新の時より日本は国を守るために経済的豊かさの「富国」、そして強力な軍隊「強兵」の二つを軸にした。しかし第二次世界大戦後、「強兵」の部分を失った。それでも日本は「平和国家」として今までにない安全と独立を手に入れた。この経験は強い軍隊が無くとも国の安全を守ることができるということを証明したと語った。

しかし、ここ20年で日本の経済力は米国、中国、欧州に追い抜かれ、「富国」としてのアイデンティティも失いつつあるとも述べた。これから日本は新たなアイデンティティを探さねばならない。その中で、安倍首相の「積極的平和主義」の例を用いて、戦争を経験した先進国として日本はこれから国際社会の平和に貢献しなければならないと指摘した。

会場は幅広い年齢層の聴衆で埋め尽くされており、この日の議題への関心が伺えた。

各プレゼンテーションの後に設けられた質疑応答の時間では聴衆から寄せられた質問に対してゲストスピーカーやコメンテーターが真剣に答えていた。伊藤総領事が述べた通り、日本の歴史についてより理解を深められた機会となったのではないか。

今後もこのような講演を通して日本の歴史と国際社会における役割について議論する場が増えることを願う。