【公開対談】第2回 次世代のリーダーシップ: 失敗から学ぶ|特集「憧れ・出会い・交流 ニッカナインティー」

カナダと日本をつなげるヤング・プロフェッショナル・コミュニティ「MUSUBU」に注目!

左から若狭輝行氏、伊藤義員氏

7月26日、「MUSUBU」がトロント日本商工会専務理事の伊東義員氏とジャパンフェスティバルの仕掛け人であるJapan Expo Canada Inc社長の若狹輝行氏を招いて、「次世代のリーダーシップ:失敗から学ぶ」をテーマに30名の参加者を前に公開対談(モデレーター:TORJA編集長 塩原)が行われ、カナダのビジネスシーンをよく知る二人から、リーダーとして意識すべきことや日本とカナダの仕事のあり方の違いなどが語られた。

ートロントの日系企業の中ではよく知られたお二人ですが、あらためてプロフィールからご紹介ください。

伊東氏: 大学を卒業後、日本のオーディオメーカーであるパイオニアに入社し、12年間日本で働いていました。1992年に渡加し、7年間カナダでの駐在を続けましたがカナダに残ることを決め退職、その後は物流会社に転職し、2007年から現在に至るまでは商工会で活動しております。

若狹氏: 高校を卒業後、単身でオーストラリアへ渡り大学で学び、その後カナダへ移りビジネスと経済を学びました。社会人としての出発は航空会社で、客室乗務員としての職務に就きました。その後独立し、カナダのビジネスの拠点であるトロントに魅力を感じ、バンクーバーからトロントに移り、コンサルタント業をしながら2016年からミシサガ市でジャパンフェスティバルを主催させていただいています。1回目は4万人もの方々に来ていただき、カナダにおける日本の需要を確信するきっかけとなり、それ以降毎年開催させていただいています。

〝リーダーとして「能力を見極め、仕事を振り分ける」。「理解力、伝達力、そして責任」〟

参加者の皆さん

ーまずは今回のテーマに沿って、お二人の失敗談とそこから学んだことについてお話しください。

伊東氏: 最初に失敗を経験したのは28歳の頃でした。その当時、財務グループの係長に任命されたのですが、それまでリーダーシップの研修を全く受けたことがなかったため、右も左も分からない状態でした。はじめはとにかく自分から積極的に行動し、次に、社員一人一人の特性を知ることに徹しました。仕事は分担しますが、彼らができない分は私がカバーできるように各仕事内容を全て把握するようにしていました。

 リーダーシップをとるには、各人の能力を自分なりに見極め、その人に合った仕事を振り分けることが大事だと私は思います。その上で、穴が空いたら必ず自分が補填できるような体制をとり、自分は常に一歩引いた状態にいる。そうすることで、部下から上司に質問をできる環境が作れます。このような形でグループ全体を回すようにしていました。

若狹氏: 私の場合、自分の裁量を試してみたかったことが独立のきっかけでした。航空会社に勤めていた経緯から、航空関係のコンサルタントとしての事業を始めました。当時は日本で新規航空会社の参入が始まった頃で、その様な航空会社をクライアントに仕事をしていました。会社の新規立ち上げへのコンサルティング業務とのことで、前職での経験を活かし、客室乗務員のマニュアル作成とトレーニング教官、また航空機の調達等、多岐にわたる業務を担当しました。仕事をご一緒させていただく方々は年上で経験豊富な方が多い中、外資系に勤めていた上に、、年齢的にも若く日本の航空会社との業務自体が初めてだったので、全てが試行錯誤でした。経験不足を理由に意見を聞き入れてもらえないこともありましたが、自分の地位を考慮して、対話を重視し日々の業務に取り組みました。

 リーダーシップとして行うべきは、自分にないものを受け入れる理解力、相手に自分の思っていることを伝える伝達力、そして自分の発する言葉へ責任を持つということだと思います。何事も自分一人ではできないという思いと、任されたからには最後には責任を取るという思いがチームワークにもに影響を与え、良い結果へつながると考えているので、その信条を持ち取り組んでいました。

ーカナダ人と日本人に対してリーダーシップの取り方に違いなどがあれば教えてください。

若狹氏: 独立してから頭を抱えた問題の一つがこれでした。日本の場合、思いやりや先輩を敬う心が教育によって根付いていると思います。一方、カナダでは個性を尊重するので、たとえ上司に対してであっても自分の意見をはっきりと言うことが普通にあります。
 フェスティバルでは多くのボランティアを募集するのですが、様々なバックグラウンドを持った人が集まります。カナダではプライベートな話も普通にするので、そういった普段の会話などからお互いを理解しようとすることが、良いリーダーシップを取ることに繋がるのではないかと考えています。

伊東氏: 私は日本で10年以上勤務していたので、いまだに日本人には日本のやり方で接してしまうことが多いです。カナダでは必要以上の仕事は与えませんが、日本人に対してだけは、つい多くの仕事を任せてしまいます。それに気付いてからは、一人に対して一つの案件を任せるのではなく、周りに意見を求めて、タネを蒔くことで、彼らの成長を見るという風にやり方を変えていきました。
 それがうまくいけばその人の功績であり、失敗すれば認めた私の責任、というように考えています。相手を理解し、その能力に合った仕事を任せることが重要なポイントになると思います。

〝これからの若い世代が持つべきは、「ネットワーク」と「プロフェッショナル」〟

ー将来良いリーダーシップを取れるために、20代30代の世代がいますべき行動や考え方は何だと思いますか?

若狹氏: やはり幅広いネットワーク形成が大事だと思います。また、しっかりとした意見や考えを持つために時事問題や国際情勢にも興味を持ち、見識を広める、深めることが大事だと考えます。情報量の多さ、そしてネットワークの広さは多くの場面で役立つと思います。

伊東氏: リーダーシップの観点で言うと、部下から慕われ培った専門性を広げられる人であって欲しいと思います。多くの人と接し、様々な知識を得ることは、チームをまとめることにも役に立ちますし、コミュニケーションの向上にも繋がります。広く深くという言葉はリーダーシップをとる前提として重要なポイントになるのではないかと思います。

ー若狹さんは伊東さんを大変頼りにしているとよく伺います。お互いをどのような存在に感じられているか教えてください。

伊東氏: 数年前にトロントのダンダススクエアで、日本の祭りフェスが行われたこともあったのですが、それがなくなり残念に思っていた時に若狹さんからミシサガ市でジャパンフェスティバルを開催する話を聞きました。彼が自分自身で営業活動を一社一社行っている姿をみて、その熱意と丁寧な人柄の良さを感じました。そのような姿勢が各企業から支援をもらっている理由なのではないかと思いますね。そんな熱心な若狹さんの姿を見て、私自身も商工会からもできるだけ支援できたらと思っています。

若狹氏: 日本を飛び出してきた身として、若い頃は日系社会と関わりを持つことに対して距離を置いていました。しかしトロントでは、日系企業や日系コミュニティの強いつながりや熱量を感じ、やはり日本人である以上、海外に住む日本人として、カナダと日本の架け橋となれたらという思いでイベントに取り組ませていただくことになりました。
 最初は右も左も分からない状態でしたので、商工会に行き、そこで伊東さんとお話しました。伊東さんは、幅広いネットワークと情報量をお持ちで、ビジネスを運営する上で、的確なアドバイスやアプローチの仕方をサポートしてくださいました。伊東さんにはたくさん助けていただいた上に、他の企業との繋がりも持たせていただくことができ、非常に感謝しております。

公開対談の様子

〝辞める者を引き止めるのではなく、どう見送り穴埋めするかが大事〟

ーありがとうございます。来場者の方からの質問を受けたいと思います。

質問: カナダと日本の違いとして、一社にどれだけ勤めるかということには差がありますが、お二人の考えを聞かせてください。

伊東氏: 日系企業の場合、長く勤め上げた方が社長になっていくケースが多いです。終身雇用制度は、日系企業の風土というものがあるのではないかと私は思います。

若狹氏: 何かに特化し、優れた知識と経験を持つことはとても大事だと思います。ですが、それが重荷のようになり、組織の中で自分自身を見失ってしまうと負の連鎖が起こり、生産性もなくなると思います。また、組織にとってもマイナスになると思います。だからといって自身にとって良い環境ばかりを求めることも、逆に大事な機会を逸することにつながりかねないと思います。一つの企業にいるかいないかは、自分自身の決定になると思いますが、計画性もないまま行動をとるのではなく、先を考えて行動することが重要になってくるのではないかと思います。

質問: ノウハウや技術を教え育ててきた人材の離職をどのように受け止めれば良いと思いますか。

伊東氏: 私も前職を辞める際は、上司と何度か話をした上で退職に至りました。しかし一度辞めると決めた人であれば、後から何を言ったとしても辞めることをやめますとはなかなか言わないですよね。なので、辞めていく人をどう見送り、その穴をどう埋めていくのかがポイントだと思います。無理に引き止めても逆効果なのではないかなと私は思っています。

若狹氏: 私も辞めると決めた時に上司から引き止められましたが、自分の中では一度決心がついているので、翻意したとしても貢献できない、逆に迷惑をかけることになると感じました。その様な経験から、一度決意を固めた方を翻意させてもプラスにはなりにくいと思うので、その後をどうするか、また、今後起こらないようにするにはどうしたら良いかという点を考えることが重要だと思います。

 参加者からは、「私たちがこれから身につけていくべきリーダーシップ性、実際の失敗談から学べるものが多くあり、ぜひ私もこれからの社会人生活を送る上でプラスに活かしていきたいと強く感じました。次世代というものがすでに私たちの世代のことを示していることを認識し、今後の日本を担っていくという責任感を持ってこれからの時間を大切に送っていきたいと思いました。今回は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。」と好評の声で対談は終わった。その後会場ではサッポロビールとお食事が用意され、グレッグさんのギター演奏を聴きながらMUSUBUのメンバーや伊東さんや若狹さんとネットワーキングと歓談に盛り上がった。