隠れた被災者 | 東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い【第52回】

「強制的に休ませる法律でも作らない限り、みんな倒れてもおかしくない」これは、被災地で起こっている消防士や警察官、そして駆けつけてくれる自衛官のような、震災支援者の疲労度を表現する言葉です。震災直後から、被災地の公務員、特に警察官、市・町・村の職員、消防官、消防団の皆さん、そして自衛隊の皆さん、たくさんの支援者が被災地で活躍しました。

当然、それを管轄する知事、市・町・村長、全ての公務に携わる人々が、自分の家族や自分の家などよりも優先して被災者を救うことを行ってきました。陸前高田市の戸羽市長は、ご自身の奥様とまったく連絡が取れず、小さな子供たちも二人いるのに、甚大な被害を受けた陸前高田市のために、家族よりも公務を優先しなければならず、初動の陣頭指揮を執りました。

奥様は遺体で発見され、奥様と面会できたのもかなり時間がたってからだと聞きました…。首長も公務員の皆さんもみんな地元では「被災者」です。しかし、公務が被災者であることを許さず、自分の家族よりも公務を優先しなければなりませんでした。

震災が起こってすぐの時はもちろん、震災から年数を重ねていっても、この公務員の皆さんや、支援に入ってくる支援者の方々の疲弊は、あまり表には出されませんが、地元ではみんな心配しております。

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こういった方々を「隠れた被災者」と私たちは呼んでいます。消防士や警察官、自衛官などは震災初動ではどれだけ多くの遺体と向き合ってきたか。その状況の中、平常でいろ、というほうが無理な話で、相当のストレスを抱え込みました。しかし、彼らは公務という高い志を持って、乗り越えてきましたが、中には乗り越えられず、心を病み、倒れていった人々も多くいます。それは自ら命を絶つ最悪の形であらわれます。国や県もこの問題には真剣に取り組み、各自治体でストレスチェックや個別面談など対策には力を入れています。

しかし、復興が進み始めた今でも、被災地のマンパワーは足りず、今年の応援職員の充足率は92.4%です。さらにストレスをチェックする精神保健の専門家の不足も指摘され、震災から時間が経過すればするほど忘れられていく悪循環となっています。

志の高い支援者を守れなければ、結果的に被災者を守ることが出来なくなります。フォーカスは被災者には向きますが、支援者は影の存在。支援者はやって当たり前。支援者の心の病に注目はされません。支援者がしっかりとねぎらわれ、きちんと休める環境をつくることこそが震災から時間の経過した今必要な事です。そのためには、今の支援者の数では足りません。数が足りないと、今の支援者に大きな負担がかかり、休むことが出来ません。

震災から5年。もう5年、されど5年。全国では台風の被害や天変地異などで東北とは別の被災地もどんどん出ています。日本全国で支援体制について、しっかりと考える機会が今なのではないでしょうか。


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本文:南部美人 五代目蔵元
東京農業大学客員教授

久慈 浩介