『Halloween: From Pagan Ritual to Party Night』著者、 ヨーク大学教授Nicholas Rogers氏に聞く、 ハロウィンの成り立ち、カナダや日本、世界各国のハロウィンについて。

nicholas-rogers-01 知っているようで知らない、ハロウィンの成り立ちをTORJA編集部が徹底調査!ヨーク大学Nicholas Rogers教授の研究をもとにその文化的背景や、ここカナダでのハロウィンの成り立ち、そして日本を含めた世界各国でのハロウィンついて語って頂きました。


ハロウィンの起源についての諸説

今のハロウィンの起源については諸説あり、実はとても複雑です。よく言われているのはSAMHUINというケルト文化のお祭りから始まったという説です。ケルトカレンダーでは1年間が夏と冬の2つの季節に分けられています。そして10月末が1年の終わりで、冬が新年の始まりとなります。戦士たちは村に戻り、村では収穫した作物を集め、冬を乗り越えるための儀式があったといわれます。詳しいことは分かっていませんが、何らかの形で生贄を必要としていたと思われます。ただし、その由来の証明はローマのみから来ていることから、まだまだ議論の余地はあると思います。 他にもハロウィンの起源は紀元前からあるものだと言う人も多くいます。この「ハロウィン」の語源は「Eve of All Hallows」というキリスト教のお祭りを指しているという説です。10月末、11月頭にあるこのお祭りはキリスト教にとってとても重要なものとされ、特に10世紀頃から亡くなった先祖を慈しみ、彼らの生前の活躍をお祝いする日として、重要性を増してきました。また、当時の人たちは故人自身の行いよりも、その亡くなった人の為に祈ることで、その人たちが天国に行けると信じていました。貧しい人々は裕福な人の家をまわり、お祈りを捧げる代わりに食べ物をもらっていたという説は、とてもTrick or Treatに似ています。  このようにハロウィンの起源は諸説あり、キリスト教なのか、少数派の異教徒からなのか、はたまたそれらの文化が混ざったものなのかは、今でも議論されているのです。

カナダのハロウィンについて

北アメリカのハロウィンはスコットランドやアイルランドから始まったものが、移民と一緒に入ってきました。19世紀には他の移民はまだ北アメリカに入ってきていなく、主だったアイリッシュ移民の人々がハロウィンを祝っていました。そのころぐらいからキリスト教というよりは超常現象が起こり得る日という認識に変わっていき、死者は先祖としての位置づけではなく、ヴァンパイアや魔女などに見立てられました。また、製菓会社はハロウィン用の宣伝を1860年代には始めていて、1880年代にはアイリッシュ以外の人もハロウィンを祝い始めていきました。様々なお店や小売店、銀行などもオレンジ色と黒色で店頭のデコレーションをはじめたのが1920年代。1940年代には家庭にハロウィンを浸透させようと、子供用のイベントとして「Trick or Treat」を盛り上げて行きました。また、仮装が広まっていったのは1960年代頃からで、ゲイ・コミュニティー内で男性が女性の格好をしたりするなど、羽目を外すようになったことが始まりです。今のPride Weekが確立されるまでハロウィンは彼らにとって大きなイベントでした。今でもChurch St.では盛大に祝われていますよね。そして飲食業界でも製菓会社に倣って、ハロウィン商戦に参入していきました。バーやクラブで行われる仮装コンテストなどが良い例です。
そして1980年以降には現在のハロウィンと差異はなく、クリスマスの次に大きなイベントになっていきました。

世界各国のハロウィン

ハロウィンはアメリカのイベントなのか? それともヨーロッパのものなのか?そして世界中で祝われているのか? 等々、ハロウィンに関して様々な議論は今も続いています。

メキシコでは11月1日を「死者の日」として祝います。前夜祭として31日の夜に現世に戻ってくる先祖のためにお墓の掃除・装飾をして故人を迎え入れる準備をします。そして1日はお菓子を持って、お墓にピクニックに行きます。ドクロの形をした砂糖菓子などがお菓子では有名です。しかしながら、とてもハロウィンと似ていますが、これは全く別のイベントなのです。ただ最近ではメキシコとアメリカの国境辺りでは、少しハロウィンの要素を取り入れて「死者の日」を行っている地方も存在してきています。

アメリカでは盛大に祝われているように思われていますが、キリスト教右派の人たちは断固としてハロウィンに反対しています。もともとキリスト教のお祭りであるのに、デーモンや魔女などと結び付けていることが呪わしきことだと主張しています。今でも学校に出向き、ハロウィン・パーティを止めるようにデモをしている光景が見受けられます。

大多数のユダヤ人の人は中立だったりしますが、伝統的なユダヤ人もあまりハロウィンが好きではない傾向があります。意味のないイベントだと思っており、過激な仮装や夜遅くのイベントなどは、青少年に悪影響を与えると主張しています。  そして面白いことに、ヨーロッパにハロウィンが逆輸入されているということがあります。もともとイギリスではGuy Fawkes NightまたはBonfire Nightを代わりに祝っていましたが、ハロウィン商戦などが賑やかになり、少しずつヨーロッパにもハロウィンが浸透し、今ではイギリスだけではなく、イタリアもフランスもハロウィンを祝い、Trick or Treatをしているところを普通に見かけます。

アジアではキリスト教などの文化的背景は無く、商業的な行事として浸透していきました。日本にある「お盆」はハロウィンの起源となったEve of All Hallowsに非常に似ていて、どちらも家族で集まり、死者を慈しむ日ですが、全く異なる時期のイベントですので、とても興味深いです。季節が別だから文化的背景は違うのでしょうが、少し調べてみようと思っています。

かぼちゃのランタン、 Jack-o’-Lanternの始まりは?

この起源はイギリスのEve of All Hallowsから来ているとされています。このお祭りの時にはカブにローソクを立て、このローソクが死者の魂を表し、その火に向かって祈りを捧げていました。異教徒での起源はジャックと言う悪賢い遊び人が、悪魔をだましたことによって、死後は天国にも地獄にも行けず、この世と天国・地獄の間を永遠にさまようことになった時、最後の情けとしてもらったカブにローソクを入れてランタンとして使っていたという説もあります。しかし、カブはそんなに大きな作物でもなく、ローソクの火を守ることもできず、北米にハロウィンが来てからは、あまり食用に使われていなかったカラフルなかぼちゃが使われていくようになりました。大きさも強度も十分なので、中身をくり抜いてローソクを中に灯すことができ、最適でした。後にそのくり抜きが現在の様々なランタンの模様を生み出していきました。1940年代にはみんなが自由にJack-o’-Lanternを作っていました。今ではそれがハロウィンを祝っている目印であり、Jack-o’-Lanternがある家にはTrick or Treatで訪問することができるとされています。

Halloweenを楽しむために教授からメッセージ

いろいろな文化的背景を説明しましたが、歴史や文化を勉強でもしていない限り、単純に楽しむことをお勧めします。今では子供から大人まで楽しむことができるイベントになっています。せっかく世の中が仮装をして盛り上がっているのですから、みなさんも是非何か仮装をして楽しめば良いと思います。
Nicholas Rogers教授  ヨーク大学歴史学科で教鞭をとる傍ら、研究員としても活動している。これまでに6冊の本を出版しており、2002年にHalloween: From Pagan Ritual to Party Nightがオックスフォード大学出版から出された。専門は社会学と文化学で主に18世紀ごろの英国を中心とした大西洋世界である。歴史上の文化、宗教的お祭りがハロウィンを研究するきっかけとなった。

halloween-from-pagan-ritual-to-party-night著作紹介

Nicholas Rogers教授著、『Halloween : from pagan ritual to party night(2002年、Oxford University Press)』  今回インタビュイーであるNicholas Rogers教授の研究著書。本書ではハロウィンのカラフルな歴史の中で、今やクリスマスの次に人気のある祝日の文化的起源とその発展がまとめられている。
ケルトとキリスト教の儀式に根ざした、豊かで複雑な歴史を誇るハロウィンは民族の祭典から子供も大人も楽しめる国民的イベントに進化してきた。本書では古典的な歴史からハリウッド映画までの幅広い資料を用いて現在のハロウィンの成り立ちを紐解いていく。始めの数章ではケルト文化の祭りから生まれ、キリスト教の要素を吸収し、北米にはアイルランドとスコットランドの祭りとしての広がりが説明されている。そして国民的祝日として認められ始めたころに起こったハロウィン関連の事件だけでなく、ホラー映画としてのハロウィンの巨大な影響なども検討する。また、アメリカの政治が安定していなかった時期のハロウィンは、反転の夜として表現の一時的な自由が存在していた。その政治的背景も踏まえ、政治的思想が右翼から左翼へと変わる中でのハロウィンの変遷についても記述されている。