日本とカナダで活躍する書道家・前田典子氏『ファウンデーションズ』 出版&展示会レセプション@ジャパンファウンデーション

展示会『ファウンデーションズ』: 2019年1月11日まで開催

前田典子氏(左)とコリン・ガードナー氏


 10月19日、書道家である前田典子氏の書籍『ファウンデーションズ』の出版及び展示会開催を記念して、前田氏とニューヨークの建築家であるコリン・ガードナー氏の対談が行われた。

ジャパンファウンデーションの清水優子所長。情熱的な書道の先生である前田氏を当日はアーティストとして招いたと歓迎するとともに、氏の哲学に触れて欲しいと述べた。


前田氏: 建築家であるコリン氏が、書籍の構成という足りない部分を補い、人々が書道の意味や大切さを感じることができるよう作成してくれました。彼の綿密な作業が、本をより魅力あるものに仕上げてくれました。

コリン氏: このプロジェクトでは書道の哲学という面を重視しました。なので、構成を考える前に、彼女が書道に対してどのような思想を抱いているかを教えてもらいました。


前田氏: 私は小さい頃、よく詩や小説を読んでいました。また、辞書を読むことも大好きでした。それら文字の羅列を美しいラインだと感じていたからです。私にとっての書道は、辞書に書かれているような美しい文字をどのように表現するかという一つの手段でした。日本人でない方にとっては、書道は理解し難いものでしょう。ですが、多くの方は私の作品を見たときに驚きます。そこには多数の次元が存在するからです。どのような形で書道を視覚で捉えるか、言語の意味をどれほど楽しめるか、書道がどのようにして時間を漂うのか、という3点に注目して今回の書籍作成に取り組みました。

 対談中には、デイビッド・マイケル・ラム氏とジョン・ノースコット氏が手がけた映像が上映された。映像は、羽筆を含む20本にも及ぶ筆の紹介シーンや、2本の筆を同時に握って作品に取り組む姿など、前田氏の書家としての姿が存分に映し出されていた。

展示会の様子


前田氏: 日本の書道を理解するための方法は一つではありません。そこには様々な側面があり、書道というアートには多くの次元が存在するのです。ここカナダで、私は多くの生徒に書道を教えていますが、生徒それぞれが書道に対して異なった次元を持っています。書道の精神は、円相のように流れを捉えており、単に1本の線というのではなく、動きで表現する円になっているのです。


コリン氏: この考え方はとても魅力的ですし、どのページを読んでも発見できるポイントになっています。書道というストーリーを読み進めていく中で、必ず同じ場所に戻ってきます。それこそが円相であり、書道というアートなのです。

前田氏: 楽しみ方は人それぞれです。私自身、感情によって毎回異なる円相を描きます。筆の動きはいつも違うのです。この本を読むときも、その時のムードや性格によって違う受け取り方をすると思います。それはとても面白い事ですね。小さい頃、祖母がよく「人との出会いは流れ星のようだ」と言っていました。出会いは滅多に起こらないチャンスだということです。私にとってこの展示会の開催及び書籍の出版は、まるで流れ星に出会ったかのようです。この本を通して多くの方々とコラボレーションでき、ここにいらっしゃる全ての方々に出会えたことは、まるで流れ星のような素敵な機会です。ありがとうございました。

コリン・ガードナー氏

コリン・ガードナー氏と前田先生の作品『空』


 書道は一つの作品の中で、スペースや言葉の意味、時間など多くのものを共有しています。特に時間は重要であると考えています。書が過去をどのように表現するか、人々が書道を通してどのような未来を見出すかは大きな意味を持ち、それは建築にも繋がる部分だと思っています。建築分野においても、遠い昔から人々が開拓してきた都市をどのように作り変えて未来に繋ぐかということは重要だからです。これは前田氏の人生観に感銘を受けた結果、行き着いた考えです。

デイビッド・マイケル・ラム氏

 映像で私達が表現したかった点は2つあります。まずは前田氏の哲学です。なぜ書道を選んだのか、どのように制作するのか、何がきっかけとなって作品に取り組むのかなどに注目しました。そしてもう一つは、書道の美しさです。筆を紙に置く瞬間に立つ音は特にこだわって撮影しました。私達が書道に感銘を受けたからこそ、それらを表現できればと考えていました。

前田先生(写真中央)と関係者の方々

左から、デイビッド・マイケル・ラム氏、前田典子先生、ジョン・ノースコット氏

展示会の様子

サイン会の様子