逃れられない 税の呪縛

世界中の税務当局はいかに税収を増やして国家に還元するか必死になっている。一方、企業や個人はいかにしてそこから逃れるか、時として国籍を変えることもいとわないその「いたちごっこ」は滑稽さすらある。だが、国籍を捨てられない日本人は、世界有数の有能な取り立て屋である国税に対峙できるのだろうか?

okamoto-hiroaki-oct-2014あなたはこの数年、稼ぎまくった。株かもしれないし、FXかもしれないし、きちんと仕事をして成績優良でボーナスをしこたまもらったのかもしれない。あなたは応分の税金も払った。だから残りはあなたのものである。

ここまでは誰でもわかる話だ。だが、この儲けを日本人であるあなたの奥さんや子供と分けるとなると話は別だ。これが日本の国税の発想である。つまり、どれだけ稼いでもその人が使う分には問題ないが、誰かにおすそ分けしようものなら国税が「お尋ね書」を送り付けてくる。

世の中、税金を払いたくないと考えている人はゴマンといる。そして合法的に税金を逃れる指南をする税務コンサルタントなるものは多額のフィーを取って企業に囁いている。カナダのティムホートンズとバーガーキングの合併話は当初、アメリカとカナダの税率の差を狙ったものだと指摘され、当事者やそこに資金を提供するウォーレンバフェット氏までその火消しに走った。なぜなら彼はそれまで富裕者は応分の税金を払うべき、としていたのだから節税目的と言われれば「投資の神様」としての権威に傷がついてしまうのだ。

アメリカ企業はあちらこちらのタックスヘイブンなるところを経由させ、企業活動より生じる税金がなるべく少なるよう血みどろの努力をしている。ワシントンでは当然これを「ずるい」とし、本来であればアメリカに落ちるべき税金が他国に落ちたり、どこにも落ちないことは許されないと考えている。

世界中の税務当局が血眼になるのは国家の財政が厳しいからである。如何に税収を増やすかこれは国家の永遠のテーマである。そのために企業誘致という「セールス活動」をしている。しかも法人税をディスカウントするというおまけつきである。その先鞭をつけた先進国がイギリスである。われら安倍首相は経済団体からの厳しい突き上げで日本もその企業誘致セールス活動に参加することを決意した。

だが、日本の財政は世界でも最悪の成績表である。つまり慢性大赤字の企業が売り上げ向上のために更に安売りをするとすればどうやって帳尻を合わせるのか?

この答えが冒頭のシビアな国税の税徴収姿勢かもしれない。その一つが今年から始まった日本人が持つ海外資産の報告義務である。5000万円以上の海外資産がある日本人は要注意である。次に来年から始まる相続税の基準の引き上げである。4割も基準のバーを引き上げれば少子化の今日、思わぬ頭痛をかかえるのは残された家族かもしれない。

その次に控えるのがマイナンバー制かもしれない。2016年予定通りにこれがスタートすれば国税はさらにその力を増すことになる。隠す方法がいよいよなくなるということである。これが法人税引き下げの代償だろう。まさにワンツースリーのトリプル攻撃となるのだ。

ちなみに富裕層は一生懸命税金を逃れようとしているが、日本の場合、最終的にごまかしはほぼ効かないとされている。日本の国税はそれぐらい恐ろしい。しかもその止めは相続税であり、確実に持っていくとされている。そりゃそうだ。死んだらそれ以上隠しようがない。さもなければ永遠に出てこない土に埋まった現金と化すだけだ。

ところで、日本の当局は実は稼ぐということに長けていない。アメリカのそれと比べたらわかる。リーマンショックに絡む銀行に対する罰金の金額は天文学的金額である。あるいは日本の企業がカルテルなどで払うペナルティも企業の屋台舟を揺るがすほどである。つまり、アメリカの当局は稼いでいる。

いや、もっというならシェールオイルが出る今日、ロシアとヨーロッパの不仲でヨーロッパ諸国がガスやオイルの安定供給を求めるならアメリカは喜んで手を差し伸べるだろう。そして輸出するとき輸出関税をかければよい。アメリカの財政問題などすぐに解決できるかもしれない。

つまり稼ぐ国税と稼げない国税の違いであり、日本は稼げないから国民に「酷税」を強いるのである。内閣改造した安倍内閣はより安定化していくだろう。これが意味するのは、消費税10%は当然ありきなのである。専門家はこれ以上税率を上げたら消費の低迷がもたらす混乱は想定以上になるとしている。が、安倍政権は飴玉を用意するだろう。まず、株価対策。そして経済支援パッケージだ。もしかしたら日銀も協力姿勢を見せるかもしれない。まさに「今だけの大バーゲンセール」がこれから行われるだろう。

日本人は基本的に「一代限りの華」となる場合が多い。カナダやアメリカはファミリーツリーをより太くし、将来の国家や家計の安定に努める。結果として国も国民も富む。日本の場合は厳しい年貢の取り立てで働いても、働いても楽ならずという社会を何百年も続けている。

それもしょうがない、と諦めているとすれば、税制からくる個人主義という発想があるのかもしれない。家族にすら渡せないお金なのだから自分だけのご褒美で満足しなくてはいけない。それにしても家庭を守った奥様に20年結婚していれば家は貰えるかもしれないけど現金はほとんどダメとなれば内助の功の価値を完全に否定しているとしか思えない。これでよいのか疑問を持つ人はさて、どれぐらいいるのだろう?


岡本裕明(おかもとひろあき)

okamoto021961年東京生まれ。青山学院大学卒業後、(株)青木建設に入社。開発本部、秘書室などを経て1992年同社のバンクーバー大規模集合住宅開発事業に従 事。その後、現地法人社長を経て同社のバンクーバーの不動産事業を買収、開発事業を推進し完成させた。現在同地にてマリーナ事業、商業不動産事業、駐車場 管理事業、カフェ事業など多角的な事業展開を行っている。「外から見る日本、見られる日本人」の人気ブロガーとしても広く知れ渡っている。