東アジアのパフォーマー達 | バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明

 朝鮮半島が賑やかになってきた。若い方や興味ない方にとっては「それがどうしたの」という程度かもしれない。だが、盛り上がりを見せる東アジア情勢は今年の世界ナンバー1のニュースになる可能性は大いにある。この世紀のパフォーマンスを少し追ってみることにしよう。


 時は昨年の9月にさかのぼる。北朝鮮の金正恩委員長はそれまで弾道ミサイル発射実験に熱くなっていたが、無理を続けたため、その基地が壊滅的ダメージを受けたとされる。そのため、打ち上げ花火のように上げていたミサイル実験のプランは軌道修正を余儀なくさせられる。

 ただ実験完了が近づいていたことが幸いした。そこで11月の実験を最後にパフォーマンスの第一幕を終了した。それは世界を震撼させ、怒号と非難が渦巻き、北朝鮮が孤立したその時期に重なる。

 第二幕は2018年に始まったと言ってよい。平昌オリンピックに突然参加表明し、友好団を韓国に送り込む。左派の韓国、文大統領にとっては願ってもない展開である。オリンピックには金正恩氏の妹、与正氏を送り込み、ソフトイメージを売り込む。

 更に金正恩氏の突如の訪中で習近平氏とは2度にわたり会談。4月末には韓国の文大統領とも会談し、北朝鮮には降ってわいたような外交展開が始まる。本誌が発行される頃にはトランプ大統領との会談も具体化しているだろう。

 日本はこれらの動きに対して冷ややかである一方でトランプ氏や文氏を介して日本のメッセージを送り続けている。

 さて、このパフォーマンスの出口は今のところ、年末に向けた南北終戦と平和条約締結がシナリオだ。私はそれを第一幕と考えている。これは暗黒の日々から大逆転し、朝鮮半島に平和をもたらした男、金正恩として世界の注目を受けるまでのストーリーである。

 では誰も書いていない第二幕のシナリオを考えてみよう。

 金正恩氏がやり手の指導者として力を発揮するのはそのあとのはずだ。北朝鮮に外資を導入し、急速な経済の活性化を推進する。その主導権は韓国と中国が握るであろう。残念ながら日本は積極参加しない。理由はいつ裏切られるか分からない恐怖心が先走るからだ。日本のメディアは朝鮮半島政策の是非について大いに議論することになるだろう。

 個人的にはその朝鮮半島の蜜月関係がそう長く続くとは思っていない。それは半島の歴史が物語っている。また、経済格差が雲泥の時には北朝鮮の経済成長率は奇跡的な水準を維持するが、GDPがある程度の水準になると自我が芽生え、自国での産業推進に舵を切るとみている。今まで中国がそうであったのと全く同じである。このあたりで外交などがぎくしゃくしやすい。

 最大の課題は北朝鮮の近代化は段階的成長という順番を踏まず、突如、最新、最先端の技術が導入されることにある。イメージとしては江戸時代に籠や人力車が移動手段だったところに自動車が突然走るようなものだ。そのギャップが大きければ大きいほど国民の間でも世代間の価値観ギャップが生まれ、国際化に向けた国家の大きな試練があるはずだ。このあたりが議論されるまでに20〜30年程度はかかるとみている。

 半島の不和とは世界の共通事項であり、何処の半島でも必ず揉めやすい。特に朝鮮半島はその歴史、民族、中国との冊封の過去、、ロシア、日本との関係などバランス外交が極めて難しい。よってどちらかが我慢をしている限りにおいて半島の平和は保たれる。今は南北共に我慢しているのでうまくいく仮の姿だろう。

 ところで「東アジアのパフォーマー達」というタイトルを付けた理由はアジアのアイデンティティが朝鮮半島問題の進捗と共により明白になる、と考えているからだ。近代の世界の歴史をみれば白人国家が植民地政策をとったことが戦争勃発の理由であった。終戦後は経済の主導権を引き続き白人社会が支配する体制が続いた。そこに割って入ったのは歴史的に唯一、日本だけであった。

 今、中国では習近平体制が強化され、強大な権力を持った国家体制を築く。東南アジアも経済的発展を遂げ、香港やシンガポールは金融の拠点としてその地位を築いている。アジアの時代と言われて久しいが、それが本格的に意識される時がやってくるとしたらどうだろう。

 アジアは世界の工場と言われたが、今後の成長率は欧米のそれをはるかにしのぐはずだ。その強固たる足並みをリードするのが東アジアの国家となる。

 では最後に日本の役割はどうなるであろう?

 日本はアメリカと密接な関係を持ち続けるのみならず、欧州や中東を含めたあらゆる国家とうまく立ち振る舞い、アジア国家との介在役として育てるべきだと考えている。これは英国がそうであったように島国としてのフットワークの軽さ、そして大陸的な固定概念を持たないしなやかさが欧米との窓口になりやすい背景と考えている。

 そういう意味では安倍首相が世界中に外遊し、様々な関係を樹立してきているスタンスは今後の日本の取るべき姿とみてよいのではないだろうか?少子高齢化の日本が今後生き残る手段は日本人の国際化が極めて有効になろう。

 若い世代がこのようなシナリオに気がついてくれれば私としてはうれしいのだが。


岡本裕明(おかもとひろあき)


1961年東京生まれ。青山学院大学卒業後、青木建設に入社。開発本部、秘書室などを経て1992年同社のバンクーバー大規模住宅開発事業に従事。その後、現地法人社長を経て同社のバンクーバーの不動産事業を買収、開発事業を完成させた。現在同地にてマリーナ事業、商業不動産事業、駐車場運営事業などの他、日本法人を通じて東京で住宅事業を展開するなど多角的な経営を行っている。「外から見る日本、見られる日本人」の人気ブロガーとしても広く知れ渡っている。