カナダの景気、世界の景気|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明

 アメリカをはじめ、世界中で景気の行方に懸念する声が増えてきている。アメリカがくしゃみをすれば日本は風邪を引く、という言葉があるがカナダは肺炎になるほどその影響を受けやすい。皆さんを取り巻く景気は今後どうなるのか、見渡してみよう。

 カナダは2009年にリーマンショックでマイナス成長となって以来、2〜3%前後の成長率を維持している。アメリカの好調ぶりに歩調を合わせるようにカナダも好景気を享受してきたわけだ。

 ところがアメリカの景気については2019年には息切れするのではないかとする予想が昨年半ばからずらり並び、実際に18年10月頃から変調をきたし、青ざめたクリスマスを送った投資家も多かったはずだ。昨年のカナダGDPも1.8%成長と低いものにとどまった。幸いにも19年に入り、行き過ぎた悲観論から脱しつつあり、また、米中貿易協定がまとまるのではないかという見方も広まったことでやや安堵感が見られる。

 専門家からはアメリカの景気転機はもう少し先なるかもしれないという論調も増えており、当然ながらカナダにもプラスになりそうだ。

 カナダの景気といえば住宅事情が最も分かりやすいだろう。住宅価格が上がれば景気は良いというシナリオはこのところ、微妙だ。昨年9月頃から住宅指標は下向き始めており、売買件数は約20%、価格は5%程度下げている。このトレンドはいましばらく続くとみている。下げている理由は住宅ローン金利が上がったこと、もう一つはローンの審査基準が厳しくなったことがある。

 地域的にはそれだけの理由に留まらない。例えばバンクーバーの高額物件の動きは冷え切っている。理由は本土系中国人が売りに出しているものの買い手がつかないため、売り出し価格がどんどん下がっているためだ。3割下げて半年たっても売れない物件もあるし、デベロッパーが新築を売りあぐんでいるケースもある。新聞には新築コンド価格の割引広告が出始めており、プリセールが芳しくないことを物語っている。
 新規案件が急速に減っているため、工事費の物価も下がっているし、不動産屋は閑古鳥の状態が続いている。もちろん、短期的には良くない傾向だ。

 但し、そこまで悲観しなくてもよいと考えている。一つにはカナダ政府の移民政策でより多くの移民を受け入れる方針があるからだ。今年は昨年より2万人ほど多い33万人へ、また2020年以降は35万人程度に増やす予定だ。この数字は人口の1%にも及ぶわけで住宅需要へのインパクトは大きい。

 また世界の金持ちは中国だけではない。その上、2016年頃から香港からカナダへの移民が一国二制度問題を背景に急増している。これは1997年の香港返還前のブーム以来であり、中国本土人とある程度の入れ替わりも期待できるかもしれない。
 次に金利上昇は一旦止まったとみてよい。一部予想では今年後半に1、2回利上げという声もあるが、アメリカが上げられないのならカナダが上がることもないだろう。カナダの経済的ファンダメンタルズはそこまで強くはない。

 実質的に今年から始まったCPTPP(TPP11)によるメリットも徐々に期待できよう。カナダ政府も本腰を入れてその普及に努めているようだ。また、英国はEU離脱問題で紛糾し、落としどころがなかなか見えないが、仮に不本意な形での離脱となった場合、カナダが経済的受益を受ける「ぼた餅」がこぼれてくる可能性もある。

 カナダに不安材料があるとすれば政治かもしれない。SNCラバリン社のリビア政府賄賂に関する捜査への首相府介入疑惑は今年秋の総選挙を控える中、与党、自由党には厳しい状況となっている。これを書いている時点でもトルドー首相の歯切れは悪く、本件はこれから長いプロセスの中で更に締め上げられる話だ。秋までに決着がつくようなものではなく、野党保守党からすれば選挙戦では絶好の立ち位置となるだろう。

 また、バンクーバーで逮捕されたファーウェイのCFO孟晩舟氏の扱いも大きな岐路に立っており、トルドー首相の政治生命を決する判断を要求されることになるかもしれない。もっとも経済的には保守党の政権奪回の方がプラスに働きやすい。

 経済は世界でリンクしている。つまり一カ国だけが良くて他がダメといったことはなく、世界のリーダー国はベクトルとして同じ方向を向くと考えてよい。

 よって2019年のカナダの経済を占うならまずは影響力が多大なアメリカの動きに注目するのが良いと考えている。トランプ政権は政治家の得意とする「妥結」ではなくビジネスネゴシエーションをその武器としている。よって勝ち取る限りにおいてはアメリカを利し、ひいては世界経済に好影響を与えるであろう。但し、私の見ている限り、トランプ大統領の攻め方はほぼ読みつくされており、「トランプ攻略方法」が見えてくるだろう。米中通商交渉はその好例だ。どのあたりで落としどころを探るか、見ものである。

 それが期待外れでトランプ弱体化につながれば、一気に2020年大統領選に国民の目線が動いてくるであろう。すると不思議と景気は割と安定するのが定説だ。理由は現大統領が二期目当選を果たすため国民に飴をばらまくからだ。となれば「風が吹けば桶屋が儲かる」的になるが、カナダの景気が年後半には回復するだろうという専門家の予想には合致する。

 景気は全般にはまだら模様であるが、極度の不安定感があるわけではない。あとは我々のコンフィデンス次第。仕事もあって、給与ももらえる安定したライフを送っている限り心配は無用だと信じたい。

岡本裕明(おかもとひろあき)

1961年東京生まれ。青山学院大学卒業後、青木建設に入社。開発本部、秘書室などを経て1992年同社のバンクーバー大規模住宅開発事業に従事。その後、現地法人社長を経て同社のバンクーバーの不動産事業を買収、開発事業を完成させた。現在同地にてマリーナ事業、商業不動産事業、駐車場運営事業などの他、日本法人を通じて東京で住宅事業を展開するなど多角的な経営を行っている。「外から見る日本、見られる日本人」の人気ブロガーとしても広く知れ渡っている。