ドナルドトランプ大統領の世界

アメリカ大統領選で共和党の予備選はドナルド トランプ氏の勝利で終わった。多くの国民やメディアや専門家の予想を覆し、テッド クルーズ氏さえも「こうなるとは予期できなかった」と述べている。さて、トランプ大統領は実現するのか、その場合にはどうすべきか、考えてみたい。
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実は私のブログでは15年8月ごろからトランプ旋風についてあまり軽く見てはいけないとしばしば指摘し、今年1月にはトランプ大統領を必ずしも否定できないと記している。反トランプ旋風が世に吹き荒れている中、なぜ、私はそう書いたのだろうか?

アメリカ人の政治離れは日本と同様かなりひどいものになっている。特に印象に残るのが債務上限問題で政府機関に勤める役人には給与は払えないという切羽詰まった状態に陥っているにもかかわらず、共和、民主両党はギリギリの攻防を行い、党利党略の決着をつけた。この時、国民がアメリカの政治に完全に失望し、どうでもよくなってしまったことを軽視し過ぎた気がする。ベイナー下院議長(当時)は政治ゲームをすることにかけては優秀な議員であったがアメリカ人の政治離れを加速させた責任は重大である。

確かに広い国土に富と資源や資産、人材が分散化し一つの色を付けるのは難しくなった。旧態依然の製造業に対してサンフランシスコなど西海岸からの新たなる旋風、シェールオイルに湧きたつ中部、東部エスタブリッシュメントは永遠不滅だと思う北東部、更にはメキシコなど中南米の影響を強く受ける南部やアジアからの移民が幅を利かすカリフォルニアなど枚挙に暇がない。

そのどれを見ても自分たちの権利と利益をいかに確保するか、狭い世界で争っている。アメリカ人がなぜこんなに小さくなったのか、大学生の時から親しんできた私の知るアメリカとは大違いである。

政治家の主義主張はその小さな夢の数々を実現しますよ、という公約でしかない。しかもそれが達成できるかどうかは分からない。国民は半ばあきらめの気持で「消去法で選ぶならこの人か」的な発想になってしまった。

ところがトランプ氏の出現はその常識観を完全に覆した。多くの人にとって一度見たら忘れられない真っ赤な顔と奇妙な髪型のいでたちで指をさしながら放言をまくるあのスタイルはトランプ劇場そのものであった。

だが、彼のその放言に振り回されていると本質を見落とす。一つには彼は政治家ではないこと、二つ目には選挙資金を自分で賄っていること、これが大きい。つまり、二大政党アメリカでもっとも閉鎖的で改革の余地がなさそうだったアメリカの政治舞台に原爆を落としたようなものであろう。

ではトランプ氏が政治家でなければ何なのか、だが、私はあえてこう言う。「カリスマ型起業家、野心家で数知れない失敗経験をも持ち合わせた類をみない新種」。

トランプ氏の発言は過激だが一定の分かりやすさがある。それは「アメリカ合衆国株式会社にもっと利益を、もっと給与を、そしてコストを下げよう」これだけである。

トランプ氏は、不法就労はダメよ、という。アンダーテーブルを排除すると言っているわけだ。法人税は下げるよ、と。これは合衆国株式会社の傘下の法人に利益をもたらす。その代わり、税金はしっかり納めてもらうよ、と。いわゆる税逃れは許さない姿勢である。コストを下げるには不要な警備費用を落とすか負担割合を見直すと言っている。駐留米軍はその対象である。

イエレン議長はクビだ、と言っているのは金利を上げようとしているからだ。合衆国株式会社の金利負担は国債など借金が多すぎて首が回らないのだから金利は下げさせるのだろう。今は否定しているマイナス金利だってトランプ氏になればありうるだろう。ドルは強すぎるというのもこの理に叶う。ドル安で輸出ドライブをかけたい、そして合衆国は再び製造業、として輸出産業が華やかになり、トランプタワーがそびえ立つ、というシナリオだ。

この発想はビジネスマンならすぐに理解できるはずだ。私は彼が立候補した時点でこれに気が付いてブログで時々呟いていた。一度もトランプ氏を否定してこなかった。

テッド・クルーズ氏が「予期しなかった」と言った時点でクルーズ氏の大統領としての素養はなかったと言ってもよい。今、世界では予想不可能なことが日々起きている。想定外が普通になった今、想定にすがること自体に無理がある。

なぜ、想定外が起きるのか?これはSNSの力でエスタブリッシュメント層による支配関係が崩れ、99%のボイスが反映される本当の民主化が始まっているからに他ならない。言い換えれば「北アフリカの春」は実はアメリカでも起きているとも言える。

クリントン対トランプの戦いは個人的にはトランプ有利とみている。理由はトランプ氏がサンダース票を囲い込めるからだ。

日本にとってどちらが得か、であるが、一概には言えないが、クリントン氏は中国びいきである点と八方美人的性格があり、日本には不利とされる。トランプ氏の外交手腕は未知数である点からむしろフレッシュ感覚で取り組めるとみている。

日本側はトランプ氏対策をするなら民間起用の駐米大使をつけるぐらいのド肝を抜く対策が必要だろう。トランプ氏の大統領就任があれば日本にも相当刺激的で脳内活性化が期待できそうだ。

これが私の想像するドナルド・トランプ大統領の世界である。


岡本裕明(おかもとひろあき)

okamoto021961年東京生まれ。青山学院大学卒業後、青木建設に入社。開発本部、秘書室などを経て1992年同社のバンクーバー大規模住宅開発事業に従事。その後、現地法人社長を経て同社のバンクーバーの不動産事業を買収、開発事業を完成させた。現在同地にてマリーナ事業、商業不動産事業、駐車場運営事業などの他、日本法人を通じて東京で住宅事業を展開するなど多角的な経営を行っている。「外から見る日本、見られる日本人」の人気ブロガーとしても広く知れ渡っている。