絶対音感を持つ者|カナダで出会う音楽の話【第5回】

 私の友人に絶対音感を持つ者が数多くいる。

 絶対音感とはある音を単独で聞いた時にその音の高さを絶対的に認識する能力の事で(ウィキペディアより抜粋)、当教室の講師陣も保持者である。中には日常生活の色々な音を12音階で捉えられる達人や、真ん中のラの音は?と尋ねると即座に知らせてくれる人間チューニングマシーンみたいな者もいる。専門的にいうと、ピアノの真ん中のラの音は現代における音楽の定義で440ヘルツと定められており、絶対音感の保持者とは、程度の差はあれ、そのヘルツの差を特定の音として聴き分けられる耳を持った人間ということになる。

 私自身も一応持ってはいるのだが、自身のコンディションや楽器の種類によって精度や正解度が結構変わるという甚だいい加減な代物で、しかもその絶対音感を一体どこでいつ身に着けたのかというとさっぱり記憶にない。気がついたら小学校のチャイムをファラソド~、ドソラファ~と捉え、母親の怒鳴り声を鬼の居ぬ間にピアノで再現して遊んでいたりしていた。多分私の場合は自己管理力や記憶力の訓練をもっとするべきだったのかも知れない。未だに練習は苦手だし、いつからピアノを弾き始めたのかも定かではないのだから。

 それでは絶対音感が生まれ持った才能なのかというと、もちろんそういう方もいらっしゃるのだろうが、私や友人達はあくまでも頻繁に繰り返される練習や聴音等のエクササイズで身に着ける能力という考え方をしている。私達の多くが小学校低学年までに鍵盤楽器を元にした音楽教育を受けた経験があるからだ。私達の子供の頃と違って最近はネットやアプリで楽しく遊びながら絶対音感を身に着ける方法が数多く公開(しかも無料)されているので、毎日厳しい指導の下で数時間ピアノの前に座り練習を強いられる、みたいなこともないであろう。ただ、言語やスポーツと同じで、地道な積み重ねが後々物を言うのも事実。毎日なんとなく、何らかの形で音楽に触れていることが結局一番の近道のような気がする。うちでは娘とゲーム感覚で、音当てっこクイズ、動物歌合戦、日常会話をミュージカル風に歌ってみようなど、活字にするとちょっとおバカ風なことを結構真面目にやっている。もしかしたら彼女より私の方が楽しんでいるのかもしれないが。

 ちなみに。絶対音感と云う物は持っていても損はないが、その一方ですごく役に立つかというと結構融通が利かなくて不便な事もある。私の知っている才能あふれた音楽家は、実は精巧な相対音感を持つ方々だったりする。調や音、さらには譜面やジャンルまで飛び越えて素晴らしい感動を与えてくれる。そして絶対音感にせよ、精巧な相対音感にせよ、結局は好きこそものの上手なれ、のなせる業だと思う。まさに音楽ヲタク万歳!なのである。


SAYAKA MUSIC STUDIO グリフィス千佳 

 兵庫県神戸市生まれ。モデルを経てライブや舞台を中心に歌手、役者として活躍。2012年に移住、現在はさやか音楽教室で講師を務める。1児の母。