医療・食料品・飲料・美容・農業 7500億円 大麻ビジネス市場を追え!|特集「カナダ・マリファナ合法化」

 大麻合法化にあたり、カナダにおけるCannabis関連産業の成長が期待されている。カナダのマリファナ市場は2017年だけで推定57億ドル(約4900億円)とされ、そのほとんどは闇市場の大麻だった。アナリストは合法化によって42億~87億カナダドル(約3600億~7500億円)になると示唆しており、合法後の1年で最大600万人程度が娯楽使用すると予測していると報じられている。

医療
今まで以上に身近になる医療用マリファナ


 合法化以前からその医療的効果が注目されてきた大麻。マリファナの製薬分野への介入を促すべく、直近では9月にカナダ・トロント発のマリファナ生産業者、「Cronos Group」と生物化学を専門とする「Ginkgo Bioworks」が提携を結んだ。

 医療大麻生産の第一線を走る「Cronos Group」と提携することにより、自身が持つ技術をマリファナへ応用したいと「Ginkgo Bioworks」は語る。大麻の中でも医療的効果が見られる成分・カンナビノイドに焦点を置いている。カンナビノイドはマリファナに含まれる化学成分であり、その中には医療的効果が見られるものもある。実際、その効果が期待され、カナダを含む多くの国では医療用マリファナは合法であった。しかし、マリファナの中からはそれらの成分は微量しか取れない。そこで今回、「Ginkgo Bioworks」の技術を駆使し、それらの成分を抽出・大量生産。結果、低価格で提供することが可能になるというわけだ。


 「Shoppers Drug Mart」の参入も注目されている。すでにマリファナ製造業者として認められている「Aurora Cannabis Inc.」と今年の始めに提携を結んだ。処方箋を持ち近所のShoppersに行けば医療用大麻が手に入るということだ。しかし、利便性と安全性が両立されるのかが焦点となる。

美容・健康
マリファナに含まれる成分カンナビノイドの効用に期待

 アメリカで大人気のビーガンレストラン「by CHLOE」。今回、CBDを含む商品を発売することを発表した。その中にはブラウニーやポップコーン、そして日本やカナダでも人気のタピオカミルクティーも含まれるという。CBDは身体的に良好な効果も見られると言われ、懸念されている依存や脳への影響は見られないという。


 そのCBDの効果はスキンケアにも役立つと現在開発が進められており、注目されている効果の一つとして抗炎症作用が挙げられる。さらには、乾燥肌に効果があり、抗酸化作用もあるという。現段階ではまだ研究結果は少ないものの、その効果が期待され、現在CBD関連産業は10億ドルにも及ぶ巨大な市場へと成長している。


 一方たばこ会社の動きも活発だ。リラックスを目的としたたばこはマリファナと競合になる可能性が高い。

 マルボロなどの複数有名ブランドを持つアルトリア・グループは、カナダの大麻生産会社Aphriaの株式取得を協議している。フィリップモリスは大麻栽培に関する特許を保持しているとされる。世界4位のイギリスのたばこ会社であるインペリアル・ブランズは取締役に大麻ビジネス経験者を迎えるなど、たばこ市場に比べ大麻市場はまだまだ小さいが、競争が激化することは間違いないだろう。

食料品
研究・商品開発が急ピッチで進むエディブル・プロダクト


 現在多くの注目を集めているのが英語で「食べられる」という意味を持つ、「エディブル」と呼ばれる大麻入りの食料品である。実際、多くの企業もエディブルの開発に取り組んでいる。

 アメリカで人気のエディブルの一つ、「チョコレート」。思わず「美しい」とこぼしてしまうような板チョコレートを手がけたのは、カリフォルニアにある「デフォンセ・ショコラティエ」。立ち上げたのはなんとアップルの元社員だというから驚きだ。彼らが手がけるチョコレートはまさにアップルの製品を彷彿させるような洗練されたデザイン。一枚の板チョコレートは18個のピースに分かれていて、その一つずつにおよそ10ミリグラムのTHCが含まれている。THCとはマリファナの中にある有効成分の一つであり、精神的効果のある成分だ。10ミリグラムというと、マリファナを一本吸ったのと同じくらいの効能だそう。


 マリファナが入っているとは思えないほどの美しさはもちろんだが、さらに驚くべきことは、味の種類も豊富に取り揃えてあり、バニラ、ミント、抹茶、ヘーゼルナッツなどの人気のフレーバーもその中に含まれていることだ。

 カナダでエディブルが入手可能になるまではまだしばらく時間がかかる。しかし、来年にはこのショコラティエを始め、多くのエディブル製造業者がカナダへ進出してくるということは間違いないだろう。

農業IT
今まで以上に効率が求められるマリファナ生産者たち


 生産側も注目されている今、大きな成長が見られるのが農業ITの分野である。合法化により大麻の利用者も増え、それに応じるべく生産者も今までよりさらなる効率化が急務となっている。そのためにも、大麻生産者の多くは農業ITの手を借りるというわけだ。

 中でもロボットなど自動化の手法が注目を集めているほか、生産したマリファナの管理もITに頼る生産者が増えてくるであろうと予測。さらに生産効率を高めると同時に寄生虫予防にもなる照明器具が注目を集めているそうだ。


 そのような中で、マリファナ生産業者の大手「Canopy Growth Corp.」はプリンスエドワード島と提携を結び、州に年間百万グラムの大麻を供給すると発表。他の州とも似たような提携を結んだというからこれからさらに需要は伸びそうだ。

飲料
酒類に代わるドリンクが誕生!?

 マリファナで作られたビールがあるということはご存知だろうか。トロントの飲料メーカーの一つである「Province Brands」はマリファナから醸造されたビールを開発している。従来のビール製法を覆し、ビールに欠かせない麦を使用せずに、大麻そのものからビールを醸造するのは世界で初めての試みだそうだ。その革新的な製品は世界各地の多くのメディアにも取り上げられ、着実に注目を集めている。

 一般的なアルコールのように精神的作用はありながら、従来のビールと比べて糖質・カロリー共に削減されているとのこと。原料に麦も使用していないため、グルテンフリーでもある。始めはビール製造者の多くから「不可能だ」と疑いの目で見られたこともあったと創業者はCBCのインタビューで答えている。


 大手ビール会社もこの市場を虎視眈々と狙っているのは明白だ。「Molson Coors Canada」はケベック州に拠点を置く医療用マリファナ供給者、「HEXO」と提携を発表。「Truss」という名のジョイントベンチャーを立ち上げ、事業を進めていく方針だ。「Truss」が目指しているのはマリファナを含んだソフトドリンクの開発。ただし、エディブル同様、大麻飲料がカナダで入手可能になるのは早くて来年。果たしてこの先、酒類の代わりとして食卓にマリファナビールが現れる日が来るのか、または人々がマリファナドリンクを片手に街を歩く光景を見るようになるのか、どちらも目が離せないところだ。


 アメリカでの炭酸飲料の購入額は減少傾向にあり、コカ・コーラやペプシも例外ではない。以来、飲料メーカーは顧客を呼び込む新たな一手を打たなければならない状況に置かれていた。


 そんな中、注目されているのがやはり、CBDである。その実現への一歩として9月に米国コカ・コーラはカナダのマリファナ生産業者、「Aurora Cannabis Inc.」と提携を結んだと発表。健康意識の高い顧客をCBDの効果で惹きつけることは出来るのか注目されることは確かだ。近い将来、カナダのスーパーでもCBDを含む飲料が棚に並ぶ日がやってくるかもしれない。

注)ドル表記は全てカナダドルを示す