カナダ国立バレエ団 プリンシパルダンサー Harrison James Wynneさん × マッサージセラピスト青嶋正さん|プロアスリート対談

 今回はプリンシパルダンサーになる前から青嶋先生のもとに通っているカナダ国立バレエ団(NBC)のHarrisonさんとダンサーの心得やコンディショニングの重要性についてお話いただきました。

青嶋: バレエを始めたきっかけを教えてください。

Harrison: 子供の頃から音楽に合わせて踊るのが好きだったのを見ていた母が、近くのバレエ教室に通わせてくれました。5歳の時でした。
 ジャズやコンテンポラリーダンスなど多くのオプションがありましたが、クラシックバレエが一番自分に合っていると感じました。

 週一回ペースでバレエレッスンを始めて、高校生の頃には週4回程度になり、集中して練習する様になりました。土曜日は電車で2時間かかる本格的なバレエスクールで1日中レッスンをし、ダンサーとしての基礎を築きました。

青嶋: バレエダンサーの一日を教えてください。

Harrison: カンパニー所属のプロダンサーとなった今は、月曜日から金曜日の朝10時から夜6時半までみっちりと、リハーサルを行いますので多くの仕事と一緒ですね。いくつもの演目のリハーサルを同時進行で行うので、いつも忙しい気がします。

青嶋: 一般の方々は、ダンサーがそれほど練習しているとは思わないかもしれませんが、それにしても一日中リハーサルするのは体力的にも大変ですね。

Harrison: クロストレーニング、水泳、ワークアウトのほかアスレチックセラピストから指摘された自分の身体のウィークポイントの改善などに取り組んで、いつも備えています。

 それに加えて、少しでも違和感のあるところは、青嶋先生のマッサージや鍼灸など、エクストラのケアを欠かさないようにして大きな怪我を予防しています。

青嶋: 特別なコンディショニング方法などは持っていますか?

Harrison: はい!人に頼るだけでなく、自分のコンディショニングメニューがあります。

〝ポイントは過去の経験から自分の体にはどのようなアプローチがあっているのかを見極めて作ったことです。〟

 例えば、カーディオエクササイズとして走る事は苦手ですが、水泳は抵抗なくできます。また多くのリサーチで言われているように水泳は、身体に対するインパクトが少ない方法というのも自分に合っていると思っています。

青嶋: 普段バレエでインパクトを受けていることからも良い選択でしょうね。バレエパフォーマンスで一番大切にしていることは何ですか?

Harrison: 状況によりますが、観客との一体感です。いくら技術面で優れていても、観客の心に自分のパフォーマンスが伝わっていなければ何の意味もないからです。

青嶋: そのスキルを磨くのは大変そうですね。

Harrison: 本当にその通りです。その答えはバレエスクールでは教えてくれません、
 経験から学ぶしか無いのです。多くのパフォーマンスの経験から一回一回良いところ悪いところを振りかえって、日々ベストなパフォーマンスとは何かということを追い続けなければいけません。

青嶋

〝その鍛錬をこなして真に求められているものを演じられるバレエダンサーがプリンシパルということなのでしょうね!〟

Harrison: I hope so!!!
 それが出来て初めて観客席との距離が縮まるのだと思います。

青嶋: Harrisonは自分から観客席に「私を見て!」とアピールするのですか?

Harrison: 場面によりますね!もちろん、そのようなオーバーなパフォーマンスで訴えることもあるし、逆に動きのない演技で観客に間を与えることによって、シーンの理解を深めてもらうこともあります。

 ボディランゲージも観客とコネクトする大切な要素です。そのようなパフォーマンスの方が、とてもパワフルに伝わるシーンも数多くあります。その根源は、割とシンプルで日常生活での感情の変化をそのままステージに反映させることなのだと考えています。

青嶋: クラシックバレエは、基本となるセオリーが存在し、バレエダンサーとしてそれに従わなくてはいけないと思いますが、一方で自分らしさも表現出来なくてはいけないと思うのですが、どのようにこの2つのバランスを取っているのですか?

Harrison: それに関しては、それほど神経質になる必要は無いと考えています。
 自分が納得して楽しく踊ることが、今の自分に出来る最高のバレエスタイルだと思っているからです。

〝この楽しく踊りたいという気持ちこそ、私が5歳の時からずっと大事に持ってきた自分のダンスセオリーなのです。つまり日々の生活の全てを吸収することこそがバレエのベースを支えているように思います。〟

 そして、ダンスの楽しさを観客の皆さんと共有するのが私にとってのベストなダンスです。その様なパスを観客席に投げかける事で、私は皆さんからパワーをもらっているのです。

青嶋: プリンシパルダンサーまでの道のりを教えてください。

Harrison

〝それぞれダンサーには様々なストーリーがあると思いますが、私の場合は、アメリカのカンパニーに在籍している時にポジションを失い、滞在ビザも無くなったり、怪我で3ヶ月間休んだりと困難な時期が続きました〟

 相性の良いバレエ団と出会うまでも長い道のりでしたが、カナダ国立バレエ団に来た時は、ここが自分が求めていた場所だと実感しました。

青嶋: カナダ国立バレエ団の特徴やストロングポイントは何ですか?

Harrison: まずは、大人のバレエカンパニーだということです。世界の多くのバレエカンパニーが19歳から24歳位のダンサーで構成されていることから考えると、30歳を越えたダンサーを多く抱えるここは、とても大人のバレエカンパニーだと分かります。そしてそれは経験を十分に活かしたエモーショナルな表現やストーリーを伝える力に長けたカンパニーだと思っています。

青嶋: 怪我の経験などはありますか?

Harrison: 一回だけ大きな怪我をしたことがありますが、回復段階でトレーニングを再開した時に、「回復段階の痛みなのか?」「動かしてはいけない痛みなのか?」の判断が難しくて、とてもストレスが溜まりました。

青嶋: その後、怪我から学んだことはどんなことでしょうか?

Harrison: 多くの場合は疲れを溜めてしまったことが怪我の引き金になるので、日々のコンディショニングの大切さを身に染みて感じました。怪我をする前に予防を怠らないようすることが大事だと分かりました。この事実は全ての若いバレエダンサーに伝えたいです。また、自分に合ったコンディショニングを若い年齢の時から身につけるべきです。関節まわりの緊張は自覚が難しいので、定期的に第三者のトリートメントを受けることも非常に大切です。

青嶋: 私が出会うバレエダンサーは、みんな礼儀正しく性格がいい人ばかりなんだけど、厳しく教育されているの?

Harrison: 特別に指導されることは無いですが、クリエイティブで刺激の多い環境での仕事であるということ、そして自分の好きなことをして生きているのでハッピーなのかも知れませんね。

青嶋: バレエダンサーにとって一番大切なものは?

Harrison

〝なぜダンスをしてるのかということを、いつも自分に問いかけて楽しんで毎日を過ごすことが大切だと思いますね。〟

 だって自分が楽しんでいない人のパフォーマンスなんてきっと観たくないでしょ!

青嶋: 私の診察に訪れる理由を教えてください。

Harrison

〝自分と同じ感覚で身体を見てもらえるので安心して身体を預けられます。今まで、絶体絶命の時に何回も助けてもらって効果を感じていることも大きいですね。〟

 そして、いつも自分が気づいていなかった問題点を見つけてくれて、セッションが終わった後は関節が広がった感じがするのがとても気持ち良いからです。

青嶋: これからもカナダのバレエファンの方に、ハンサムで感動を与えるパフォーマンスを長く楽しんでもらえるようにサポートしていきますね。