第1回 「北米ラーメンブーム」|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中

トレンドに敏感な若い世代で広がったクールな日本の食文化

TORJAの読者のみなさんはじめまして、ラーメン雷神のヒロシです。8年前にワーホリでカナダに来て以来、ラーメン屋をなりわいとして、まかないやインスタントラーメンなど週7はラーメンを食べながら生きてきました。

 今回は先日、ちょうど出張で訪れたNYのラーメン人気の背景、そして世界的なラーメンブームの発端となった北米のラーメンブームについてです。今でこそトロントにも数えきれないぐらいのラーメン屋がありますが、お隣アメリカのLAやNYはそれ以上にラーメン屋がひしめき合い、爆発的なラーメン熱の加熱で新店のオープンが後をたちません。しかし、このようなブームの始まりは実はここ最近、2000年代に入ってからの事です。

大黒屋の店内


 NY初のラーメン屋「どさんこ」が74年に、LA初のラーメン屋「こう楽」が76年にオープンしていますが、当時はローカルのお客さんというよりも、日本人旅行者や駐在員、そしてわずかな日系、アジア系アメリカ人がお客さんのほとんどでした。ジャパニーズ・ラーメンがアメリカで、ホットでクールなヒップ・フードと認められるまでは、皮肉にも日本経済を象徴したそれらのレストランの衰退を待たなければいけません。

映画『タンポポ』のポスター

 ラーメンブームという何ともおぼろげな現象は、2004年、フリーペーパー「LAウィークリー」の、ロサンゼルスの若者の間で徐々にブームとなりつつあったラーメンを題材にした記事「ロスト・イン・タンポポ」に確かな痕跡を見て取れます。ソフィア・コッポラ監督の日本を舞台にした映画「ロスト・イン・トランスレーション」と、アメリカでラーメンが語られるうえで必ずと言っていいほど引き合いに出される、伊丹十三監督のラーメンを題材にした映画「タンポポ」を組み合わせたタイトルのこの記事は、スタジオジブリのアニメ作品、漫画「NARUTO」やポケモン、ア・ベイシング・エイプやユニクロなどの新しい日本文化の土台の上に、ラーメンブームが起こりつつあると指摘しています。

 LA・リトルトーキョーの老舗のラーメン屋・大黒屋の錆びた広告看板や色あせた戦前の映画ポスターが貼ってある昭和のレトロな雰囲気に、ハリウッドで映画を学ぶ学生やファッションに敏感な若者たちが、クールな日本という要素を感じ取り、新たな食文化としてラーメンが受け入れられている、といった内容です。

MOMOFUKUのラーメン

 同年、NYのニューヨーク・タイムズでは「ラーメンがやってきた。世界中に響きわたるすする音」と題した特集が組まれ、マンハッタンの日本人経営のラーメン屋や、アメリカのフードチャンネルや外食産業ではちょっとした有名人のデイビット・チャンがベーコンと豚足、鶏もも、ローストした豚骨、酒をスープベースとした最初のアメリカ式ラーメン店「モモフク・ヌードルバー」をオープンさせた様子などを伝えています。どちらもそれまでの着物、茶道、石庭というような伝統的な日本文化とは別の、若くてファッショナブルで都会的な日本に触れる機会を与えてくれる食事文化と語っています。

 アメリカ人がラーメンカルチャーを受け入れるようになったのは最近の話ということがお判りいただけたと思いますが、実はそれ以前から、アメリカ人はラーメンを日常的に食べていて、ラーメンはとても身近な存在でした。どういうことかと言うと…そう。インスタントラーメンです。というわけで、次号はインスタントラーメンについてのお話です。


「雷神」共同経営者 兼 店長 吉田洋史

ラーメントークはもちろん、自分の興味や、趣味の音楽、経営の事や子育てのことなど、思うままにいろんな話題に触れていきます。とは言え、やはりこちらもラーメン屋。熱がこもってしまったらすいません。