第3回 「クレジットカードと我々の新たな挑戦」|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中

バンクバーに鶏ベースのあっさりスープと全粒粉を使った生麺が売りのラーメン屋

 今 から50〜60年前の事ですが、当時は大学や高校が生徒によって占拠されるなど、世界中で政治運動・大衆運動が流行し、文化やアート、音楽の世界でも様々な実験的な作品が作られ、NYではじめて2枚のレコードがミックスされてDJカルチャーが誕生した時代でもあります。常識や価値が上書きされ、それまでの当たり前がコロッとひっくり返ってしまう、そんな時代に現代の生活に欠かすことの出来ないあるものが生まれました。

 1人1枚どころか、2、3枚は常に持ち歩いている人もざらにいると思います。自分もこれなしではコーヒーすら買えません。そうです、1950年にダイナースクラブより世界で初めて発行されたクレジットカードです。それはまだ月賦払いが出来るクレジットブックのようなものであったり、紙製のものであったりと、今とはだいぶ仕様が違っていたようですが、60年には日本にも上陸しました。

世界初のダイナースクレジットカード

 まだインターネットも普及せず、現金での支払いが主流だった時代にカード1枚で買い物や食事が出来るなんて、ちょっと想像しただけでも疑いの目で見てしまいそうですが、当時、クレジットカードにとどまらず、お金にまつわる常識も刷新され続けていました。クレジットカードは、レストランやお店は後日、確実に現金を受け取れます。では、その現金は何を担保として、その価値が保証されているのでしょうか。当時、それは国際基軸通貨であるアメリカドルがその役割を担い、ドルは金と交換できることで貨幣経済が成立していましたが、71年に当時のニクソン大統領が突然、ドルと金の交換を止めてしまいました。いわゆるニクソンショックです。そのことにより1ドル=360円という固定相場制が崩れて変動相場制に移行したり、何かと混乱はあったようですが、それでも世の中が回ってしまうのが面白いところです。

雷神の姉妹店・MenyaRAIZOのロゴ

 話は変わって、今年の8月にバンクーバーでざっ串グループのラーメン屋の新ブランド「Menya RAIZO」がオープンいたしました。北米の豚骨一辺倒のラーメン業界に一石を投じたく、鶏ベースのあっさりスープと全粒粉を使った生麺が売りのラーメン屋です。

 このRAIZOですが、現金での支払いを一切お断りし、おそらく北米では初のクレジットカード・デビットカードオンリーのラーメン屋です。新たな挑戦にはなにかとトラブルが付き物ですが、ブレイクインされるリスクは減り、人為的なミスやキャッシュを数える手間は大幅に減少しコストの削減にもつながり、今のところ業務上なんの問題も出ていません。

RAIZOのチキンクリアスープベースの旨み塩ラーメン


 2015年からFinancialとTechnologyを組み合わせた造語であるFintechという言葉が広がり、それ以降ビットコインなどの仮想通貨が一気に普及し、仮想通貨ベースの資金調達手段ICO(Initial Coin Offering)が盛り上がりを見せ、今後はお金や経済の在り方が大きく変わっていく事はだれの目にも明らかになりました。大体こういった新しい概念やサービスが生まれると世間の論調は「最先端の技術を利用した素晴らしいサービス」というものか、「そんな常識外れな怪しいサービスはあり得ない」というように二極化するようです。イギリスの作家・ダグラスアダムスが的を得た言葉を残しているので最後に紹介します。

 〝人間は、自分が生まれたときにすでに存在しているテクノロジーを、自然な世界の一部と感じる。15歳から35歳の間に発明されたテクノロジーは、新しくエキサイティングなものと感じられ、35歳以降になって発明されたテクノロジーは、自然に反するものと感じられる。〟


「雷神」共同経営者 兼 店長 吉田洋史

ラーメントークはもちろん、自分の興味や、趣味の音楽、経営の事や子育てのことなど、思うままにいろんな話題に触れていきます。とは言え、やはりこちらもラーメン屋。熱がこもってしまったらすいません。