第5回 「How to be a King of Ramen」|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中

 前回のコラムでは、ラーメン王になると大口を叩いてみましたが、今回はその具体策であり、自分のラーメン屋としてのキャリアの最終ゴール地点を描いてみたいと思います。

 10年かかるか、20年かかるかという構想で、まだまだ頭の中での話ではありますが、ラーメン・インスティテュートという名の体験型のアミューズメント・ラーメンパークとでも言いますか、とにかくまだ世界のどこにもないラーメン屋の新しい形を考えています。エントランスは小さく、昭和のラーメン屋を思わせるトタンの壁と赤いラーメンののれんが掛けてあります。のれんをくぐると通路があり、両サイドの壁は巨大なラーメンのレシピ集やラーメン関連の書籍で出来ていて、その間を通って店内に入る作りとなっています。ラーメンの歴史やご当地ラーメンの系譜などを見ながら、そこには手に取れるサイズの様々なラーメンレシピも置いてあり、お客さんは自分の気になるレシピを持っていくことが出来ます。この店内に入っていく過程は、東京ディズニーランドのプーさんのハニーハントから着想を得ているのですが、ハニーハントはプーさんの原作“Winnie the Pooh”の物語の中に入っていく構造になっているのに対し、ラーメン・インスティテュートは通路を抜けてキッチンに入っていきます。


 キッチンには、スープ、タレ、香味油、麺、トッピングとそれぞれのセクションがあり、お客さんは通路で手にしたレシピを基に、順番に指定の食材をどんぶりに入れていくと、レシピ通りのラーメンが完成するという仕組みです。まずはお客さんには色々なレシピを試してほしいです。自分のお気に入りを見つけたら、少しずついじって味の変化を楽しみ、オリジナルの組み合わせにもチャレンジしてもらいたいです。やったことがある人も多いと思いますが、ファミレスのドリンクバーでオリジナルのミックスドリンクを作るように、オリジナルのラーメンを創作し、最終的には、カスタマーオリジナルのレシピも通路に並べ、それを食べたお客さんのフィードバックも、レシピの創作者にいく流れを作ろうと思っています。


 自分のラーメン屋のキャリアは皿洗いからですが、キッチンのオペレーションの構築、クレーム処理やカスタマーケア、従業員のマネージメント、新店の立ち上げ、経営などなど、10年以上この業界に身を置いて様々な仕事にチャレンジしてきましたが、何と言っても一番ワクワクして面白いと感じるのは商品開発です。ラーメン・インスティテュートはラーメンを売るのではなく、この商品開発の疑似体験、すなわち失敗の悔しさ、美味しいラーメンが出来たときの喜び、それをお客さんに食べてもらって美味しいと言ってもらえるまでの、ラーメンの創作の楽しみを味わってもらうための施設です。

 飲食店のビジネスモデルは、食材を買ってそれを調理して付加価値をつけて売る、その付加価値の部分が利益として返ってくるという非常にシンプルなモデルです。ラーメン一杯で数ドルの利益が出るというわかりやすさと、お金を稼ぐリアリティが感じられる点で僕は飲食業が好きなのですが、時代の流れとともに、飲食店の収益構造も変化してきています。このラーメン・インスティテュートも、お店が商品を開発し、お客さんがお金を払って食べるという常識を真逆から捉え、お客さんが商品を開発し、自分で作る体験、一連のストーリーに対してお金を払うという点で、これまでの飲食店の形とは一線を画しています。

 このラーメン・インスティテュートを、いつの日かキング・ストリートに作りたいと思っています。平日は金融街のビジネスマンがランチミーティングなどに使う際、ぜひオリジナルのラーメンを話のネタにしてもらい、週末は家族連れが様々なラーメンを創作してにぎわう、そんな世界に類を見ないラーメン屋をトロントにいつの日か、というのが今のところのゴール地点です。Ramen on Kingをこの手で作り上げ、ラーメン屋の常識をひっくり返し、King of Ramenになる!というダジャレの様なオチですが、ご納得していただけましたでしょうか?はい、お後がよろしいようで。


「雷神」共同経営者 兼 店長 吉田洋史

ラーメントークはもちろん、自分の興味や、趣味の音楽、経営の事や子育てのことなど、思うままにいろんな話題に触れていきます。とは言え、やはりこちらもラーメン屋。熱がこもってしまったらすいません。