第8回 キャッシュレス社会の到来?|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中


 みなさんこんにちは。ラーメン雷神のヒロシです。前回は趣味のiPhone DJの話をしましたが、今回はまじめに、これからのお金の話をしたいと思います。第3回のコラムで、バンクーバーにある雷神の姉妹店Menya RAIZOが、キャッシュレスのラーメン屋としてオープンした話をしましたが、この2月からトロントの雷神もキャッシュレスに踏み切りました。ただ、事前に店内やSNSで告知をしたところ、ネガティブな反応も少なくなかったというのが正直なところです。ちゃんと理由を説明したところ、お客様のご理解も得られて、事態は収束に向かいましたが、お客様に対する想像力が欠けていたと深く反省しました。

 雷神が所属するざっ串グループ内のいくつかの店舗も、この2月からキャッシュレス化に踏み切っていますが、僕たちがキャッシュレス化を進める最大の理由は、従業員の安全を守るためです。キャッシュがお店にあるかぎり、ブレイクインのリスクは無くすことができません。実際、夜中にブレイクインされたこともありますし、従業員が危険な目にあったこともあります。従業員の安全を守ること、それが僕たちの最重要事項です。

 加えて、現金を数える業務は毎日あります。当然、ミスも起こるし、その度に従業員の負担は増えます。それも減らしてあげたいとも思っています。さらに、雷神ではキャッシュでお支払いをするお客様は、5年前は40%ほどでしたが、今やそれがなんと3〜6%にまで落ち込みました。このパーセンテージの移り変わりが、雷神のキャッシュレス化への後押しとなったことは言うまでもありません。現金主義のお客様の意見はとても良く理解できますが、ご理解いただけると嬉しいです。

 キャッシュレス化がなかなか進まないと言われる日本も、最近では事情が変わってきたようです。ソフトバンクとヤフーが共同出資して設立したQRコード決済サービスPaypayが、総額100億円分のポイント還元キャンペーンを打ったのは記憶に新しいところです。ペイペイを使って決済すると20%のポイントが還元されるというキャンペーンはわずか10日間で100憶円に到達し、大手家電量販店の売り上げや株価にも好影響を与えました。キャッシュバックという言葉が死語になる日も近いのかもしれませんね。


 ただ、キャッシュレス社会といえば、数年前にGDPで日本を抜いて爆進中の、おとなり中国でしょう。財布を落としても使わないから一週間気づかなかった、なんて嘘のような本当の笑い話もあるくらいで、それほど中国ではスマホでの決済が主流となってきています。中でも、アリババ社のQR決済サービスAlipayと、そのライバル、テンセント社のWeChat payが、QRコード決済の二強として広く知られています。昨年11月11日、中国版アマゾンのアリババが仕掛けたショッピングイベント「独身の日」セールでは230の国や地域が参加し、24時間でおよそ3兆5100億円を売り上げました。額が大きすぎてピンときませんが、日本国民1億2千万人がAmazonで使う1年間の金額がおよそ1兆3千億円ですから、その莫大な規模の大きさがうかがえます。何がすごいって、アリババはビザカード、マスターカードをはるかにしのぐ決済データをものすごいスピードで自社でさばいているわけです。そういった強固な決済システムに裏付けられたQRコード決済が世界中に広まるのは、抗えない世界の大きな潮流なのでしょう。

 ひとつ大きな心配は、スマホをなくしてしまったら、という点でしょうか。ただ、いずれはスマホ決済さえも時代遅れのものとなり、網膜や指紋なんかと個人の預金データなどが紐づいて決済ができるなんてサービスも出てくるのかもしれません。そういった時代が訪れることがあるとすれば、お金という概念そのものが、今とは違ったものになっていることでしょう。


「雷神」共同経営者 兼 店長 吉田洋史

ラーメントークはもちろん、自分の興味や、趣味の音楽、経営の事や子育てのことなど、思うままにいろんな話題に触れていきます。とは言え、やはりこちらもラーメン屋。熱がこもってしまったらすいません。