第9回 嫌われ者の「MSG」、みんな大好き「UMAMI」成分|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中


 トロントのママさんサークルで開催された、手作り味噌や麹をつくる講座に参加してきました。ママさんたちに囲まれて気後れしながらも、パパ一人で参加した甲斐があり、発酵食品の奥深さを学び、うま味についての知識を深めることが出来ました。

 日本は醤油や味噌の発展も含め、世界にも類を見ない独特な食文化を築いてきました。うま味を熟知し、相乗効果などを最大限に生かしたラーメンは、その英知を結集させた一品と言えます。ただ、化学調味料やMSGへのネガティブイメージもあり、ラーメンに対する不健康なイメージをぬぐい切れないのも現実です。というわけで今日は「うま味・MSG」のお話です。

 サイエンスライターの川口友万さんの言葉を借りると、ラーメンとは「アミノ酸と核酸を含む塩化ナトリウム溶液に糖質とタンパク質を主とした結着組織を浸漬させたもの」に過ぎません。そしてこの「アミノ酸と核酸」というのが他でもないうま味を指しています。

 食品添加物や成分表を多少でも気にする人なら分かると思いますが、このアミノ酸とは昆布などに多く含まれるグルタミン酸ナトリウム、英語ではMono Sodium Glutamate、すなわち「MSG」です。日本の成分表では「調味料(アミノ酸)」と表記されていて、醤油からポテチなどの菓子類まで、実に様々な食品に含まれています。

 では、この嫌われもの「MSG」、いわゆる化学調味料と、コンブなどから抽出した天然由来のグルタミン酸ナトリウムは何が違うのでしょう。実はこの二つ、成分としては全く同じです。ただこの「成分としては」というのがポイントで、天然由来のコンブダシにはカルシウムや鉄分などのミネラルが含まれているので栄養価には明らかな差があります。

 ラーメンに話を戻すと、90年代後半から2000年代前半にかけて日本のラーメン業界で無化調ブームが巻き起こりました。しかしこの背景には、化学調味料には分類されない、食品扱いの酵母エキスやタンパク加水分解物といった、化学調味料と並べて味覚破壊トリオと呼ばれる食品の存在もあります。

 だから一概に化学調味料不使用と言っても、実情は様々です。むしろ、ラーメン業界では有名な話ですが、ラーメンの鬼とも称された、志那そばや店主の佐野実氏のように、「知らないところで化学調味料が使われている可能性があるかもしれない」という理由で無化調をうたわない方がよほど実直な態度でお客さんと食品に対して向き合っているというのが自分の感想です。

 そういった理由で、最近では無化調ではなく、「化学調味料不使用」であるとか、No MSGではなく、「No MSG added」という、表記が主流になっています。アメリカではこの表記がないとモノが売れないとまで言われますが、この表記も言わば「市販の調味料や加工品に含まれているMSGに関しては正直わかりません、というか絶対入ってます」の裏返しですので、わざわざそれをお客様に宣伝するのも野暮ったいと感じてしまいます。

 僕がここで言いたいのは「MSG」は安全です、なんて事ではありません。あくまでもファクトと感想を並べただけで、「MSG」が有害だとも思っていません。ただ、MSGアレルギーで苦しむ友人もいますし、明らかに安価な99・9%のMSGをスーパーで見かけると、昔は主流だった石油由来のものでは?とか、残りの0.1%は何だろうと?と疑ってしまいます。

 それから、「MSG」は塩味や甘味と違って、過剰摂取しても味覚では気づきにくいという性質もあるため、注意が必要です。醤油をがぶ飲みしたら、体に何らかの変調をきたすのと同様、何でも過剰摂取はよくありません。ただ、最近はやりの悪魔飯、チートデイといった、あえて普段気を付けている食品を解禁する風潮を見てもわかるように、過剰な健康志向の揺り返しがやってきているのではと感じています。

「雷神」共同経営者 兼 店長 吉田洋史

ラーメントークはもちろん、自分の興味や、趣味の音楽、経営の事や子育てのことなど、思うままにいろんな話題に触れていきます。とは言え、やはりこちらもラーメン屋。熱がこもってしまったらすいません。