第11回 Perfumeとヒューマン・コンピューテーション|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中

 先日、クイーンエリザベスシアターで行われたPerfumeのライブに行ってきました。実に10年ぶり、5回目のPerfumeのライブでしたが、変わらぬダンスのクオリティと、最先端テクノロジーを駆使したステージングに圧倒されました。

 10年前、ポップアイドルとしてキャリアをスタートした彼女たちが、テクノポップという新ジャンルに路線変更していく真っ只中で、その音楽的な実験や三人を取り巻くPerfumeというコンセプチュアルな現象にハマり、日本で通い詰めたライブでの光景が蘇りました。当時、アイドルとは汗をかきながら笑顔で元気いっぱいに歌を歌うもので、一方で、売れるためにパーソナリティを押し殺して、事務所が作ったキャラを演じるという負の側面も抱えていました。

 Perfumeはそのアイドルのイメージを逆手に取り、操り人形やロボットといったモチーフを積極的にダンスに取り入れ、無表情で感情を乗せずに歌うというスタイルを、Perfumeのオリジナリティとして昇華させました。近未来三部作と呼ばれる、「リニアモーターガール」、「コンピュータシティー」、「エレクトロワールド」で、徐々にその電脳的世界観を拡張し、続く「ポリリズム」では、薄められていく彼女たちの人間的な魅力や想いが、「ほんの少しの僕の気持ちはキミに伝わる そう信じている」という歌詞に表れ、ビッグアーティストへの階段を登りながらも、「ほんの少しのキミの思いは無駄にならない そう信じている」と、ファンと三人の心のつながりを歌い上げ、アイドル市場だけでなく、クラブカルチャーにいる新たなファンを獲得していきました。

 無機質な音楽から滲み出る人間性が不思議とアンプリファイされるのがエレクトロミュージックの魅力の一つだと思いますが、彼女たちのパフォーマンスを見ていると、そのダンスや全体の構成の緻密さゆえに、Perfumeさえもが計算されたプログラムのピースであるかのような錯覚に陥いります。実際、彼女たちのパフォーマンスに、アドリブや偶然性が入る余地はなく、事前に決まったディレクション通りに動くことが求められています。

 これと似たようなことが、いまこの世界で起こっています。

 大手外食チェーンやレストランでは、予約やダインインのお客さんをコンピュータを通じて席効率もふまえて管理し、今までの人間同士の注文に加え、アプリやディスプレイで注文を取り、機械が調理工程や順番を管理し、人間はコンピューターがはじき出した最適解をディレクション通りに動けば良いという世界です。ウーバーやフードデリバリーもその類のサービスで、一見するとそういったサービスのシステムの下では、少々過激な言葉ではありますが、人間はコンピュータの下請けのようなものです。このような分野をヒューマン・コンピューテーションと呼びますが、すでにチェスや将棋の世界では人間はコンピューターに勝てないのは周知の事実であり、この先、人間とコンピューターの指示系統の逆転現象はさらに加速していくでしょう。

 人間がコンピューターの下請けになる、なんて言ってしまうと、なんだか悲観的になってしまいそうですが、それは決して悪いことではありません。なぜなら、考えなくても手を動かしさえすれば仕事が成り立ってしまうからです。これは、頭で考える前に手が動くという、職人的な仕事のスタイルにも通じます。圧倒的な時間に裏打ちされた経験や勘、反復作業なしに、テクノロジーがそのサービスや商品のクオリティを担保してくれるのなら、この10年でPerfumeがワールドクラスのアーティストに成長したように、人間はさらに想像力をふくらませて新たな領域にいけるのではないでしょうか。

「雷神」共同経営者 兼 店長 吉田洋史

ラーメントークはもちろん、自分の興味や、趣味の音楽、経営の事や子育てのことなど、思うままにいろんな話題に触れていきます。とは言え、やはりこちらもラーメン屋。熱がこもってしまったらすいません。