第13回 盛り上がるフードテック業界とオルタナティブな選択肢|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中

 先月、カナダ全土のTim Hortonsおよそ4千店舗で、新商品のブレックファーストサンドが発売されました。アメリカのビヨンド・ミート社が開発、製造するパティを用いたこの商品は、なんとお肉を全く使っていない植物由来の人口肉で出来ています。値段は通常の商品より1ドルほど高いくらいで、見た目は言われてもわからないくらい肉の質感に近く、肝心の味はというと、これも知らずに食べれば気づかないくらい違和感はありませんでした。

 アマゾン傘下のホールフーズ・スーパーマーケットでは、今やどこの店舗にも肉に代わる商品という意味でAlternativeという植物肉のコーナーがあります。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツやアマゾン創業者のジェフ・ベゾス、俳優で環境活動家としても知られ自身もヴィーガンであるレオナルド・ディカプリオなど、そうそうたる面々がいまこのフードテック業界に巨額の資金を投じています。今回はこのフードテック業界の中でも、特に目立った動きを見せているミートフリーな人口肉について書いてみたいと思います。

ホールフーズのAlternativeコーナー

 まずは、なぜこのタイミングで人口肉が盛り上がりを見せているのかという点ですが、ビーガンやベジタリアンが増えているから、という背景ももちろんこのムーブメントを後押ししていると思います。

 ただ、ヴィーガンやベジタリアンはアメリカやヨーロッパでは急増していますが、一人当たりの肉の消費量はあまり変わっていないのが現実で、世界的に見て肉の消費量はむしろ増加しています。これは途上国が経済成長で肉食化が進んでいることに加え、人口増加が大きな理由です。いま世界の人口は70億を超えたぐらいですが、2050年には100億人に達し、食糧は今の1.7倍の量が必要になるそうです。

 現在、生産された食糧の三分の一が廃棄処分されるという悲しい現実がありますが、たとえこれをゼロにしても、人口増加による食糧難は解消されません。そこでこの人口肉の機運が高まっているのだそうです。

Timの植物肉パティ

 ところでこの人口肉、2種類に大別できるのをご存知でしょうか。一つは先ほどから話に上がっている植物肉。カップヌードルの謎肉の原料としても知られる大豆ミートや、中華系スーパーで売られている肉もどきという意味の素肉などもこの広い意味でこの植物肉に含まれますが、最近は見た目だけでなく、味や食感、香りに至るまで、生のビーフパテのような生肉状態で肉のコーナーで売られていたり、焼けば肉汁も出るし、赤い肉がちゃんと褐色になるなど、そのクオリティは格段に上がってきています。

 もう一つが細胞培養肉といって、本物の動物の細胞を採取し、培養液で細胞を増殖させるというものです。これは成分的には肉そのもので、動物を殺処分しなくても肉が食べられるという大きなメリットがある一方、商品化はまだまだ難しいところで、何と言っても課題はコストです。

 2013年、グーグル創業者セルゲイ・ブリンの支援で生まれた世界初の人工肉は200グラムでおよそ35万カナダドル、現在は同じ量で1700カナダドルぐらいまでコストダウンしたようですが、それでも一般的に流通するには時間がかかりそうです。

 培養液が高い、というのが一番の理由だそうですが、スティックのりのアラビックヤマトが数万円の培養液に代わって、白血病の治療に用いられる造血幹細胞の培養に成功した、などという驚きのニュースもある世の中です。いずれは必ずこういったテクノロジーが介入した食肉が、食卓に並ぶ日が来ることでしょう。

「雷神」共同経営者 兼 店長 吉田洋史

ラーメントークはもちろん、自分の興味や、趣味の音楽、経営の事や子育てのことなど、思うままにいろんな話題に触れていきます。とは言え、やはりこちらもラーメン屋。熱がこもってしまったらすいません。