第17回 「ラグビー・カナダ代表の行いに寄せて」|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中

 日本を直撃した史上最大規模の台風19号・ハギビスの影響で、ラグビーのカナダ代表チームはナミビア戦が中止となり、戦わずして無念のグループ最下位が決定しました。予選を敗退した代表チームが、そのまま岩手県釜石市に残り、ボランティアで泥の掻き出し作業に参加してくれた事は、カナダが好きでこの国に住み、在留日本人や日系カナディアンとして生きる私たちにとっては、すでにご存じの事と思います。

 家族や友人たちと離れてカナダで暮らしている私たちにとって、今回のような災害時には、大切な人たちを心配するのはもちろんのこと、無力感を感じてしまったり、安全なところに暮らしていることに罪悪感を感じてしまったり、言いようのない感情が押し寄せます。今回の代表チームの行動は、そういったいかんともしがたい状況を吹き飛ばしてくれるようなニュースでした。ラグビーワールドカップのツイッター公式アカウントは今回の件に対して「カナダの選手は試合の真価をしめした(“Rugby Canada players ~ showing true values of the game”)」とコメントしましたが、ワールドカップという最高の晴れ舞台において、試合には負けたものの、勝つことにも勝る結果、まさにスポーツの真価を見せたのではと思います。

 スポーツにおいて勝つことが目的ではないのと同様、ビジネスにおいても儲けることが目的ではありません。儲ける、すなわち利益は、人間の血液のようなもので、それがなければ企業は死んでしまいます。でも、私たちが生きること自体を生きる目的としていないように、企業も利益それ自体が目的ではないのです。

 人が心身共に健康体でどう生きるかが重要なように、企業もうまくお金をやり繰りして社会に何をもたらすかが重要です。常日頃、効率や数値管理といったことをスタッフに口うるさく言っているので、彼らからしたら矛盾しているように聞こえてしまうかもしれませんが、それもやはり、個人の成長、ひいては企業の成長、そしてその先に、世の中に何をもたらすのか、という観点があります。

 そういった意味では世界を変えるということは意外とシンプルで、私が変わり、周りが変わり、世界が変わるという単純な方程式ではないでしょうか。

 では、私たちざっ串グループに何が出来るのだろう、ということを先のニュースを受けてみんなで考え続けていました。社長、本部、マネージャー、広報部、現場のスタッフと様々な意見を出し合い、結果、串が1本売れたら10セント、ラーメンが1杯売れたら15セントを被災地に募金することになりました。その過程で、一つだけ残念に感じてしまったことが、時事ネタにかこつけた販促に見えないように配慮をしなくてはいけない点でした。

 情報を発信することが容易になった反面、中途半端な振る舞いで図らずして世の中を敵に回すリスクは常に感じています。ただ、ソーシャルグッドに横やりを入れるのはいつだって無邪気な邪気だったり、単純な妬みだったりというところです。結局、何をやったところでそういったリスクがゼロになることは無い以上、開き直るしかないのでしょう。今回、あえてこのコラムで裏事情を書いたのも、そういった理由からです。

 被災地の復興が一日も早く進むよう、心よりお祈り申し上げます。

「雷神」共同経営者 兼 店長 吉田洋史

ラーメントークはもちろん、自分の興味や、趣味の音楽、経営の事や子育てのことなど、思うままにいろんな話題に触れていきます。とは言え、やはりこちらもラーメン屋。熱がこもってしまったらすいません。