カナダ育ちと日本育ち それぞれの日本人正規生の思考に迫る|特集 トロント大学「U of T」

日本育ち代表:土居輝誉彦さん
商学部でマーケティングを専攻する3年生

カナダ育ち代表:浜崎会世さん 
ジェンダー学を専攻する3年生

ー専攻で学んでいること、感じていること

日本では「Me」より「We」の方がしっくりくる

浜崎:ジェンダー学を専攻した理由は、一年時に専攻した授業で初めて知ったことが多く、「今の社会を見るのにいい学部だ」と考えたからです。ジェンダーに関する歴史も学べますし、「普通」と言われていることがなぜ「普通」なのか、など考えるのが面白いです。

 三年生になるとクラスも最大40人ほどと小さくなり、内容も専門的になります。例えば、ルネッサンス期の性とジェンダーについて一年間学ぶ授業もありました。最近では、カナダに在住するアジア人についてのドキュメンタリーを授業で制作しました。制作するにあたり、カナダのテレビに映るアジア人のステレオタイプや、実体験など様々なお話を伺いました。

 学校外では、2017年にレイプを公に告発した伊藤詩織さんにも影響を受けました。日本のレイプに関する法律は長い間不充分で、伊藤さんの制作したドキュメンタリーや本により運動が広まり、最近になりようやく法も改正されました。世界的には「Metoo運動」と呼ばれていますが、日本では 「Wetoo運動」と言われています。伊藤さんが公表したことで批判を受けたことでもわかるように、日本では個人を主張するとバッシングが来るので、「Me」より「We」の方がしっくりくるのではないでしょうか。

 また、日本ではジェンダーの差別により給料が大きく変わることが多く、「女の子は結婚したら仕事しなくていい」という概念も残っています。カナダではそれが「普通」ではありません。ただ、そういうことも日本を外から見ているからこそわかることだと思います。

トロント大学は教授との距離が近い

土屋:一年生の時に三つの分野(ファイナンス、アカウンティング、マーケティング)の授業を取りましたが、その中で進んで勉強してみたいと思えたマーケティングを選びました。一、二年生の時は経済学などセオリーを学ぶことが多かったのですが、三年目は学んだものを実際のビジネスシーンに応用する実践的な内容の授業が多いですね。価格設定や、データを基にしたターゲットの選定など、前年までに学んだマーケティングのモデルを用いることもあります。他にはプレゼンや、実際あったケースをもとに作られた問題集についてクラスのみんなと議論したりします。

 日本の大学と比べて、トロント大学は教授との距離が近いのではないかなと感じます。私の学部だと一クラス20人ほどです。また、コマースを学ぶことで、世の中を見る目が変わったり、意識的に考えたりするようになったと実感しています。

 広告について学んだ際には、街に溢れかえっている企業の広告について「どういう意図でこの広告にしたんだろう」と疑問に思うこともありますし、心理学を学んだ際には、企業など組織内の文化について考えさせられます。

ー子ども時代に感じたカルチャーの違い

楽しんじゃダメ、ちゃんとやらなきゃと思った日本の学校体験

浜崎:生まれは日本ですが、五ヶ月の時にバンクーバー、三歳の時にトロントに来たので人生のほとんどをカナダで過ごしています。父は日系カナダ人、母は日本人で、家では日本語しか話していなかったのですが、外ではほとんど英語でした。
 幼稚園から中学二年生までは、毎年日本の学校に二ヶ月間体験入学していました。そこで、カナダの学校との違いをすごく感じました。

 日本の教室では席が二席ずつに決まっており、先生が教室に入るとそれまで騒がしかった教室もビシッと静まる印象があります。「楽しんじゃダメ」、「ちゃんとやらなきゃ」と思いましたね。

 一方、カナダの学校では先生もフレンドリーですし、生徒とも対等に接してくれます。日本の先生ももちろん、一人の生徒として接してくれますが、今になって考えてみるとカナダより接し方が一律だなと感じます。カナダでは個性を大切にしますが、日本では「同じではないとダメ」と言われている気がします。

外国から来た自分を受け入れてくれている姿勢を感じることができた

土屋:高校一年生の時にバンクーバーのナナイモに交換留学しました。カルチャーショックは良くも悪くもありましたが、日本と違って周りの人がとてもフレンドリーで、日本人の私にも気さくに話しかけてくれたことが印象に残っています。周りのみんなが私のことを受け入れようとしてくれている感じがしました。

ー日本で育った日本人・カナダで育った日本人

ホンネで接してくれていない?!

浜崎:トロント補習授業校では両親の都合でカナダに来た日本人にもたくさん出会いました。中には英語が話せない人も多く、現地校になれるのが大変そうだなと感じました。

 また、日系のお店でアルバイトした際には、日本の縦社会など、カナダでは経験したことがなかった文化の違いを感じました。思っていることを口に出さず、本音で接してくれてないと感じることもありました。

育った場所問わずみんな個性がある

土屋:トロント大学の日本人はみんな個性的で、それぞれの分野で活躍しそうな人たちが多いと思います。カナダ育ちの日本人とはお互いの文化が違うと思ったことはありません。

浜崎:カナダでは人種や国による差別が全くないわけではありません。私も白人しかいないところで育ち、たとえ英語が話せてカナダで育っていても、「自分はカナダ人とは認められないのだな」と思うことも多々ありました。カナダのように多様な人種が共存している国にいるとそういうことに敏感になってくる気がします。

 一方、日本で育てば「自分が日本人だ」と意識をせずとも日々の生活を送ることができます。そのため、最近カナダに来た日本人を見ていると些細な人種差別的発言をされても気づかない人が多いなと感じます。

ー将来の展望

浜崎:企業で働くということは、社会を見直したり、なりたい自分に少しでも近づく努力をしたりすることだと思います。将来的には、大学で勉強しているジェンダーの分野で仕事に関わることができればいいなと思っています。

土屋:MBA取得も考えていますが、就職は日本と一年生の時から決めています。両親が茶道をしており、将来的には家を継ぐ予定です。

 将来は日本で過ごす時間が必然的に長くなるので、学生のうちに海外に出て文化に触れ、様々な人と出会うことが重要なのかなと思いました。両親もそういう意味でIB(国際バカロレア)を実施している高校に入学させてくれたのだと思います。

ー海外への進学を考えている日本の高校生に向けて

土屋:チャレンジを恐れず、自分が行きたいと思った道を進めばいいと思います。周りに流されることもあると思いますが、時にはそれを押し切って自分の道を進むことも大切だと思います。

ーカナダで育つ日本人学生に向けて

浜崎:日本にいる時ほど周りを気にせず、本音で語り合うことが出来れば、本当の友達が出来ると思います。自分の意見が相手の意見と異なっていても、話し合うことで相手も認めてくれます。カナダは「英語が下手」という理由で他人を馬鹿にする人が少ないので、もっと英語を話して、視野を広げていけばよいと思います。