世界女酒場放浪記 #04

日本酒利酒師 松本真梨子が行く世界酒場放浪記

第4回「日本酒の魅力③ 一麹二もと三造り」

大きなタンクに酒母と水、麹、蒸米を入れて約20~30日間かけてアルコール発酵をすすめていく“醪(もろみ)”造り

大きなタンクに酒母と水、麹、蒸米を入れて約20~30日間かけてアルコール発酵をすすめていく“醪(もろみ)”造り

前回まで、お米を糖に変える“麹(こうじ)”造り、作られた麹と水、蒸米、酵母、乳酸菌をいれアルコール発酵が上手くいくよう「もと」となるものを作る“酒母(しゅぼ)”造りと説明しましたが、今回は大きなタンクに酒母と水、麹、蒸米を入れて約20~30日間かけてアルコール発酵をすすめていく“醪(もろみ)”造り(醪の事を別名“造り”ともいいます)についてお話ししたいと思います。

さてさて、醪造りですが、3回に分けて仕込む三段仕込が基本となります。なぜ3回に分けて仕込んでいくかには、きちんと理由があります。日本酒のタンクの写真を見たことがある方はわかると思いますが、基本的に蓋がないタンクで仕込む為、空気中の雑菌や野生酵母が常に入ってしまう恐れがあるのです。ここで一気に全量仕込んでしまうと、せっかくたくさん培養した酵母が薄まり酸度が下がる為、雑菌や野生酵母が侵入してしまうわけです。つまり、アルコール発酵がうまくいくように作った酒母造りが台無しになってしまいます。それを避けるため、3回に分けてゆっくり仕込んでいきます。(説明は省略しますが三段仕込も特別な行程がありこれまた複雑!)仕込みの期間も日ごとにサンプルをとり、糖度や酸度、アルコール度数を測ったり温度を調整したり、もちろん数字だけでなくタンクを見て目で状態を確かめ香りをかぎ混ぜ味をみて…こうして日数をかけて理想となる状態にもっていき、ついに醪を濾過していく“絞る”段階まで到達するわけです。

日本酒造りにおいて『一麹、二もと、三造り』ということわざがあります。製造流れと同時に、酒造りの重要度を示しています。そのくらい三回にわたってお話しした工程は大切だという事です。
何度も言いますが、お酒造りで実際働くのは菌。たとえ同じ材料でもひと作業、ひとタンクごとに異なっていくので、毎日手をかけていかなければいけません。お酒はまさに生き物であり、それをサポートしていく蔵人のすごさを身に染みて実感する事が出来ました。長年の経験、受け継がれていく知識、一定期間蔵人が同じ釜の飯を食べ働きながら培われていくチームワークと美味しいお酒を造りたいという志なしに日本酒造りは語れません。
日本では、もうお花見の季節ですね!上野界隈が恋しい今日この頃です。トロントでは桜の木の下でお酒は飲めませんが、室内で一杯いかがでしょう?日本酒の奥深さを感じながら…


松本 真梨子
築地生まれの江戸っ子。食にこだわるスーパーマーケット成城石井で8年間勤務し、本店のお酒担当主任兼副店長を経験。日本酒利酒師、ワインアドバイザー、ウィスキーエキスパート、テキーラマエストロの資格を持つ、自称ノム(呑む)リエ。2014年3月に渡加し、現在、昼は酒蔵CANADA、夜はKoyoi North Yorkで働く。