世界女酒場放浪記 #11

日本酒利酒師 松本真梨子が行く世界酒場放浪記

第11回「これを知ればあなたの味覚の世界が絶対広がる!“季節と旬とお酒”」

こんにちは!今年もあと2ヶ月で終了…早いですね~11月がやってまいりました。トロントはもう既に相当寒いのではないでしょうか?10月のガラパゴス&コロンビア(ボゴタ)旅行から戻り、私はまたチリにおります。チリは南半球なのでカナダや日本とは季節が逆!これから訪れるクリスマスや年末、新年が暑いなんて何だか変な感じがしますが、真逆の季節というものを今年は楽しんでみたいと思います。
『世界おんな酒場放浪記』 sekaionnasakaba.ciao.jp

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さてさて、11月といったらボージョレ・ヌーヴォ!11月の第三週目の木曜日が解禁日となっており、フランスのボージョレ地区産の今年の葡萄で作ったワインを売り出す日です。今年のできたての味を楽しむワインの祭典ですね!!実はイタリアにも同じような習慣があり、ヴィーノ・ノヴェッロという新酒のワインが10月30日に解禁されます。先月号でお話ししたように10月1日は日本酒の日。かつては新酒を作り始める日とされており、11月の後半あたりから製品化された新酒が市場に出回ります。まだあまり知られていませんが11月1日は焼酎の日。この時期に新焼酎が発売されることからこの日になりました。

前置きが長くなりましたが、お酒には「旬」があります。特に醸造酒で季節がはっきりしている国…そう日本酒です!!日本酒は、それ単体で四季を感じる事が出来るくらい、季節と密接に関わっています。お酒造りは伝統的に気候とあわせて造ると10月~3、4月(北の寒い地域の蔵では5月で終了する蔵もある)の約半年が醸造期間となっています。

まず9月中旬から末にかけて新米がとれるので、そのお米を使い10月造りがはじまります。そして11月~12月にかけて『しぼりたて』が出ます。しぼりたては、出来たお酒をそのまま絞ったものでまさに新酒の中の新酒!最近では「日本酒ヌーヴォ(ヌーヴォはフランス語で新しいという意味)」なんて言って売られていたりします。熟成させていない分、味がやや荒いですが、そこが「今まさに出来た!」という生き生きとした若い味わいを楽しむ事が出来ます。

春を迎えお酒造りが終わりとなる4月頃から6月頃にかけて『生酒』『生詰め酒』『生貯蔵酒』(厳密に言うと『夏の生酒(生詰め酒/生貯蔵酒)』)が出ます。通常お酒造りの終盤に2度加熱処理をするのですが、それを全くしない、もしくは1度しかしないでフレッシュな味わいを残したお酒のことです。定義に特定の季節は含まれていませんが、春、初夏~夏にかけて出荷されるこの類のお酒は、新酒を蔵で数か月ねかせてあるのでまろみを帯び、しぼりたてのような荒々しさがなくなっているのでスッと口の中に溶け込みます。加えて加熱処理をしていない(減らした)フレッシュさを感じられることから、暑い夏にぴったり!清涼感が溢れ、夏野菜や鮎、ハモなどの夏のお魚と相性抜群です。

最後に9月になると『ひやおろし』が出荷されます。こちらは新酒をさらに夏の間も蔵の中で寝かせ熟成させたもの。ひと夏越し味がのってまろやかになったお酒は旨みがたっぷり!!円熟の味わいは、キノコや脂ののったサンマにジビエなどしっかりした秋の旬の食材とベストマッチです。

日本酒の1年を理解し、季節によって旬の日本酒と旬の料理を味わう楽しみを覚えると、あなたの味覚の世界は120%…いや150%くらい広がります!私の場合、しぼりたてを飲むと『師走の忙しい時期がこれからやってくるから、この若々しい味わいから元気をもらってもうひと踏ん張り!よしやるぞ!』という気持ちになったり、ひやおろしを飲むと例えまだ9月で暑くても秋を感じ『日本酒もひと夏越したけれど私のこの1年はどうだったかな?』と新年の前に1度日本酒と共に振り返ってみたり、とそんな楽しみ方もしています。

トロントだと日本酒の種類は限られてしまいますが、日本に帰国する機会があればその素晴らしさを改めて体感して、カナダにその経験を持ち帰ってくださいね。あなたの味覚の世界が広がりますように…今宵も乾杯!!


松本 真梨子
2014年に渡加し、日本酒・焼酎インポーター酒蔵CANADAで営業と居酒屋KoyoiNorthYorkでマネージャーを経験。現在中南米を中心に飲み歩き珍道中。