ソーシャルワーカー、キャシーさんに訊く!LGBTのホンネのトコロ。

トロントのLGBT事情のホンネ・タテマエ。ソーシャルワーカー、キャシーさんに訊く!LGBTのホンネのトコロ。
トロントを拠点に活動しているソーシャルワーカーのキャシーさん

トロントを拠点に活動しているソーシャルワーカーのキャシーさん

アメリカ大陸で初めて同性婚を合法化し、ゲイ、レズビアン、バイ、トランスジェンダー(LGBT)に開かれた街との印象が強いカナダ・トロント。

だが、そんなトロントにも甘ーいだけでない、様々な側面があるはず。そこでの今回はトロントのソーシャルワーカーで、トロントアジア系LGBTの若者向け性教育プログラムのコーディネーターを務めるキャシーさんに、LGBT事情のホントのトコロを赤裸々に語っていただいた。


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(左)LGBTイベントに参加した際に取った仲間たちと(右)LGBT、LGBT以外の人を対象にして公演を行うキャシーさん


トロントは本当にLGBTにオープンな街なのか?

ゲイと一言でいっても、いろいろな人がいます。例えばトロントにいるカナダ人のミドルクラス白人ゲイと移民したばかりのアジア系ゲイを比べた場合、日々の生活で打ち当たる障害にも違いが出てきます。宗教や学歴、収入といった文化や立場的違いによって、悩むことも多くあるのです。トロントがいくら多文化共生の街であるといわれていてもまだまだ課題は多く、人種差別もその一つです。人によっては、トロントが凄く住みやすい街に感じるかもしれないし、とても生きにくい街に感じることもありえます。さらに、ゲイコミュニティの中では見た目至上主義がけっこう強くて、日本でもそうですが、見た目が良ければゲイの中でのランクが高いという考えを持つ人もいます。トロントにはそれに加えて人種間の格差が入ってきて、例えばアジア人というだけで、白人より人気がなかったりします。それは友達づくりにも影響することがあって、そういった部分で、ゲイバーに行きにくいと感じる人もいるかもしれません。そして、トロントでも若い人にとってカミングアウトするのはやはりまだ大変。コミュニティグループにも、すごく勇気を出して来る人やまだ自分がゲイかどうかもわからないままに訪れるという子もいます。ゲイが住みやすい街だとよく言われますが、そういう部分もあり、そうでない部分もあります。

メディアの中のLGBT

Brand New Wayさんとコラボレーションして、日本の留学生やワーホリの方にワークショップやゲイタウンツアーもたまにしているのですが、参加者の皆さんがLGBTに対してオープンで、真摯に学ぶ姿勢があってすごく驚きました。日本はとても保守的だというイメージがあったので、すごく意外でした。日本でも最近ボーイズラブやおネエ系タレントなどメディアでの露出が増えているのでも、慣れてきているのかもしれませんね。
ただ、日本でもカナダでもメディアに出てくるLGBTの人たちは、ゲイの人だとイケメンでオシャレ、お金持ちでフェミニン。レズビアンだとマッチョで短髪というような単一的ですごくステレオタイプの人ばかりです。それが弊害となって、LGBTの当事者が「自分はこんなイメージではない」と困惑してしまったり、他の人がLGBTがみんながそういう風だと思ってしまうということが起こってしまいます。ステレオタイプは嘘ではないのですけど、真実の極一部を切り取っただけで、全体像が見えません。そのステレオタイプなイメージに当てはまらない人にとっては過ごしにくい環境を作り出してしまうのです。
固定観念を持って、興味本位で話してくる人も結構います。それもメディアの作り出したスタイリッシュなイメージが影響していて、ゲイベストフレンド(GBF)といったスラングもあるくらいで、ゲイ友達が欲しいという人が結構います。でも、「この人はゲイだから友達になりたい」と、ゲイという部分だけを見られるのを不快に感じる人も多いようです。そうやって相手を見るのは失礼ですよね。

経済的視点から成り立つゲイタウン

トロントにはレズビアンなど他のLGBTの方も数多く住んでいますが、Church & Wellesleyのエリアはゲイタウンとして有名です。日本でも新宿2丁目ではレズビアンクラブやバーが少なくてほとんどがゲイ向けのものです。トロントも同様で、これは男女の収入差も影響しています。ゲイ向けにクラブを営業した方がお金になります。トロントのゲイタウンにも今年の6月まで一件だけレズビアンクラブがあったのですが、それも残念ながら閉店してしまって、今はもうゲイバーしか残ってないです。レズビアンパーティも盛り上がっていますが、アネックスとかオジントン周辺などに場所を変えて行われています。また、ゲイタウンはオシャレエリアとして有名になって、今ではヤング通りより地価が上がっていて、老舗のゲイビジネスがどんどん閉店に追い込まれています。このまま縮小していくのは避けられないと思いますが、無くなってほしくないですね。

トロントではカミングアウトの必要がない!?

実はおもしろいことに、僕はトロントではゲイであることをほとんどカミングアウトしていないんです。自分からわざわざ言う必要がありません。例えばパーティとかに行って「今付き合っている人いるの?」と訊かれたら、「うん、彼氏がいるよ」といつも通りに振る舞っているだけで、大概は周りが察してくれます。ビックリされたり、質問責めにされるということもありません。日本にいるときは、長い付き合いの友人たちをカフェに呼び出して緊張しながら1時間以上自分がゲイであると説明していたのですが、トロントに来てからはそういったことはしてませんね。

観光イベントとして捉えられるプライドパレード

プライドパレードが、ある意味観光イベントとして捉えられることに対しては、プラスマイナスがありますよね。30年前のプライドなんていうのは、警察に弾圧されたり、他の人に石を投げられたりする中でデモ行進として歩いていたのが、現在は性の多様性を祝福するイベントとして行われるようになりました。その歩みというのは尊重するべきだと思います。ただ、今ではプライドパレードよりもスポンサーが目立っていたり、プライドがコミュニティのものではなくなってきています。コミュニティの中でもそれが駄目だと言う人もいれば、他の人にも知ってもらえる機会になるから良いというように意見が分かれているところなのです。私個人としてはバランスが取れていれば良いと思っていて、例えば、プライドがお祭りだと思っていろんな人が遊びに来るのは全然かまいません。一番大事なのは、プライドに来てもらって、そこでいろいろなことを学んで帰ってくれることです。プライドを観て、ただ裸の人が踊っている無意味なお祭りなのだと思って帰られてしまうと残念ですが。プライドはとてもステキな祭典だと思うので、トロントにいる人に限らず、みんなにぜひ来てもらいたいですね。


キャシー
カナダ、トロントのNPOであるACASに勤めるコミュニティソーシャルワーカー。トロントの若者にHIVのことやセーファーセックスのこと、セクシュアリティやジェンダーのことを学ぶ場を提供している。2008年に日本で大学を卒業後、トロントに語学留学し、2009年にトロントでカレッジを卒業、現在の仕事に就く。仕事の傍ら、ブロガー兼フリーランスライターとしても活動中。
Twitter:torontogay69
ACAS:http://acas.org