トロント交通事情の行方

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2015年、2016年とTORJAでも追い続けているトロント交通網に関する工事事情。各駅の工事が始まったThe Crosstownや完成目前と期待されるToronto-York Spadinaラインの延長計画を含むトロント市、ハミルトン市の交通網を拡充させる計画The Big Move。さらに6年連続で値上げとなったTTC運賃とPRESTO移行のタイミングなどについても注目。

完成は2021年秋へ延期。エグリントンライン“The Crosstown”

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Mt. Dennis(Weston Rd)からEglinton Aveを東に向かい、Kennedy駅までをつなぐ全長19㎞のエグリントンライン“The Crosstown”。Metrolinx社が打ち立てた、25年間にも及ぶ壮大な交通整備計画The Big Moveのプロジェクト第一段である。

The Crosstownは当初2020年完成予定とされていたが、現段階では2021年9月に延期されている。今回の延期の要因は、以前から指摘されていた長期間工事による騒音・振動に対する近隣住民の懸念や、地域コミュニティとの連携が思うようにとれていないことが関係しているようだ。つい先日も、Terranata Development社がThe Crosstown路線上のAvenue駅に地上15階建ての複合ビルを建設しようと過去1年以上に渡り、共同で計画してきたにも関わらず、The Crosstown工事遅延により、Metrolinx社が一方的にビル建設に反対するという一幕があった。

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また、使用が予定されている車両はBombardierが製造しており、昨年12月にやっと初めてのプロトタイプが納品された。この初代プロトタイプは本来2014年に納品されるはずだったことや、現在新型ストリートカーの納品が遅れるといったトラブルから契約破棄も視野に入れ、話し合いが続けられている。

これでもThe Crosstownは他のプロジェクトに比べ、トラブルが少ないのは事実で2015年9月に始まった第3フェーズのトンネル工事は昨年8月に終了し、これで全長10㎞に及ぶ全てのトンネル掘削が完了した。今後はEglinton Ave沿い全長19㎞にまたがる25駅の整備工事に焦点が当てられる。工事に伴い、交通規制が引かれているエリアもあるので、車を運転する人は定期的にアップデートを確認することをオススメする。

サービス開始後、年間利用者は5000万人にものぼると予想されているThe Crosstown。従来の移動時間とThe Crosstown運行時の推定移動時間の比較は以下の通りである。

こんなにも時間が短縮できる!

こんなにも時間が短縮できる!


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Toronto-York Spadinaラインついに2017年末に開通予定!

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「イエローライン」としてお馴染みのYonge-Universityライン。現在、Downsview駅以北に6つの駅を新設する拡張工事が2009年より行われており、ついに今年の年末までにはToronto-York Spadinaラインとして生まれ変わる。当初は2015年開通の予定であったが、作業員の事故や最初のトンネル工事着手が18ヶ月遅れてしまうなどが原因で完成がここまで先送りされてきた。

また、当初26億ドルとされていた総工費は工事期間が長くなったことなどが原因で最終的には32億ドルに膨れ上がった。その支払い内訳はカナダ政府が約7億ドル、オンタリオ政府が約10億、そしてトロント市が約9億ドル、ヴォーン市を有するヨーク地方が約6億ドルで、特にトロント市が増えてしまった費用の大部分を支払うことになり、多くのトロント市民は不満を感じているようだ。

完成が待ち遠しい!!

完成が待ち遠しい!!


Toronto-York Spadinaラインが開通となれば、現在のDownsview駅はSheppard West駅と改称され、そこから北へDownsview Park駅、Finch West駅、York University駅、Pioneer Village駅、Highway 407駅、そしてVaughan Metropolitan Center駅へ地下鉄でアクセスできるようになる。Pioneer Village駅以北はトロント市内ではなくヴォーン市に位置しており、これにより初の市を越えての路線が出来上がることになり、これからのトロント開発にとってよい前例となっていくであろう。

TTC運賃は今年も値上がり、年内にはPRESTO全面移行か

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今年の1月1日から今回で連続6年目となる値上げが敢行された。TTC評議会議長であるジョシュ・コール氏によれば、「運賃の値上げは誰も望んでいないが、財政上の理由から避けられない事態」であり、その代わり2018年の運賃を据え置くことを検討するよう議会に働きかけているという。

今回の値上げにより、TTCはおよそ2700万ドルの収益増加を推定しているが、未だに2017年の予算に少なくとも6100万ドル届かない見込みだ。その赤字分は本来昨年中に行われるはずだったPRESTOへの全面移行の延期によって補填される。PRESTOとは、日本でいうSuicaのような電子決済型カードのことでGo Transitやヨーク地区の交通網ではすでに導入されている。近年TTCのバスやストリートカーでも、カードをタップするための緑色の機械を目にしたことがある人も多いはず。本来TTCも2016年の間にこれまで使用されていたメトロパス、トークンを廃止し、このPRESTOに全面移行する計画でシステム搭載の工事を進めていた。しかし予算の関係により工事完成を先送りせざるを得なくなり、現在では完全移行のタイミングは早くとも今年中旬以降の見込みとされている。

ところでSuicaシステムに慣れている我々日本人にとっては、便利で喜んで受け入れるべき代物かと思いきや、このPRESTOカードには現段階では学生割引が適用されない(13〜19歳の学生には割引適用)。ゆくゆくはポストセカンダリー用のPhoto ID PRESTOも発行される予定だそうだが、20歳以上の学生の方は当分メトロパスを使用しておいた方が良さそうだ。下記は主な運賃詳細。

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Union駅の改装工事は2018年末まで続く

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トロントダウンタウンの玄関口ともいえるユニオン駅。2010年から始まったUnion Station Revitalizationという一大プロジェクトの一環で大改装工事が進められており、2015年に開催されたPan American Gamesに合わせての完成を予定していたが、工事期間は大きくずれ込み、現在では2018年末の完成予定とされている。

2015年にはユニオン駅とトロント国際空港をつなぐUP Expressが無事開通し、昨年はTTCプラットホームの改装も終了した。しかし、これまでフードコートがあったGo Transitのチケットブースは未だに工事が進められ、再オープンの目処が立っていない。また工事が進められているエリアは仮設フェンスなどで通路が狭くなっているので気をつけてほしい。

ユニオン駅はTTCだけではなくVIA RailやGO Transitなども乗り入れており、カナダ国内でも重要なハブ駅として知られる。現在年間6500万人が利用しており、2031年には1億3000万人まで増加すると予測されている。これを受けて行われている今回の大改装では、混雑の軽減を目的としたGO Transitコンコースの拡張や駅舎の出入り口の増設、さらに文化遺産として建物の保全などが挙げられている。他にも北米有数の地下ショッピング街PATHへの連結やダイニング施設の充実などが予定されており、改装後のユニオン駅は、駅としての機能のみならずエンターテイメント性を持った文化・商業施設の中心となるだろう。