カナダと日本をつなげる新鋭ファッションブランド「TOJA CO.」デザイナー キャメロン・フリーゲルさん インタビュー|特集「憧れ・出会い・交流 ニッカナインティー」

Photo by Andrew Faigal


 トロントでストリートファッションのブランドを新たに立ち上げたデザイナー、キャメロン・フリーゲルさん。日本の文字やイラストを交えたモダンかつシンプルなデザインはすでに多くの人々から人気を集めている。今回は創業デザイナーのキャメロンさん本人に「TOJA CO.」の原点、そして彼が抱く日本への情熱について伺った。

原点はアニメ。幼い頃から抱いていた日本への憧れ

ー「TOJA CO.」の始まりについて教えてください。

 最初に日本を訪れたのは実は最近で、2017年の夏でした。日本を訪れるのは小さい頃から夢だったのでようやくその願いが叶った、という思いでした。そして日本から帰国した際、自分の中で今までに感じたことのないような創作意欲が沸き起こり、これを使って何かしたいと思うようになったのです。

 その時にデザインしたのが「TOJA CO.」のロゴです。当初は自分のためだけに作ったのですが、徐々にそのデザインが人から注目を集めるようになり、気に入ってくださる方も多くいました。その時、ここで立ち止まる必要はない、みんなに気に入ってもらえるのであればもっと大きくしようと思ったのが「TOJA CO.」の始まりです。実際にブランドが発足したのは今年の6月です。アイデアが浮かんだのは一年ほど前でしたが、実現したのはつい最近のことでした。

ー幼い頃から日本文化へ関心を持っていたのですね。きっかけは何だったのですか?

 多くの欧米の子ども達同様、私にとって大きなきっかけとなったのはアニメです。そこから徐々に興味が湧き、日本についてもっと知りたいと思うようになりました。成長するにつれ、日本の食べ物や人々、そして言語や地理についてまで知るようになりました。今の私の日本への情熱も、原点はアニメにあります。

ーやはりアニメの力は偉大ですね。キャメロンさんが思う、日本のメディアや文化の魅力って何だと思いますか?

 実は私自身も常にその疑問を抱いています。ひょっとすると、日本は経済や技術の発展において、西洋にとても似ていながら独自の創造力を持っていて、それが私たち外国人にとって新鮮だからかもしれません。私も無意識に日本文化に惹かれていったうちの一人なので、その理由が何かは定かではありません。ただ、心の中で何かが動いたのは確かです。

日本への旅行で感じた大阪とトロントの共通点

Shinjuku – Photo by Cameron Fliegel

ー初めて日本を訪れたのは最近とおっしゃっていましたが、印象に残った場所はありましたか?

 旅行中は日本各地を訪れました。東京に滞在した際には秋葉原、新宿、渋谷などポピュラーな場所に行きました。その後、関西へ移動し、京都、大阪、奈良を訪れました。特に印象的だったのは大阪です。大阪の人々は面白い方ばかりで、とてもフレンドリーでした。

 東京の方ももちろん優しかったのですが、大阪の雰囲気は少し違いました。例えて言うなら、大阪はトロントのようで東京はニューヨークのようです。大阪にはトロントのように芸術や文化が溢れているのに対し、東京はニューヨークのような大都会という感じがしました。もしかしたらトロントと似ているから大阪に惹きつけられたのかもしれません。

Memory Lane – Photo by Cameron Fliegel

ー日本への初めての旅行をとても楽しんだようですね。近いうちに再び訪れる計画はありますか?

 もちろんです。実は、今年も日本を訪れました。昨年訪れた後、「すぐに日本に戻りたい」と思いました。今回は東京をさらに深く知りたかったので東京にのみ行きました。慌ただしいビジネス街ではなく、その周辺にあるお店や商店街を見たかったのです。GPSを使わずにただ歩き回ったことも多くありました。そのおかげで色々な発見がありましたね。昨年訪れた際とはまた違うエネルギーを感じた気がします。東京は人混みや通勤ラッシュだけではないということがよく分かりました。今回の旅行のおかげで東京のイメージが変わりましたね。

Gakugeidaigaku – Photo by Cameron Fliegel

何か印象に残るものを作りたいという思い

ーデザイナーになることやブランドを立ち上げることは幼い頃からの夢だったのですか?

 いいえ、実は高校生の頃はシェフになりたいと思っていました。ただ、高校生活の最後の方にだんだんとデジタルの世界に興味を持つようになりました。その大きな理由の一つがゲームです。それも日本文化に興味を持ったきっかけの一つですね。

 ただ、そのころはまだ具体的にデジタルの世界で何がしたいのかがわかりませんでした。一つだけ定かだったのは美術が好きだということ。幼い頃から絵を描くことが好きだったので、結果としてその二つが交差するグラフィックデザインという道を選びました。

Photo by Andrew Faigal

ーグラフィックデザイナーとしても活躍されていると伺いました。今までどのようなお仕事をしてきましたか?

 今まではグラフィックデザイナーとして様々なクライアントと仕事をしてきました。クライアントの中には大きなブランドもあります。彼らと共に仕事をする際には、相手の要望に答えるためにも自分のこだわりを捨てなければならないときもあります。

 特に大きなブランドと仕事をするとなると相手のルールやガイドラインを守りつつ、クリエイティブなデザインを作り上げなければなりません。それが特に難しいところですね。その経験もあったおかげで、自分のブランドを立ち上げることが出来たのだと思います。

ー「TOJA CO.」だけではなく、デザイナーとして様々なお仕事をされていますが、その全ての中心にある思いは何ですか?

 最終的には何か印象に残るものを作りたいという思いがあるのだと思います。「TOJA CO.」もその目的に近づくための一歩です。「TOJA CO.」のデザインを通してトロントの精神や理念を伝えたいと思っています。

 中でもその中心にあるのが“Openness(寛容)・Adventurous(冒険心)・Passion(情熱)”で、実はこれこそが「TOJA CO.」を支える三つの柱でもあります。これらの理念は多くのトロント市民にも見られるもので、「TOJA CO.」のデザインを通してこの三つの理念がさらに多くの人々に伝わればと思っています。

ートロントが他の都市と違うところはどのようなところだと思いますか?

 「TOJA CO.」の三つの柱こそがトロントの特徴だと私は思っています。ここの人々は皆、情熱的であり寛容です。多くの人が冒険心や好奇心にも溢れていると思います。トロントがこんなにも多文化で芸術的な場所であるからこそ、そこに住む私たちが自然とそうなったのではないでしょうか。

 実は昨年、ニューヨークにも初めて訪れました。ニューヨークにももちろん、トロントと同じように様々な国の文化やレストランがあります。ですが、ニューヨークでは全ての文化が一つに融合しているように見えました。一方、トロントではひとつひとつの文化がとてもはっきりと分かれています。全ての文化がそれぞれの個性を持っていて、それが目に見えて分かるのです。

 トロントにいるおかげで様々な文化に触れることが可能となり、それがきっかけとなって「この国に行ってみよう」と思う方も多いのではないでしょうか。私も実際にトロントに住んでいたからこそ日本文化に興味を持つことができたのだと思います。

シンプルだからこそ多くの人に響くデザイン

ーCNタワーや富士山など、日本とカナダの要素をデザインに取り入れていますが、今後はどのような要素を取り入れようと考えていますか?

 基本はタイポグラフィを中心としたデザインを作りたいと思っています。タイポグラフィとは文字を使ったデザインのことです。この方法を使えば日本のひらがなやカタカナ、漢字を盛り込むことが出来るので、とても気に入っています。日本の文字は多くの人が興味を持つものですしね。もちろん、その他にもイラストのアイデアもあります。形式は違えど、シンプルなデザインであればあるほど多くの人に受け入れられると考えています。だから私のデザインはシンプルなものが多いのです。

ーキャメロンさんのデザインはどこからインスピレーションを受けているのですか?

Photo by Andrew Faigal

 現代的なデザインからインスピレーションを受けていることが多いと思います。シンプルで線画を中心とした、あまり色や塗りつぶしの無いデザインです。少しばかり日本の芸術と似ているかもしれません。実は昔の日本の芸術を見ると線が中心になっていて、線の描き方によって濃淡が表現されているものが多いのです。

 有名な「神奈川沖浪裏」を描いた葛飾北斎のスタイルにもインスパイアされていると思います。もう一つ大きな影響を受けているのは日本の建築物です。ネオンライトや日本の街並みなどにも影響されているところがあると思います。

ートロントと日本、両方の芸術に触れてきたキャメロンさんですが、日本の芸術や文化はトロントの人々の目にどのように映っていると思いますか?

 もちろん、芸術は全て主観的なので様々な意見はあると思います。ただ、今までいろんな人と話してきた中で、日本文化をあまり知らない人になぜ日本文化が好きなのかと聞くと、〝変わっているから〟〝ユニークだから〟という答えをよく聞きます。

 もちろん、世界中には様々な芸術がありますが、日本のアートや文化には人を惹きつける何かがあるみたいです。やはりそれが何なのかを言葉にするのは難しいですね。私もそれが具体的に何かを探っている最中です。

Photo by Daniel Strange-Dedier

Photo by @coryscott on Instagram

ー「TOJA CO.」ブランドもスタートしたばかりですが、キャメロンさんの将来の展望を教えてください。

 現在はスタジオにてデザイナーとして働いていますが、いずれはフリーランスのデザイナーになりたいと思っています。そうすることで世界中どこからでも仕事が出来るし、さらに冒険が出来ると思うからです。最終的には日本に住みたいと思っています。

 この思いは以前からありましたが、その前に自分が本当にそれで良いのかを確かめるためにも、これからまた日本を何度も訪れて各地を旅しなければならないと思っています。いずれ「TOJA CO.」を日本に持って行くのも大きな夢ですね。

ー最後に、TORJA読者の皆さんにメッセージをお願いします。

 カナダへようこそ!トロントは素晴らしい都市です。ここに来ることを決めた皆さんは良い選択をしたと思いますよ。皆さんにも是非、「TOJA CO.」を見ていただき、トロントが体現する三つの理念(寛容・冒険心・情熱)を感じていただければと思っています。

 「TOJA CO.」の商品は、日本の文字やデザインを取り入れていることによって日本人の皆さんにも親しみやすくなっていると思います。日本に持ち帰って家族や友人にトロントについてもっと知っていただければ嬉しいです。そして何より、今はトロントにいる時間を楽しんでください!